GHS分類結果

名称:亜リン酸ジメチル
CAS番号:868-85-9

結果:
物質ID: 22A4050
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点64℃ [密閉式](Ullmanns(E)(2003))は > 60℃ かつ ≦93℃ であることから、区分4に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 自己反応性に関わる原子団(P-O)を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が237℃(ICSC(2005))であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 半金属(P)を含んでいるが、水溶解度として>10 g/100mL(HSDB(2007))という情報があり、水と急激な反応をしないと考えられる。
13 酸化性液体 分類できない - - - - 酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外のPと化学結合しているが、データがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値、3040(雄)、3283(雌)mg/kg(OECDTG401)(SIDS(2010))よりJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値、681mg/kg(SIDS(2010))より区分3該当が1件、2400 mg/kg(SIDS(2010))よりJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)該当が1件、したがって危険性の高い方の区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットに7.1 mg/L/6h(4時間換算:9 mg/L)の投与で死亡なし(SIDS(2010))とのデータがあるが、区分を特定できないので分類できない。なお、試験濃度(7.1 mg/L)は飽和蒸気圧濃度(26.8 mg/L)の90%より低いため、気体の基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギに0.5 mlを4時間適用で、軽微な刺激性(slightly irritating)(SIDS(2010))との結果によりJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、ラットで長期・反復ばく露後に皮膚および粘膜に中等度〜重度の刺激性が観察された(SIDS(2010))と記載されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギの試験(OECD TG405同等)において、観察1時間後および4時間後にmild to moderate edemaが認められたが、観察5-7日には回復していること(SIDS(2010))に基づき区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスの腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験および染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)における陽性結果(SIDS2010))に基づき区分2とした。なお、in vitro変異原性試験としてエームス試験(5mgを超える10mgで陽性)、マウスリンフォーマアッセイ、CHO細胞を用いた染色体異常試験で陽性結果(SIDS2010))が得られている。
6 発がん性 分類できない - - - - IARCにおいてGroup 3に分類されている(IARC 71(1999))ことに基づき分類できないとした。なお、ラット・マウスの経口による2年間の発がん性試験において、雌雄ラットに肺胞/気管支の腺腫およびがん腫、肺の扁平上皮がん腫、前胃などに腫瘍の発生頻度の増加が認められたが、マウスでは雌雄ともに腫瘍発生は認められていない(NTP TR287(1985))。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、ラットの経口による生殖毒性試験(OECD TG421)において、雌雄に重度の一般毒性影響および性機能・生殖能に影響が認められているが、親動物の死亡率も増加し雌では全動物が死亡(雄は2/12)(SIDS(2010))していることから、評価に採用しなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(全身毒性) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(全身毒性) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた急性経皮毒性試験で、ガイダンス値の区分2に該当する1000mg/kgの用量で、運動抑制、眼瞼下垂、呼吸困難、運動失調、静止の症状が報告され(SIDS(2010))、標的臓器を特定することが困難なため区分2(全身毒性)とした。なお、ラット、マウスを用いた急性吸入毒性試験で、死亡はなく、7 mg/L/6h(9 mg/L/4h)の用量でマウスにのみ10匹中2匹に努力呼吸と眼瞼下垂が観察された(SIDS(2010))。また、ラットおよびマウスの急性経口毒性試験において、ガイダンス値範囲を超える用量で、不活発、衰弱、疲労、表在呼吸が見られている(SIDS(2010))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(眼、皮膚) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(眼、皮膚) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた4週間吸入ばく露試験(蒸気:6 hours/day)において、0.483 mg/L以上で死亡例が発生し、全濃度で眼に対する表在性の刺激、粘膜刺激、角膜炎が見られ、0.142 mg/L以上(90日換算値:0.044 mg/L)で白内障へ進行した。一方、0.142 mg/L以上で皮膚刺激も観察され、0.483 mg/L(90日換算値:0.149 mg/L)以上で皮膚炎へ進行し、死亡例の主な死因は皮膚の壊死と急性化膿性炎症がであったと記述されている(SIDS(2010))。反復吸入ばく露こより、ガイダンス値区分1に相当する濃度で白内障、および死亡をもたらした皮膚の壊死/急性化膿性炎症への進行が認められ、以上は局所作用のみの影響だけではないと判断し、区分1(眼、皮膚)とした。なお、ラットおよびマウスの13週間経口投与試験のガイダンス値を超える高用量において、ラットではで眼の変化(眼球変性、角膜炎)および肺の病変(炎症、うっ血、組織球増殖)が、また、マウスでは心臓での鉱質沈着、肝細胞空胞化、肺のうっ血が観察されている(SIDS(2010))。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミジンコ)による48時間 EC50 = 25 mg/L(SIDS, 2004)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分3であり、急速分解性がない(28日間でのBOD分解度 = 48%(既存点検, 1997))ことから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る