GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:塩化アリル
CAS番号:107-05-1

結果:
物質ID: 21B3088
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2004)による引火点は-32℃(密閉式)、かつ沸点は45℃であり、「区分2」に該当する。なお、国連危険物輸送勧告ではクラス3および副次危険6.1PGI(国連番号1100)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告ではクラス3および副次危険6.1PGI(国連番号1100)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が390℃、392℃、485℃(ICSC(2004), HSDB(2006), NFPA(13th, 2006))で70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素およびフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。なお、高温でなければ、軟鋼、鋳鉄などを腐食しないが、アルミニウムは腐食する。(溶剤ポケットブック(1994))という情報がある。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値450, 460, 700 mg/kg(いずれもSIDS(2003))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値2200 mg/kg(NITE初期リスク評価書(2008))、ウサギのLD50値2026 mg/kg(SIDS(2003))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値(4h)は、2100ppm, ≧2000ppm(SIDS(2003)), 1138ppm, 2620ppm(DFGOT vol.18(2002))であり、最も多くのLC50値がガイダンス値区分3に該当するため、区分3とした。なお、25℃の飽和蒸気圧濃度は484211ppmVであり、いずれのLC50値も飽和蒸気圧濃度の90%より低いので、気体の基準値で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
SIDS(2003)、NITE初期リスク評価書(2008)のウサギ、マウスを用いた皮膚刺激性試験結果の記述「軽度の刺激性を有する」「限局性の皮膚の損傷(発赤、腫脹、一部の例に皮膚の壊死)がみられた。」及び、ヒトの皮膚への接触で「皮膚に発赤がみられ、灼熱感、痛みを生じ、接触数時間後に強い骨痛を惹き起こす。」(NITE初期リスク評価書(2008))との記載から、刺激の強度は不明だが刺激性がみられるため、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
SIDS(2003)、NITE初期リスク評価書(2008)のウサギを用いた眼刺激性試験結果の記述は「軽度の刺激性(slightly irritating)」であるが、ACGIH(7th, 2001)のヒトへの影響の記述「痛みと角膜の損傷を伴う重度の刺激性を示し、失明の可能性もある」から、本物質が眼に対して非可逆性の刺激を与える可能性もあると考え、皮膚腐食性物質であることも考慮し、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - in vivoではラットを用いた2つの変異原性試験(優性致死試験、骨髄を用いた染色体異常試験)で陰性(SIDS(2003))であることから区分外とした。in vitroでは、エームス試験(SIDS(2003))、CHL細胞を用いた染色体異常試験(IARC vol.71(1999))において複数の陽性結果がある。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
1996年にACGIHでA3(ACGIH-TLV(2009))、EUリスク警句でカテゴリー3(EU-Annex I(access on 5. 2009))に分類されている。IARCではグループ3である(IARC vol.71(1999))。ラット、マウスを用いた104週間吸入暴露試験では、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雄の膀胱に移行上皮がんの発生増加が認められ、がん原性を示す明らかな証拠であると考えられた。また、甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加も認められた。雌には、腫瘍の発生増加は認められなかった。Crj:BDF1マウスでは、雌雄ともハーダー腺の腺腫の発生増加が認められ、がん原性を示唆する証拠であると考えられた(厚生労働省がん原性試験(2003))。この結果を受け厚生労働省より「国が実施したがん原性試験の結果がん原性を示す証拠が認められた化学物質による労働者の健康障害防止対策の徹底について」(2009)との通達がされていることより区分2とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入暴露による発生毒性試験において、母動物に一般毒性のみられる用量で、胚吸収と着床前および着床後胚損失の有意な増加(SIDS(2003))がみられることより、区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、神経系、腎臓、肝臓、心臓)、区分3(麻酔作用) 警告
危険
H370: 臓器の障害(呼吸器、神経系、腎臓、肝臓、心臓)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては「気道刺激性」「意識喪失」(いずれもNITE初期リスク評価書(2008))の記述、実験動物については、ラットの経口投与試験において、用量100 mg/kgで腎臓(曲尿細管の混濁腫脹、変性、糸球体上皮細胞の限局性壊死)、肝臓(類洞の拡張、肝細胞の混濁腫脹)の組織変化と心筋細胞の変性、活動性の低下、嗜眠、後肢麻痺、振せん、痙れん等の神経系への症状がみられる(NITE初期リスク評価書(2008))。ラット・マウスの吸入暴露試験においては、用量3.506 mg/L、8.2 mg/L(いずれもラット)、3.13 mg/L(マウス)で肺水腫、腎臓と肝臓のうっ血がみられ(DFGOT vol.18(2002)、ラット・モルモットを用いた吸入暴露試験でも肺と腎臓に重度の損傷がみられる(PATTY(5th, 2001))。以上より、呼吸器、神経系、腎臓、肝臓を標的臓器とし、麻酔作用をもつと考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1の範囲でみられた。よって、分類は区分1(呼吸器、神経系、腎臓、肝臓、心臓)、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、腎臓、心臓、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、腎臓、心臓、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「衰弱、感覚異常、末端の麻痺」(環境省リスク評価第2巻(2003))、「慢性暴露により肝臓障害、腎臓障害、末梢神経障害がみられている」(NITE初期リスク評価書(2008))、「慢性的な暴露により腎臓毒性(糸球体の膜透過性の変化、尿細管の変性、乏尿、排尿時の痛み、夜間頻尿)、神経障害(手、瞼のふるえ、腱や骨膜反射の増加、多汗、低体温、チアノーゼ、睡眠障害、四肢の感覚異常)、心血管系への影響(心筋の収縮の減少と心音の低下及び心雑音、痛み)、肝機能の変化」(BUA186(1995))等の記述、実験動物については、ラットを用いた吸入暴露試験において「尾部の運動神経及び感覚神経の伝導速度低下と活動電位の振幅低下に伴う後肢の衰弱(用量:0.181 mg/L(換算値))、中枢神経系抑制(用量:0.1 mg/L(換算値))、中心静脈周辺肝細胞の壊死(軽度)(用量:0.0097 mg/L(換算値))」(NITE初期リスク評価書(2008))との記述があることから、神経系、腎臓、心臓、肝臓が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。以上より、分類は区分1(神経系、腎臓、心臓、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)での96時間TLm=19780μg/L(環境省リスク評価第3巻, 2004)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:62%(既存点検, 1986))、かつ生物蓄積性が低い(BCF=5.6(既存点検, 1979))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る