項目 | 情報 |
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CAS登録番号 | 7439-97-6 |
名称 | 水銀 |
物質ID | 23B5578 |
分類実施年度 | 平成23年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 物理化学的危険性・健康に対する有害性:政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)、環境に対する有害性:国連GHS文書(改訂4版) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性(ホンメル(1996))である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない、かつ自己反応性に関わる原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性(ホンメル(1996))である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性(ホンメル(1996))である。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 |
- |
- | - | 金属(Hg)であるが、水溶解度 0.06mg/L(SRC Phys Prop(Access on Oct. 2011))というデータがあり、水と急激な反応をしないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | 酸素およびハロゲンを含まない無機化合物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
- |
- | - | アルミニウム他多くの金属を侵し、アマルガムを生成するが(ICSC,2004)、データがないので分類できない。また(ホンメル(1996))にも「ステンレス鋼、鋼、鉄、ガラス、セラミックおよび多くの合成物質は耐久性がある」との情報がある。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分1 |
危険 |
H330 |
P304+P340
P403+P233 P260 P271 P284 P310 P320 P405 P501 |
ラットに0.027 mg/Lの濃度の水銀蒸気を2時間のばく露(4時間換算値:0.019 mg/L)により32匹中20匹死亡との結果(CICAD 50(2003))から、LC50値は0.019 mg/L/4h以下となり、区分1に相当する。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足。なお、ヒトへの影響としては、水銀の吸入、経口、あるいは経皮ばく露による皮膚反応には、紅斑性および掻痒性発疹、大量の発汗および掌や足底の皮膚の紅潮や剥離があり、一般的に先端疼痛を伴ってみられると報告されている(CICAD(J)(2005))が、この記述からは皮膚との接触による直接的影響が判別できないため「分類できない」とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 |
警告 |
H319 |
P305+P351+P338
P337+P313 P264 P280 |
高濃度の水銀蒸気への暴露により、眼の充血や灼熱感ならびに結膜炎が観察されている(CICAD(J)(2005)、ATSDR(1999))との報告に基づき、区分2とした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 |
P302+P352
P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
日本産業衛生学会により感作性物質として皮膚:第1群に分類されている(産衛誌53巻(2011))ことから、区分1とした。なお、ヒトでは金属水銀に対するアレルギー性接触皮膚炎が報告されており、パッチテストで陽性反応を示した歯科医の症例、また、アマルガムを充填し口腔内扁平苔癬を有する患者29名において、対照群の3%に対し、62%が水銀に陽性反応を示したパッチテストの結果(IARC 58(1993))が報告されている。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - |
本物質自体について、実験動物や培養細胞を用いた試験のデータは見当たらない。しかし、ヒトでの疫学調査はいくつかの報告があり、金属水銀の職業ばく露により、染色体の構造異常の発生増加はなかったが、異数性や無動原体断片の発生率の有意な増加が見られた(IARC 58(1993))こと、また、染色体への影響は認められなかった(IARC 58(1993))との陰性結果、さらに、体細胞での姉妹染色分体の発生率の増加が見られた(IARC 58(1993))ことなどが報告されている。しかし、不十分な方法、交絡因子が考慮されていない、あるいは水銀の尿中濃度(ばく露濃度)と観察結果との間に用量反応関係が見られないなどの理由により、結果の有意性は限定的であり、水銀の遺伝毒性について結論的な評価はできない(DFGMAK-Doc 15(2001))と述べられているため「分類できない」とした。 |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - |
IARCの発がん性評価でグループ3(IARC 58(1993))、さらにACGIHではA4、EPAではDに分類されていることから「分類できない」とした。なお、動物試験の適切なデータはなく、ヒトでは米国、スウェーデン、オーストラリア、イタリア、カナダにおいてコホート研究やケース・コントロール研究による疫学調査が実施され、水銀のばく露により肺がんや脳腫瘍などのリスク増加を示す複数の報告(IARC 58(1993))がある一方、腫瘍の発生とばく露との関連はなかった(IARC 58(1993))とする相反する結果も報告されており、分類にはデータ不十分である。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1A |
危険 |
H360 |
P308+P313
P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトで水銀蒸気のばく露による生殖への影響について複数の疫学調査の報告がある。職業的にばく露された女性歯科医師らを対象とした調査では、非曝露のコントロール群に比べて頭髪中の総水銀濃度は高く、自然流産、死産、先天異常(二分脊椎)等の異常もコントロールよりも多かった(産衛誌第40巻(1998))との報告、また、作業環境で水銀元素蒸気に暴露した女性349人を調べた研究で、215人の非暴露コントロールに比較し、妊娠合併症(中毒症、流産、遅延分娩、分娩時の大量出血)が多数みられた(CICAD(J)(2005))との報告など、水銀のばく露による女性の生殖に及ぼす悪影響が報告されていることに基づき区分1Aとした。なお、実験動物では、ラットに受胎前3週間および妊娠7~20日に2.5 mg/m3を吸入ばく露により、非ばく露の対照群と比べ出生後の生存仔数の著しい減少が報告され、仔の死亡は一部は母動物の授乳不能によるともされたが、死因は不明である(IRIS(2002))。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(呼吸器系、心血管系、腎臓、肝臓、中枢神経系) |
危険 |
H370 |
P308+P311
P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
ヒトで高濃度水銀蒸気の急性ばく露により、呼吸器系の障害(気管支・細気管支炎、間質性肺炎、呼吸困難)および尿細管障害などを認め、重篤な場合は呼吸不全や腎不全で死亡することもある(産衛誌第40巻(1998))との記述に加え、高濃度水銀蒸気の短期ばく露の結果、タンパク尿、血尿、乏尿、さらに急性腎不全に至る一連の影響が近位尿細管の変性または壊死を伴ってみられた(CICAD(J)(2005))との報告もあり、区分1(呼吸器系、腎臓)とした。また、ヒトで高濃度の金属水銀を急性吸入ばく露後に心拍数と血圧の増加(ATSDR(1999))が報告され、一方、ウサギに0.0288 mg/m3の濃度を2~30 時間ばく露(ガイダンス値区分1相当濃度)により、心組織の壊死を伴った著しい細胞変性がみられた(CICAD(J)(2003))との報告により、区分1(心血管系)とし、さらに金属水銀の蒸気ばく露に対し中枢神経系がおそらく最も鋭敏な標的臓器である(CICAD 50(2003))と述べられ、ウサギに0.0288 mg/m3の濃度を2~30 時間ばく露(ガイダンス値区分1相当濃度)し、脳に顕著な細胞変性と広範囲の壊死がみられた(CICAD(J)(2003))との報告により、区分1(中枢神経系)とした。一方、幼児が水銀蒸気の吸入で急性中毒に陥り、ALTや血清ビリルビンの上昇など肝細胞への影響がみられたとの報告に加え、男性1人が水銀蒸気への短期、高濃度ばく露により死亡し、剖検で肝腫大および小葉中心性空胞化が認められた症例(CICAD(J)(2005)、ATSDR (1999))が報告されており、区分1(肝臓)とした。以上より、本項の分類としては区分1(呼吸器系、心血管系、腎臓、肝臓、中枢神経系)となる。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系、心血管系、血液、肝臓、歯肉) |
危険 |
H372 |
P260
P264 P270 P314 P501 |
ヒトの慢性ばく露で濃度が高い場合には、振戦や行動・性格の変化が認められ、口腔内にも歯痛などの自覚症状を始め、歯根炎や唾液分泌過剰が起きる(産衛誌第40巻(1998))。また、工場で一定年数働いていた労働者が職業ばく露により、振戦、めまい、不安定歩行、鈍いメンタルレスポンス、歯肉炎、歯肉痛などの症状を示した(CICAD(J)(2005))こと、クロールアルカリ工場の作業員で神経伝導速度の異常、衰弱、感覚異常、筋けいれんなどの症状が報告されている(CICAD(J)(2005))ことから、区分1(神経系、歯肉)とした。また、家庭での水銀元素の漏出により、水銀蒸気に6 ヵ月間ばく露された12 歳の少女に白血球数の増加が観察され、また、家庭での水銀蒸気にばく露した別の事例では、家族4 人のうち2人に頻発する鼻血と血小板減少がみられた(CICAD(J)(2005))との報告により、区分1(血液)とした。さらに、少なくとも5年間水銀蒸気の職業ばく露された労働者での心悸亢進と僅かな心血管反射の低下、別の工場労働者では高血圧の頻度増加、虚血性、脳血管性障害による死亡の可能性の増大が報告されている(ATSDR(1999))ことから、区分1(心血管系)とした。一方、ウサギに12週間吸入ばく露(0.86~6 mg/m3、ばく露期間:7 hrs/day)により、肝臓で病理学的変化が中等度の変化から顕著な細胞変性に至るまでみられ、壊死が生じた(CICAD 50(2003))との結果に基づき、ばく露濃度はガイダンス値区分1の範囲にあることから区分1(肝臓)とした。以上より、本項の分類は区分1(神経系、心血管系、血液、肝臓、歯肉)となる。なお、腎臓については反復ばく露による悪影響を示すデータは見出せず、標的臓器として採用しなかった。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 |
警告 |
H400 |
P273
P391 P501 |
甲殻類(ブラインシュリンプ)の96時間LC50 = 0.006 mg/L(AQUIRE, 2011)から、区分1とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 |
警告 |
H410 |
P273
P391 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、金属であり水中での挙動が不明であり、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間EC10 = 0.001 mg/L(AQUIRE, 2012)であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、金属であり水中での挙動が不明であり、甲殻類(ブラインシュリンプ)の96時間LC50 = 0.006 mg/L(AQUIRE, 2012)であることから、区分1となる。 以上の結果から、区分1とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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