GHS分類結果

名称:塩化ベンゼトニウム
CAS番号:121-54-0

結果:
物質ID: 22A4103
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データなし。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 酸素および塩素を含んでいる有機化合物であるが、この塩素は四級アミンとイオン結合しているため酸化性は生じないと判断できるため区分外とした。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、5件のデータ[368-665 mg/kg(NTP TR438(1995))、368, 420±20, 450, 665 mg/kg(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985)]はいずれも区分4に該当する。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - マウスのLD50として、>280 mg/kg(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985))との情報があるが、区分を特定できないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
本物質の0.1%溶液2 mLをウサギの皮膚に適用した試験で刺激性なし(non irritating)であったが、35〜280 mg/kgをマウスの皮膚に単回塗布した試験では、低用量で刺激性は認められず、高用量で水疱を伴う重度の局所反応を示した(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY Volume 4, Number 5, 1985)。また、ヒトでは、ボランティア100人に本物質の5%水溶液を48時間閉塞適用したパッチテストで、100人中51人に水疱も浸潤も伴わない紅斑が認められたが、パッチ除去24時間後には軽快したと報告されている(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY Volume 4, Number 5, 1985)。その結果、5%以上の濃度では皮膚に刺激性を引き起こす可能性があるとの結論付けされていることから、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた試験で、刺激性の閾値濃度は0.03%で事実上は刺激性があるとの記述、適用7日後に角膜と虹彩に障害を生じない最大耐性濃度は0.5%溶液の0.1mL適用との記述(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol.4, No. 5, 1985)に基づき、区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足。なお、塩化ベンゼトニウムを含む混合物で処置された42人中、12人に感作性を示したとする報告があり(Acta Otolaryngol. 100: 414, 1985)、また、塩化ベンゼトニウムの作業従事者が感作性を示した報告が1例、塩化ベンゼトニウム含有衛生用スプレーを使用したヒトが感作性を示した報告が2例記載されている。(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985)。一方、100人の被験者に対し本物質0.5%を含む洗剤の皮膚感作性試験(repeated insult patch test)において、誘導期に軽度の皮膚反応が7人に観察された。さらに惹起時に皮膚反応が6人に観察され、その6人中3人に再惹起を行った結果、1人が洗剤の研磨性によるとされる軽度の反応を示したのみで、試験物質には軽度の刺激性があるものの感作性はないと結論されている(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985)。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivo試験のデータがなく分類できない。なお、in vitro変異原性試験としてエームス試験で陰性(NTP DB(Access on Oct. 2010)、JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985)、CHO細胞を用いた染色体異常試験で陰性(NTP DB(Access on Oct. 2010))の報告がある。
6 発がん性 分類できない - - - - データ不足。なお、ラットおよびマウスに2年間の経皮投与による試験において、両動物種ともに発がん性の証拠は得られなかったと結論されている(NTP TR438(1995))が、経皮投与のみの結果のため「分類できない」とした。また、1954年と古い情報であるがラットに2年間混餌投与により、投与に関連する腫瘍の発生は見出されていないが、1群雌雄各10匹と動物数が少なく、結果の詳細も不明である。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠ラットの器官形成期に経口投与により、母動物が体重抑制を示す用量で化骨遅延が見られたが、その他に仔の発生に及ぼす悪影響は報告されていない(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY vol. 4, No. 5, 1985)。しかし、性機能および生殖能に対する影響についてはデータがなく不明のため「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データなし。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットの2年間混餌投与試験において、1000 ppm(換算値:50 mg/kg/day)以上の用量で盲腸がかなり拡張し、組織学的には盲腸壁の菲薄化が見られたと報告されている(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY Volume 4, Number 5, 1985)が、この盲腸の所見については、関連する変化やその他の異常所見もなく、本試験以外に他の動物種を含め報告がなく、毒性学的意義が不明のため分類の根拠としなかった。その他には、イヌに最高用量として500 ppm(13 mg/kg/day)まで1年間混餌投与した試験で異常が認められず(JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF TOXICOLOGY Volume 4, Number 5, 1985)、また、ラットおよびマウスの13週間経皮投与試験において、最高用量の25 mg/kg/dayまで、全身毒性としては体重増加抑制を除き影響は認められなかった(NTP TR438(1995))と報告されているが、これらの試験については試験用量がいずれもガイダンス値範囲内の低用量であり、データ不足のため「分類できない」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ブルーギル)の96時間LC50 = 1.4 mg/L(AQUIRE, 2011、HSDB, 2010)から区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、生物濃縮性が高いと予想される(Log Kow = 4.0(PHYSPROP Database, 2011))ことから区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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