GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:酸化プロピレン(1,2-エポキシプロパン)
CAS番号:75-56-9

結果:
物質ID: 22B4527
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分1 危険 H224: 極めて引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-37℃ [密閉式](ICSC(1995))は < 23℃ であり、かつ、初留点34℃(ICSC(1995))は ≦35℃ であることから、区分1に該当する。なお、UNRTDG(UN1280)はクラス3、PGIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 分子内に自己反応性の原子団(歪みのある環(エポキシド類))を含むが、UNRTDG(UN1280)でクラス3PGIに分類されており、上位の自己反応性化学品には該当しないと判断した。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点449℃(ICSC(1995))であり、常温では発火しないと考える。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素は炭素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 区分外 - - - - noncorrosive to metals(HSDB(2010))の報告より区分外とした。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値が3件(1140, 520mg/kg(EHC 56(1985))、930mg/kg(環境省リスク評価 第3巻(2004)))あり、いずれも区分4の範囲内にあり区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギLD50値が2件(950mg/kg(EU-RAR 23(2002))、1245mg/kg(ACGIH(2001)))あり、危険性の高い方を採用し区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットLC50値(4時間暴露)は4000 ppm(EHC 56(1985))に基づき区分4とした。なお、LC50(4000 ppm)が飽和蒸気圧濃度(707894.7 ppm)の90%より低いので、気体の区分基準値を適用した。また、旧分類のLC50値(399 ppm)には単位換算の誤りがあったため訂正した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギの皮膚に試験物質の原液、20%および10%水溶液をそれぞれ1〜60分適用した試験において、6分以上のばく露で紅斑と浮腫、より厳しいばく露条件下では瘢痕形成が生じたことから、短時間のばく露が刺激を起こす可能性が示唆されたと記述されている(EU RAR 23(2002))。一方、ウサギの皮膚に4時間の半閉塞適用による別の試験では、ばく露中皮膚表面から試験物質が揮発した可能性を否定できないが、1、2、8日後の観察で紅斑も浮腫も認められなかったと報告されている(EU RAR 23(2002))。以上の結果から、総合的に言えば、本物質(液体)は皮膚との接触により局所刺激を起こすものと思われるとの記述(EU RAR 23(2002))により、区分2とした。なお、本物質の腐食性を示唆するデータは得られていない(EU RAR 23(2002))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
眼に事故によるばく露を受けた3人のヒトが、角膜と結膜に熱傷を生じたとの報告(EU RAR 23(20029)、また、ヒトで角膜の熱傷が報告されており、本物質は眼に重度の刺激を起こすとの記載(ACGIH(2001))、さらに、動物試験において、ウサギに本物質の原液5μlを角膜中央部に単回適用により、壊死を伴う重度の熱傷を起こしたとの報告(EHC 56(1985))に基づき、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ACGIH(2001)でSEN(皮膚感作性)に分類されていることより区分1とした。尚、本物質のばく露を受けアレルギー性接触皮膚炎などの皮膚症状を示したヒトで、パッチテストにより陽性反応がみられたとの報告が2件(NITE初期リスク評価書(2007))ある。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウス、及びラットを用いた吸入および経口投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo 経世代変異原性試験)で陰性(NITE初期リスク評価書(2007))であったが、腹腔内投与したマウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、及び小核試験(体細胞を用いるin vivo 変異原性試験)で陽性(初期リスク評価書 Ver. 1.0, 47(2007))の報告があり、生殖細胞を用いるin vivo 遺伝毒性試験の陽性データは無いため区分2とした。なお、in vitro試験として、エームス試験で陰性または陽性、ラット肝細胞およびヒトリンパ球を用いた染色体異常試験では陽性の結果がそれぞれ報告されている(NITE初期リスク評価書(2007))。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NTP(2005)でR、IARC(1994)でGroup 2B、ACGIH(2001)でA3、EPA(1994)でB2に分類されていることから区分2とした。尚、マウスを用い103週間吸入暴露した試験において雌雄の400 ppm 暴露群で鼻腔の血管腫の発生が有意に増加し、雄の400 ppm 暴露群では、鼻腔の血管肉腫の発生が有意に増加した。またラットを用い103週間吸入暴露した試験において雌雄の400 ppm 暴露群に鼻腔の扁平上皮がんが、雌の400 ppm 暴露群で鼻腔の乳頭腺腫の発生率が有意に増加した。鼻腔上皮の扁平上皮がんは、400 ppm の暴露で雌雄とも有意であるが、200 ppm 暴露群では対照群と有意差はなかった(NITE初期リスク評価書 Ver. 1.0, 47(2007)(NTP試験)の報告がある。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに交配前3週間から妊娠1〜16日に500 ppmを蒸気ばく露により、親動物の有意な体重増加抑制とともに、対照群と比べ黄体数が減少、その結果として着床数および生存胎仔数の減少が見られ、かつ、波状肋骨のような軽微な異常の発生率が増加した(EU-RAR 23(2002))。さらに、ウサギの器官形成期に500 ppmの蒸気ばく露試験では、母動物に摂餌量と体重増加の軽度低下が認められた一方、吸収胚数の増加が観察された(DFGMAK-Doc. 5(1993))。以上より、親動物が体重増加抑制を示した用量で、ラットでは着床数および生存胎仔数の減少、ウサギでは吸収胚数の増加など生殖毒性が観察されていることから、区分2とした。なお、経口投与された雄ラットの50%が不妊を呈したとの結果については、著しい一般毒性の発現がみられたLD50値に近い用量のため、明確な結論は得られない(EU-RAR 23(2002))と記述されている。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入毒性試験において呼吸困難、鼻からの出血が認められた(NITE初期リスク評価書(2007))との報告により、区分3(気道刺激性)とした。また、ラットおよびモルモットに2000〜1600 ppmを0.25〜7時間吸入ばく露した試験で死亡はなく、症状所見において、嗜眠、協調運動障害が含まれていることから、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データ不足により分類できない。尚、ラットを用いた24週間の吸入毒性試験において、0.71mg/l(区分2のガイダンス値内)の濃度では悪影響は認められなかった(EPA-RAR(2006))との報告があり、また、ラットに26週間飲水投与した試験において、0.52mg/kg(区分2のガイダンス値内)で血液学検査、血液生化学検査で異常が認められた(EHC 56(1985))との報告はあるがその程度、病理学検査についての記載が無い。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ニジマス)の96時間LC50=52mg/L(EU-RAR 2002、NITE初期リスク評価書 2007)から、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:96%(既存点検, 1988))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=0.03(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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