GHS分類結果

名称:ジイソデシルフタラート
CAS番号:26761-40-0

結果:
物質ID: 22A4029
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が217℃(密閉式)(IUCLID(2000))は93℃超である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は402℃(ICSC(1998))であり、常温では発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を持たない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値:>15000 mg/kg、>29100 mg/kgおよび>62080 mg/kg(以上全てEU-RAR 36(2003))に基づき区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値:>3160 mg/kgおよび>9700 mg/kg、ラットLD50:>2910 mg/kg(以上全てEU-RAR 36(2003))に基づき区分外とした。なお、ウサギ3160 mg/kgの投与、ラット2910 mg/kgの投与で何れも死亡は認めらなかった(EU-RAR 36(2003))。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットLC50値:>12.54 mg/L/4hr(EU-RAR 36(2003))に基づき区分外とした。なお、試験濃度(12.54 mg/L)は飽和蒸気圧濃度(1.27E-05 mg/L)より高いので、ミストでの試験と見なした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギ6匹に半閉塞貼付により試験物質0.5 mLを4時間適用した結果、パッチ除去24時間後1匹にごく軽度の紅斑が現れたのみでその他の刺激性症状はなく(EU-RAR 36(2003))、また、ウサギ3匹に試験物質を同様の条件で適用した別の試験(OECD TG 404)では、適用後24、48時間の観察で1匹にごく軽度の紅斑を認めたのみ(EU-RAR 36(2003))であり、一方、ヒトでは15人の被験者に無希釈の試験物質0.2 mLを24時間閉塞適用し、パッチ除去30分および24時間の観察で何ら刺激性症状はなかった(EU-RAR 36(2003))との報告により、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギ3匹に試験物質原液0.1 mLを適用した試験(OECD TG 405)で、適用1時間後に全動物がスコア2の結膜発赤を示したが、24、48、および72時間後には刺激反応は認められず(EU-RAR 36(2003))、また、ウサギ6匹に試験物質原液0.1 mLを適用した別の試験では、適用後1時間で全動物が軽度〜中等度の結膜発赤(平均スコア1)、2/6匹が軽度の浮腫を示し、24時間では4/6匹に軽度の発赤(平均スコア0.5)が見られたが、48、72時間および7日目は全て正常であった(EU-RAR 36(2003))との結果から、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットのビューラー試験(modified Buehler test)で明らかな陽性反応(陽性率15/20(75%))が認められた(EU-RAR 36(2003))が、モルモットを用いた別の2つの試験(Buehler testおよびMaximization test)では陽性反応はなく陰性(EU-RAR 36(2003))であった。また、ヒトではアレルギー性皮膚炎の症例が1例のみであるが報告され(EU-RAR 36(2003))、一方、104人のボランティアによる反復パッチ試験(modified Draize procedure)の結果は感作性を示さず陰性(EU-RAR 36(2003))であり、また、フィンランド労働衛生研究所が144人の患者に対し実施された刺激およびアレルギーパッチ試験においてもアレルギー反応は報告されていない(EU-RAR 36(2003))。以上のように皮膚感作性に関して得られたデータが相容れない結果を示し、分類を正当化する証拠として不十分と考えられるので「分類できない」とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに経口投与による骨髄を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)の陰性結果(EU-RAR 36(2003))に基づき区分外とした。なお、in vitroの試験ではエームス試験およびマウスのリンパ腫細胞 L5178Yを用いた遺伝子突然変異試験でいずれも陰性(EU-RAR 36(2003))が報告されている。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに混餌投与による2世代生殖試験において、親動物の肝臓および腎臓の重量の有意な増加など一般毒性が発現している用量で、交尾率、受胎率などの生殖指標に悪影響は見られなかったが、F2世代の仔で生後1および4日目の生存率の有意な低下が見られた(EU-RAR 36(2003))ことから区分2とした。なお、妊娠ラットの器官形成期に経口投与した試験においては、過剰頚肋や痕跡状過剰腰肋などの骨変異のみで外表、内臓および骨格の奇形発生率に有意な増加は見出されていない(EU-RAR 36(2003))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分外 - - - - ラットにガイダンス値範囲を大きく超える15000 mg/kgの経口投与で死亡および症状の発現はなく、剖検における変化も観察されていない(EU-RAR 36(2003))。また、ウサギにガイダンス値範囲を超える3160 mg/kgの経皮投与により、擦過皮膚では食欲不振などの一般症状および剖検時に肺の暗赤色化が観察されたが、健常皮膚では局所影響として皮膚の紅斑を認めたのみで全身毒性は認められず(EU-RAR 36(2003))、ラットに2910 mg/kgの経皮投与においても一般症状および剖検時の病理学的異常は見出されていない(EU-RAR 36(2003))。さらに、ラットにミストのばく露による急性吸入毒性試験(5.6, 9.72, 12.54 mg/L)では、試験濃度全てがガイダンス値範囲を超えており、ばく露後の症状として興奮と粗毛があり、剖検による唯一の病理学的所見として、肺に多数の暗赤色の病巣が投与群でより高頻度で見られたと報告されているのみである(EU-RAR 36(2003))。以上の動物試験の結果に基づき、経口、経皮および吸入の3経路とも区分外に相当すると判断される。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットを用いた試験では明らかな毒性症状はなく忍容性が見られ、28日間混餌投与試験のNOAELは5000 ppm(600 mg/kg/day)[90日換算量:187 mg/kg/day](EU-RAR 36(2003))であり、90日間混餌投与試験のNOAELは雄で3200 ppm(200 mg/kg/day)、雌で800 ppm(60 mg/kg/day)と報告されている(EU-RAR 36(2003))。ラットの別の3ヶ月混餌投与試験では高用量の650 mg/kg/dayで体重増加抑制、肝臓および腎臓の重量増加が見られたものの、病理組織学的には投与に起因する変化はなく(EU-RAR 36(2003))、重大な毒性影所見は報告されていない。また、本物質の評価においてより適切と考えられるイヌの13週間混餌投与試験(約15〜300 mg/kg/日)で肝細胞の肥大と空胞化が報告されているが、組織学的にも軽微な変化で用量依存性を欠いていること、ALTやASTなどの肝酵素に影響が認められないことなどにより重大な毒性所見として捉えられていない(EU-RAR 36(2003))。以上の結果から経口投与では区分外に相当する。一方、吸入投与では、ラットにミストとして0.5 mg/Lを2週間ばく露により、肺や肝臓における軽度の変化が報告されている(EU-RAR 36(2003))がデータ不十分であり、さらに経皮投与についてはデータがないことから、特定標的臓器・反復ばく露の分類としては「分類できない」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 藻類、甲殻類、魚類いずれにおいても、水溶解度 (0.18 mg/L) 付近までの濃度において、影響がみられていない(EU-RAR, 2003)ことから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分4 - - H413: 長期継続的影響によって水生生物に有害のおそれ P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
水溶解度までの濃度で急性水生毒性が報告されておらず、急性毒性区分外であるが、難水溶性であり (水溶解度:0.28 mg/L (PHYSPROP Database, 2011))、急速分解性がなく (OECD 301C:BOD 54% (EU-RAR, 2003))、log Kow = 10.36 (>4) (PHYSPROP Database, 2011) であることから、区分4とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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