名称:ターシャリ-ブタノール
CAS番号:75-65-0
物質ID: | 22B4520 |
分類実施者: | 厚生労働省、環境省 |
分類実施年度: | 平成22年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 なお、輸送では「低温の融点をもつので、高温度に保って、しばしば輸送されている。(ホンメル(1996))という情報があり、UNRTDG(UN1120)で「クラス3PGIIでmp:25℃で液体」としている。データ上からも引火点11℃ [密閉式](ICSC(J)(1995))初留点83℃(ICSC(J)(1995)(引火点< 23℃、初留点>35℃)であり液体とすれば区分2に該当する。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性ならびに自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 なお、輸送では「低温の融点をもつので、高温度に保って、しばしば輸送されている。」(ホンメル(1996))という情報があり、液体として輸送されているが、発火点が470℃であるので常温では発火しないと考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が470℃(ICSC(1995)というデータにより、常温で発火しないと判断できるため区分外と考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 なお、輸送では「低温の融点をもつので、高温度に保って、しばしば輸送されている。」(ホンメル(1996))という情報があり、液体として輸送される。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素を含む有機化合物であるが、炭素、水素以外の元素と結合していない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 なお、輸送では「低温の融点をもつので、高温度に保って、しばしば輸送されている。」(ホンメル(1996))という情報があり、液体として輸送されるが、鋼、アルミニウムは容器として適している(ホンメル(1996))という情報により区分外と判断できる。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | 4件のラットLD50値(2200 mg/kg(DFGOT 19(2003))、3046 mg/kg(NITE有害性評価書(2007))、2298 mg/kg(NITE有害性評価書(2007))、3500 mg/kg(ACGIH(2001))に基づき、分類JISの基準による区分外(国連GHS分類の基準による区分5に相当)とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ウサギLD50値は>2000 mg/kg(NITE有害性評価書(2007))およびウサギの試験において2000mg/kgで死亡が認められなかった(DFGOT(vol.19, 2003))との記述から、分類JISの基準による区分外(国連GHS分類の基準による区分5または区分外に相当)とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | ラットLC50値は>10000 ppm/4h(30.3 mg/L/4h)(NITE有害性評価書(2007))、およびラットの試験において7060 ppm/4h(21.36 mg/L/4h)で10例中1例が死亡した(DFGMAK-Doc.19(2003))との記述があるが、いづれのデータも区分を特定できないので分類できない。なお、試験濃度(7060〜10000 ppm)は飽和蒸気圧濃度(53553 ppm)の90%より低いので、「ミストがほとんど混在しない蒸気」として気体の基準値を適用した。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | ウサギに無希釈の試験物質0.5 mLを適用して2〜4時間あるいは24時間後に刺激性は認められず皮膚刺激性指数0.4との結果(DFGMAK-Doc.19(2003))、かつ、5人のヒト被験者に適用した時、適用部位に軽度の紅斑と充血が認められたこと(ACGIH(2001))から、分類JISの基準による区分外(国連GHS分類の基準による区分3または区分外)とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
ウサギの眼一次刺激試験(GLP準拠)において、100 μLの適用で投与後96時間の判定において強度(未洗眼)・中等度(洗眼)の眼刺激性が報告されており、6匹中2匹の動物において、投与後34日においても角膜障害が持続していたとの記述がある(NITE有害性評価書(2007))。また別のウサギの試験で、眼に無希釈の試験物質を適用後96時間までの間に中等度の刺激性が観察され、誘発された角膜傷害の回復は緩やかであったこと、また眼を洗浄しない場合の刺激性は重度であったとの記述(DFGMAK-Doc.19(2003))に基づき区分2Aとした。なお、EU分類でXi:R36に分類されている(EU-Annex 1(Access on 7, 2009))。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | モルモットを用いたマキシマイゼーション試験(OECD TG 406)で感作性は認められなかったとの結果(DFGMAK-Doc.19(2003))があり、またモルモットを用いた別のマキシマイゼーション試験の結果、陽性率は25〜30%であり(DFGMAK-Doc.19(2003))、「陽性」とはみなされない(GHS文書では30%以上(アジュバンド使用)の反応で陽性と考えられているため)。 一方、ヒトでは本物質を含む日焼け止め液により、顔、頚部、腕および胸部に広範な掻痒性の発赤、小胞発疹を起こした男性1人に対し本物質の70%溶液をパッチテストした結果、紅斑と水泡が見られた(NITE有害性評価書(2007))と報告されているが、エタノールとの交差反応による陽性の報告(NITE有害性評価書(2007))や本物質は重大な感作性を有すると結論できない(DFGMAK-Doc.19(2003))との記述もある。以上のように、動物およびヒトで相反した報告であり、陽陰性を決定付ける情報が他にないため「分類できない」とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | ラットに腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験、およびマウスに飲水投与による末梢血を用いた小核試験において、いずれも陰性の結果(NTP TR53(1997))に基づき区分外とした。なお、in vitro試験では、エームス試験、CHO細胞を用いた染色体異常試験、マウスのリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験の陰性結果(NITE有害性評価書(2007)、NTP TR53(1997))が報告されている。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | ACGIH(2001)でA4に分類されていることから「分類できない」とした。なお、ラットおよびマウスに2年間飲水投与した試験において、ラットでは雌では発がん性を示す証拠はなく、雄で腎尿細管の腺腫または癌腫の発生頻度の有意な増加、マウスでは雄で甲状腺濾胞細胞の腺腫または癌腫の発生頻度の僅かな増加、雌で甲状腺濾胞細胞の腺腫の有意な増加がそれぞれ報告されている(NTP DB(Access on July 2009))。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 | 警告 | H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットの経口投与による一世代生殖・発生毒性試験(OECD TG421)において、親動物の一般毒性として腎重量の増加が見られた用量で妊娠期間延長、死産仔数増加、生存仔数減少、平均同腹仔数低下が認められている(NITE有害性評価書(2007))こと、マウスの妊娠6〜20日に混餌投与により用量依存的な同腹仔数低下と死産仔数増加が見られている(NTP TR53(1997))こと、さらに、ラットの妊娠8日〜出生までの混餌投与により、親動物で体重増加抑制が認めらた用量で同腹仔数低下、周産期および生後の死亡率増加が示されている(DFGMAK-Doc.19(2003))ことに基づき、区分2とした。なお、親動物の性機能および生殖能に対する悪影響、および仔の発生における催奇形性は認めれていない(NITE有害性評価書(2007)、DFGMAK-Doc.19(2003)))。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(麻酔作用、気道刺激性) | 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(麻酔作用、気道刺激性) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットに経口投与(4000または6000 mg/kg)により中枢神経系の抑制症状(ACGIH(2001))、ウサギに経口投与あるいはラットに吸入ばく露によりて麻酔作用(ACGIH(2001)、DFGMAK-Doc.19(2003))がそれぞれ認められ、ヒトでも本物質は本来麻酔剤とされ、高濃度の蒸気ばく露が嗜眠状態をもたらす(NIOSH Publications 81-123(1978))と記述されている。一方、過剰ばく露により、鼻と咽喉に刺激を生じ(PATTY(5th. 2001))、無嗅覚のヒトでは約2秒間のばく露で鼻に刺激性が見られる(DFGMAK-Doc.19(2003))と述べられ、EU分類はR36/37である。以上の知見に基づき区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。なお、肝臓への影響を示す所見は、ラットに1850 mg/kgを経口投与による肝臓のトリアシルグリセロール濃度の増加(ACGIH(2001))であるが、別の試験でさらに高用量の4000または6000 mg/kgを経口投与によりトリグリセライド、コレステロール、リン脂質に変化は認められなかった(ACGIH(2001))と報告されている。したがって、データの一貫性を欠き、また、病理組織学的裏付けもないので分類根拠としなかった。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 分類できない | - | - | - | - | ラットおよびマウスを用いた13週間経口(飲水)投与試験の最低用量2.5 mg/mL(ラット:230〜290 mg/kg/day、マウス:350〜500 mg/kg/day)における毒性影響として、ラット雄のみに認められた腎症の重症化が唯一の所見である。(NTP TOX 53(1997))。また、ラットおよびマウスを用いた13週間吸入投与試験における540 ppm(1.64 mg/L)では、ラット雄のみに慢性腎症の重症化が用量依存的に認められたが、その他の毒性影響の記載は見られない(NTP TOX 53(1997))。腎症については13週間経口投与後の腎臓で硝子滴蓄積が観察され、雄ラット特有の現象でα2μグロブリン腎症に関連する所見と考えられ、ヒトには当てはまらない(NTP TOX 53(1997))ので分類の根拠にしなかった。上記の試験用量はガイダンス値区分2の上限を超えているので、経口および吸入経路では区分外相当となるが、経皮投与に関してはデータがなく不明のため、本項目における区分は「分類できない」とした。なお、ガイダンス値範囲を超える高用量では、一般症状、肝臓および膀胱への影響など腎臓以外の影響も報告されている(NTP TOX 53(1997))。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分外 | - | - | - | - | 魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50=6410mg/L(有害性評価書, 2007)、甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50=5504mg/L(有害性評価書, 2007)、藻類(セネデスムス)での72時間ErC50>1000mg/L(有害性評価書, 2007)であることから、区分外とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 | - | - | - | - | 難水溶性でなく(水溶解度=1000000mg/L(PHYSPROP Database、2009))、急性毒性が低いことから、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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