名称:1,1,2,2-テトラクロロエタン(別名:四塩化アセチレン)
CAS番号:79-34-5
物質ID: | 22B4514 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成22年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分4 | - | 警告 | H227: 可燃性液体 |
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
引火点62℃(Lange(16th,2005))は60℃≧93℃≦であるため区分4とした。なお、不燃性である(Merck(13th、2001), Chapman(2005), ホンメル(1991), Weiss(2nd、1985))という情報があり燃焼継続性はないと考えられる。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性および自己反応性に関わる原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性である(Merck(13th、2001), Chapman(2005), ホンメル(1991), Weiss(2nd、1985))。なお、引火点62℃(Lange(16th,2005))という情報があるが、燃焼継続性はないと考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性である(Merck(13th、2001), Chapman(2005), ホンメル(1991), Weiss(2nd、1985))。なお、引火点62℃(Lange(16th,2005))という情報があるが、燃焼継続性はないと考えられる。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、フッ素を含んでいない。塩素を含む有機化合物であるが、この塩素は炭素以外の元素と結合していない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。なお、「アルミニウムは容器として不適当である。鋼は耐久性がある。」という情報がある(ホンメル(1991)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分4 | 警告 | H302: 飲み込むと有害 |
P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P330: 口をすすぐこと。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
8件のラットLD50値(800 mg/kg, 250〜430 mg/kg, 570 mg/kg(以上SIDS(Access on June 2009)), 250 mg/kg, 330 mg/kg(以上ATSDR(2008)), 319 mg/kg(ACGIH(2001)), 1000 mg/kg(CICAD 3(1998)), 200 mg/kg(環境省リスク評価 第4巻(2005)))おいて、2件が区分3、1件が区分3または区分4、5件が区分4に該当しているので、最も該当数の多い区分4とした。 | |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | 4件のウサギLD50値(3990 mg/kg, 6400 mg/kg(以上SIDS(Access on June 2009)), 4000 mg/kg(PATTY(5th, 2001)), 6300 mg/kg(ACGIH(2001)))がいずれも分類JISによる基準の区分外(国連GHS分類の区分5または区分外)している。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義による液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分3 | 危険 | H331: 吸入すると有毒 |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P311: 医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 |
2件のラットLC50値(1000 ppm/4h(ACGIH(2001))および1200 ppm/4h(SIDS(Access on June 2009))がいずれも区分3に該当している。なお、LC50が飽和蒸気圧濃度(約6000 ppm)の90%より低いため、分類には気体の基準値を適用した。 | |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 |
ウサギの皮膚に試験物質の原液0.01mLを24時間開放適用により、皮膚一次刺激指数6(最大値8)で強い刺激性(highly irritating)を示した(SIDS(Access on June 2009))。さらに、ウサギを用いた別の試験では、充血、浮腫、重度の水疱形成が認められた結果(ATSDR(1996))、また、紅斑のみを認め皮膚一次刺激指数2.6(最大値8)で中等度の刺激性との結果(IUCLID(2000))も報告されており、以上の結果に基づいて区分2とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
ウサギの眼に試験物質の原液0.1 mLを適用した試験で眼刺激指数42.5(最大110に対し)で刺激性あり(irritating)との結果(SIDS(Access on June 2009))、また、蒸気ばく露でもモルモットおよびヒトで眼に対する刺激性が報告されている(CICAD 3(1998)、ATSDR(1996))ことから、区分2Aとした。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | In vivo試験として、ラットの吸入ばく露による優性致死試験で陰性(SIDS(Access on June 2009))、マウスの経口投与による肝UDS試験で陰性(SIDS(Access on June 2009))、マウスおよびラットの体細胞DNAへの結合試験では陽性(IARC 71(1999))の結果が得られている。また、14週間の混餌によるマウス末梢血小核試験では陽性であった(NTP TOX-49(2004))。本陽性知見は証拠の重み付けに基づく専門家判断により区分2とするのに十分な知見とは認められず、したがって、分類できないとした。同様の見解はATSDR(2008)にも記されている。なお、in vitro試験では、エームス試験で陰性および陽性の両結果が、CHO細胞を用いた染色体異常試験(SIDS(Access on June 2009))およびマウスL5178Yリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験(NTP TOX 49(2004))でいずれも陰性、BALB/c3T3細胞を用いた形質転換試験では陰性および陽性の両方の報告(ACGIH(2001))がある。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | IARCにおいてグループ3に分類されていることから(IARC 71(1999))「分類できない」とした。なおラットおよびマウスを用いた78週間経口投与試験(NTP TR 27(1978))において、ラットでは投与終了32週間経過後の観察で雌雄とも統計学的に有意な腫瘍性病変の発生が見られなかったが、マウスの場合は投与終了さらに12週間経過後の観察の結果、雌雄とも肝細胞がんの発生が高度に有意、かつ用量依存的な増加を示したことが報告されている。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | ラットを用い9ヵ月間吸入ばく露した雄と無処置の雌の交配による一世代試験(SIDS(Access on June 2009))において、評価対象とした妊娠の指標および仔の指標に関して対照群との間に統計学的有意差はなく外表奇形も認められなかった。一方、ラットおよびマウスの器官形成期(妊娠6〜15日)に経口ばく露による発生毒性試験(SIDS(Access on June 2009))では胎仔の全吸収が観察されたが、母体死亡など親動物に強い毒性が現れた高用量群のみで認められた影響のため分類の根拠としなかった。以上の試験を含め、本物質について標準的な生殖・発生毒性試験はこれまで実施されていない。したがって、生殖/発生毒性に関してはデータが限定的であり、正当な評価はできない(SIDS(Access on June 2009))、あるいは結論を出せない(NTP TOX49(2004))と述べられているので、データ不足のため「分類できない」とした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系、肝臓)、区分3(麻酔作用、気道刺激性) |
危険 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(麻酔作用、気道刺激性) H370: 臓器の障害(中枢神経系、肝臓) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質の急性中毒の多くは致死性であり、中枢神経系と肝臓が標的臓器である(HSDB(2005))と述べられている。実際に、本物質3 mLを誤って摂取した8人全員が1.5〜2.5時間以内に昏睡を呈し、反射能力を失い脈拍が弱くなったとの報告(PATTY(5th, 2001))があり、また、高濃度の本物質の蒸気ばく露、あるいは誤って摂取したヒトに対する影響として、振戦、頭痛、麻痺、嗜眠状態、めまい、意識喪失が報告されている(SIDS(Access on June 2009))。一方、本物質による中毒事故後に肝臓への影響と死亡の報告があり、また、ヒトでばく露後早期の所見として、意識消失、神経障害、振戦、めまい、麻痺などに加え、黄疸、肝臓の肥大と変性などが認められ(CICAD 3(1998))、また、別の急性中毒症例の剖検では急性肝ジストロフィーと時間経過後に肝硬変が判明している(BUA 29(1989))。以上のヒトにおける知見に基づき、区分1(中枢神経系、肝臓)とした。一方、上述の眩暈、嗜眠、昏睡、反射消失などの中枢神経系抑制症状が後遺症もなく回復している症例(PATTY(5th, 2001))があることに加え、マウス、モルモット、ネコに吸入ばく露した複数の試験において麻酔の所見(ACGIH(2001))もあり、また、労働者およびボランティアによる吸入ばく露で、粘膜刺激性、呼吸障害の報告(CICAD 3(1998))もあることから区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系、肝臓) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、肝臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ばく露を受けた380人の労働者において、振戦、頭痛、めまいを含む神経症状の発症率が本物質の空気中濃度とともに増加したとの報告(CICAD 3(1998))があり、一方、本物質に慢性的にばく露されたヒト277人中75人に症状発現があり、55人に肝臓肥大が見られたと報告されている(PATTY(5th, 2001))。さらに、本物質の慢性中毒には2つの形態が考えられ、一つは振戦、めまい、頭痛のような中枢神経系への影響であり、もう一つは嘔気、嘔吐、胃痛、黄疸および肝臓肥大を含む胃腸系・肝臓の症状であるとの記述(HSDB(2005))もあり、区分1(中枢神経系、肝臓)とした。なお、実験動物ではラットに208 mg/kgを3週間経口投与(SIDS(Access on June 2009))により嗜眠の症状が見られ、また、ラットおよびマウスに14週間経口投与(NTP TOX-49(2004))によりラットでは80 mg/kg以上、マウスでは160〜200 mg/kg以上でALTなど肝酵素の上昇、肝細胞の空胞化、肥大および壊死、限局性色素沈着などが観察されている。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 28.89℃における動粘性率(0.98 mm2/s)は20.5 mm2/s以下であるが、本物質は塩素化炭化水素でありガイダンス基準の対象外であるとともにヒトでの吸引性呼吸器有害性の情報はないためデータ不足により「分類できない」とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=9.3mg/L(SIDS、2005)他から、区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 | - | - | - | - | 急性毒性が区分2であるものの、甲殻類(オオミジンコ)の28日間NOEC=6.9mg/L(SIDS、2005)他から判断して、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
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