GHS分類結果

名称:1,3-ジクロロプロパン
CAS番号:142-28-9

結果:
物質ID: 22A4203
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点21.1℃ [密閉式](HSDB(2002))は < 23℃ であり、かつ、初留点120.9℃(Lide(90th, 2009))は >35℃ であることから、区分2に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない、かつ自己反応性に関わる原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は480℃であり(GESTIS(Access on Oct. 2010))、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素を含まず塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
本物質については皮膚に刺激性があり(HSDB(2002))、ヒトで経皮ばく露後の症状として、表皮および下層組織に著しい炎症を伴った重度の皮膚刺激性があるとの記載(HSDB(2002))に基づき、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足。なお、眼に対し刺激性がある(HSDB(2002))と記載され、また、関連物質1,1-ジクロロプロパンのウサギを用いた試験では、傷害の程度は最も重度の場合を10とした10段階評価において2であった(HSDB(2002))と報告されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
産衛学会勧告において皮膚感作性物質として第2群に分類されている(産衛誌第52巻(2010))ことから、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivo 試験のデータがなく分類できない。なお、in vitro 試験では、エームス試験で陽性(NTP DB(Access on Nov. 2010))の報告がある。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。なお、1,2-ジクロロプロパンでは吸入によるがん原性試験の結果、ラットでは雌雄に鼻腔腫瘍、マウスでは雄にハーダー腺の腺腫、また、雌に細気管支-肺胞上皮がんを含む肺腫瘍のいずれも発生増加が認められ、がん原性を示す証拠であると考えられた(厚生労働省委託癌原性試験, 2005)との記述がある。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。なお、1,2-ジクロロプロパンでは、ラットを用いた2世代試験で、親動物に影響の出た濃度で、出生時体重の低値、新生児の死亡率が増加がみられた(NITE初期リスク評価書 No.39(2005))との記述がある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(肝臓、腎臓、血液系、中枢神経系、呼吸器系)、区分3(麻酔作用) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(肝臓、腎臓、血液系、中枢神経系、呼吸器系)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで経口および吸入による急性ばく露の影響として肝毒性と腎不全が認められており、1例であるが腎生検で急性腎壊死を示した事例もある(HSDB(2002))。また、蒸気の急性ばく露で播種性血管内凝固症候群と溶血性貧血が報告されている(HSDB(2002))。さらに、1500 ppm以上の高濃度の蒸気吸入による症状として、喘ぎ、呼吸停止、咳、胸骨下痛および極度の呼吸窮迫、低濃度では中枢神経系抑制と中等度の呼吸器刺激が記載され、吸入ばく露後に、倦怠、頭痛、胸腹部不快感と刺激性は数週間、時におそらく数年間持続すると報告されている(HSDB(2002))。一方、中毒治療の手引きとして本物質の項に有害影響として肝臓および腎臓の障害、中枢神経系への影響、肺の刺激が記載されている(DHP(13th, 2002))。以上より、標的臓器として肝臓、腎臓、血液、中枢神経系および呼吸器系が想定され、全てList 2のヒト情報であることから、区分2(肝臓、腎臓、血液、中枢神経系、呼吸器系)および区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データなし。なお、1,2-ジクロロプロパンでは、「ヒトについての「溶血性貧血、肝臓及び腎臓の機能障害の報告」(NITE初期リスク評価書 No.39(2005)、ACGIH(2006))、実験動物について、「嗅上皮変性」(NITE初期リスク評価書 No.39(2005))等の記述がある。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類 (オオミジンコ) の24時間LC50 = 39 mg/L (ECETOC TR91, 2003) から区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分3であり、急速分解性がない(BIOWIN)ことから区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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