GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:硝酸アンモニウム
CAS番号:6484-52-2

結果:
物質ID: 22B4523
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - 爆発性に関する原子団(-NO3)を含んでいるが、UNRTDG(UN1942)でクラス5.1であることから上位の火薬類には該当しないため区分外とした。なお、可燃性不純物が0.2%を超えているものは、UNRTDG(UN0222)で火薬類(等級1.1)となっている。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性である。(ICSC(J)(2001))
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 酸化性固体に分類されている。なお、可燃性不純物0.2%超ではUNRTDG(UN0222)で火薬類(等級1.1)に分類されている。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性である。(ICSC(J)(2001))
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性である。(ICSC(J)(2001))
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分3 警告 H272: 火災助長のおそれ:酸化性物質 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P220: 衣類/.../可燃物から遠ざけること。
P221: 可燃物と混合を回避するために予防策をとること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
UNRTDG(UN1942)でクラス5.1PGIII、酸化性固体(またはUN0222、火薬類)に分類されている。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 有機物ではない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値:2450, 4820mg/kg(ECETOC TR 27(1989))であったことから分類JISによる基準の区分外(国連分類による基準の区分5)とした。ガイダンスでのJIS分類に合わせた変更である。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットLC50(4時間)値:>88.8mg/L(IUCLID, 2000)に基づき、区分外とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ICSC(J)(2001)、HSDB(2005)、HSFS(1998)およびSITTIG(4th, 2002)に皮膚を刺激することがあるとの記載はあるが具体的な症例の記載はないため、分類できないとした。なお、ウサギを用いた2つの試験で皮膚刺激性は認められなかったとの報告(IUCLID(2000))がある。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ECETOC TR 48(1992)に記載されたウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性の判定基準に該当する眼の変化は認めらなかったことから区分外とした。なおICSC(J)(2001), HSDB(2005)、HSFS(1998)、SITTIG(2002)には、ヒトの眼に対して刺激性があるとの記述があるが具体的な症例の記載はないため分類には採用しなかった。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivo試験のデータがないため、分類できない。なお、in vitro変異原性試験としてエームス試験で陰性の報告(IUCLID(2000))がある。
6 発がん性 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、IARC(IARC Vol.94(2010))は食物中、飲水中の硝酸塩のヒトでの発がん性は不確実な証拠であるとしている。そのうえで経口摂取による硝酸塩または亜硝酸塩が生体内でニトロソ化される条件での発がん性を2Aと評価している。IARCの総合評価には、「ヒトの体内では硝酸塩と亜硝酸塩の変換が起こること。消化管の酸性条件では亜硝酸塩から生ずるニトロソ化物が二級アミン、アミドなど特にニトロソ化されやすい物質とともに直ちにN-ニトロソ化合物に変化する。硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロソ化物の追加摂取により、これらのニトロソ化条件はさらに促進される。ある種のN-ニトロソ化合物はこれらの条件下で既知の発がん性物質を形成することがある。」との追加記載がある。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた生殖試験で仔の体重が抑制された(IUCLID(2000))との報告があるが詳細が不明でありデータ不足で分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(血液) 危険 H370: 臓器の障害(血液) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質自体のヒトでの報告はないが、水溶性硝酸塩一般として、硝酸ナトリウムを食塩と誤って摂取した15人の兵士がメトヘモグロビン血症になり約15gを摂取した13人が死亡し、5gを摂取した2人が生存した(ECETOC TR 27(1988))ことから区分1(血液)とした。なお、ICSC(J)(2001)、HSFS(2004)およびSITTIG(4th, 2002)には気道を刺激するとの記述があるがList 3の情報であり、具体的な症例等による記述でないことから分類には採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(血液) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
水溶性硝酸塩一般についての慢性毒性として、硝酸塩を含む食事、水を摂取した幼児にメトヘモグロビン濃度の上昇が多数報告されていること、利尿剤として硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムを、尿路結石防止剤として硝酸アンモニウムを投与された患者にメトヘモグロビン血症がみられる(ECETOC TR27(1988))ことから区分1(血液)とした。このほか硝酸塩の影響として心臓等への影響が報告されているが、メトヘモグロビン血症による酸素欠乏の二次的影響(EHC 5(1978))と考えられる。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(マスノスケ、ニジマス、ブルーギル)での96時間LC50 = 420-1360mg NO3/L(SIDS, 2007)(硝酸アンモニウム換算濃度:542-1,756 mg/L)、甲殻類(オオミジンコ)での24時間EC50 = 555 mg/L(SIDS, 2007)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度=2,000g/L(SIDS、2007))、急性毒性が低いことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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