項目 | 情報 |
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CAS登録番号 | 85-44-9 |
名称 | 無水フタル酸 |
物質ID | 24B6521 |
分類実施年度 | 平成24年度 |
分類実施者 | 厚生労働省、環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | GHS分類ガイダンス |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない |
- |
- | - | 可燃性である(ICSC(J)(2003))との情報があるが、所定の試験法によるデータがない。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない、かつ自己反応性に関わる原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 |
- |
- | - | 発火点は570℃(ICSC(J)(2003))であり、常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 融点140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 |
- |
- | - | フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素以外の元素と化学結合していない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
- |
- | - | -O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、ステンレス鋼とアルミニウムは耐久性がある。湿気が遮断されているときのみ、炭素鋼は耐久性がある(ホンメル(1996))、という情報がある。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分4 |
警告 |
H302 |
P301+P312
P264 P270 P330 P501 |
ラットのLD50値は最新データである1530 mg/kg(SIDS(2005))、4020 mg/kg(産衛学会勧告(2011))、800-1600 mg/kg(NTP TR159(1979))が報告され、区分4が2件、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)が1件に該当していることから、該当数の多い方の区分である区分4を採用した。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 |
- |
- | - | ウサギのLD50値は >10000 mg/kg および>3160 mg/kg(SIDS(2005))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5または区分外に相当)とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - |
ラットに1時間ばく露のLC50値は>0.21 mg/L(4時間換算:>0.0525 mg/L)との報告(SIDS(2006))があるが、区分を特定できないため分類できない。なお、試験濃度(0.21 mg/L)が飽和蒸気圧濃度(0.004 mg/L)を超えているので、粉塵による試験とみなした。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 |
- |
- | - |
ウサギの皮膚に試験物質550 mgを4時間の半閉塞適用した試験(OECD TG404)において、平均皮膚刺激指数1.21で軽度の刺激性(slightly irritating)(SIDS(2005))、また、ウサギの皮膚に500 mgを水で湿らせ24時間の半閉塞適用による別の試験では皮膚刺激指数(PDII)が1.5で軽度の刺激性(slightly irritating)(SIDS(2005))がそれぞれ報告されていることに基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3に相当)とした。なお、ヒトの職業ばく露で皮膚刺激性が報告されているが、原体中に含まれる不純物が原因のように思われる(SIDS(2005))と述べられている。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A |
警告 |
H319 |
P305+P351+P338
P337+P313 P264 P280 |
ウサギの結膜嚢に未希釈の試験物質50 mgを適用した試験において、角膜、虹彩、結膜に刺激性がみられたが、7日間の観察期間内に結膜発赤を除き全て回復し、中等度の刺激性(moderately irritating:)との評価(SIDS(2005))、また、別の試験でウサギの結膜嚢に未希釈の試験物質100 mgを適用により、24~72時間の平均スコア(AOIに相当)は71~81を示し、刺激性あり(irritating)との評価(SIDS(2005))、さらにウサギの眼に未希釈の試験物質100 mgを適用した試験では、平均スコア(AOIに相当)は24時間において59.2で刺激性あり(irritating)との評価(SIDS(2005))が得られている。以上の各試験での刺激性スコアを含む評価結果に基づき区分2Aとした。なお、EU分類はXi:R41(EC-JRC(ESIS)(Access on Apr. 2012))であり、区分1相当となる。 |
4 | 呼吸器感作性 | 区分1A |
危険 |
H334 |
P304+P341
P342+P311 P261 P285 P501 |
無水フタル酸(PA)を扱う工場で作業時に発生する粉塵にばく露された作業者118名中、鼻炎は28名(24%)、慢性気管支炎は13名(11%)、喘息は21名(18%)が報告され、喘息はばく露後0.1-16年で発症している(産衛誌第40巻(1998))。一方、ポリエステル樹脂の生産に従事した労働者の調査では、高ばく露(1500~1740 μg/m3)群の労働者の46%が結膜炎、40%が鼻炎、14%が喘息を発症している(CICAD 75(2009))。本物質は、喘息とアレルギー性鼻炎の最初の事例が1939年に報告されて以来、呼吸器感作物質として知られている(SIDS(2006))。日本産業衛生学会では本物質を気道感作性物質の第1群に分類している(産衛誌第53巻(2011))ことから、区分1Aとした。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 |
P302+P352
P333+P313 P261 P272 P280 P321 P363 P501 |
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験(陽性率90%)とビューラー試験、およびマウスを用いた局所リンパ節試験の結果はいずれも感作性あり(sensitizing)となり陽性(SIDS(2006))を示した。ヒトでは本物質を含むエポキシ樹脂処理工場の作業者191人にパッチテストの結果、本物質に対するアレルギー反応が14%の作業者で観察され(SIDS(2006))、また、皮膚科診療所で治療を受けていたエポキシ樹脂過敏症の患者99人中7人(7%)がパッチテストで本物質に反応した(DFGMAK-Doc.25(2009))と報告されている。さらに、本物質はContact Dermatitis(Frosch)により接触アレルギー物質に分類されている(Contact Dermatitis(Frosch)(5th, 2011))ことに基づき、区分1とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - |
in vivo試験のデータが無いので分類できない。なお、in vitro試験として、エームス試験で陰性(SIDS(2005)、NTP DB(Access on Apr. 2012))、CHO細胞を用いた染色体異常試験では一部に陽性の報告(SIDS(2005))があるものの概ね陰性(NITE初期リスク評価書 Ver.1.0 No.120(2008)、NTP DB(Access on Apr. 2012))、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験では陽性(NTP DB(Access on Apr. 2012))がそれぞれ報告されている。 |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - |
ACGIHの発がん性評価でA4に分類されている(ACGIH(2001))ことから、「分類できない」とした。なお、ラットおよびマウスに2年間混餌投与した試験において、両動物種とも生存率に影響なく、投与に関連付けられる腫瘍の発生もなく、当該試験条件下では本物質に発がん性はないと結論されている(NTP TR159(1979))。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない |
- |
- | - |
妊娠ラットの器官形成期(妊娠7-16日)に混餌投与した発生毒性試験において、母動物の一般毒性として体重増加抑制が認められた用量において、着床後胚損失率、生存胎仔の数と性比に変化は無く、胎仔の形態学的検査でも発生毒性の証拠は得られなかった(SIDS(2005))と報告されているが、性機能および生殖能に対する影響についてはデータが無く不明のため「分類できない」とした。なお、雄ラットに交尾前45日間吸入ばく露して、精子形成、睾丸及び副睾丸への影響を認めたとの記述(環境省リスク評価第2巻(2003))があるが、詳細は不明である。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分2(全身毒性)、区分3(気道刺激性) |
警告 |
H371
H335 |
P309+P311
P260 P264 P270 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
ラットに500 mg/kg以上の経口投与により死亡が発生し、観察された症状は、鎮静、歩行失調、眼の充血であった(SIDS(2005))との報告に基づき、ガイダンス値区分2に相当する用量で標的臓器を特定できないため区分2(全身毒性)とした。一方、ヒトでの急性影響として、蒸気、煙霧、または粉塵の状態で本物質は粘膜および上気道に刺激性があり、最初のばく露で咳、くしゃみ、鼻と咽喉の灼熱感を生じる(SIDS(2005))と記述され、事例として、女性タンクローリー運転手が本物質運搬中に事故により流出させ、高濃度のガス状物質として吸入ばく露され、ばく露直後に上気道の灼熱感及び咳き込みがみられた(NITE初期リスク評価書 Ver.1.0 No.120(2008))と報告されていることから、区分3(気道刺激性)とした。なお、EU分類はXn; R22およびXi: R37(EC-JRC(ESIS(Access on Apr. 2012))である。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(呼吸器) |
危険 |
H372 |
P260
P264 P270 P314 P501 |
ヒトに対し本物質は蒸気、煙霧、粉塵の状態で粘膜および上気道を刺激し、反復または継続的ばく露により、気道の炎症、鼻粘膜の潰瘍形成と出血、粘膜の萎縮、嗅覚消失、嗄声、気管支炎などをもたらす(SIDS(2005))との記述に加え、事例として、アルキド樹脂などの製造工場で本物質を取り扱っていた作業者の調査結果では、取り扱い時に本物質の気中濃度が高くなるとともに、鼻炎、上気道の炎症、慢性気管支炎などの呼吸器障害の発症が多くなった(NITE初期リスク評価書 Ver.1.0 No.120(2008))との報告により、区分1(呼吸器)とした。なおラットおよびマウスに7週間または2年間混餌投与した試験では、高用量群、または低・高用量群における体重増加抑制を除き、生存率に影響はなくその他にも投与による悪影響が全く認められなかった(NTP TR159(1979))ことから、経口経路では区分外相当となる。また、雄ラットに交尾前45日間、1 mg/m3の濃度で吸入ばく露したところ、精子形成、睾丸及び副睾丸への影響を認めたとの記述(環境省リスク評価第2巻(2003))があるが、ばく露時間およびその他、試験に関する詳細は不明である。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分外 |
- |
- | - | 魚類(メダカ)の96時間LC50 > 99 mg/L(環境省生態影響試験 , 2003)であることから、区分外とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 |
- |
- | - | 急速分解性があり(良分解性(2週間でのBODによる分解度:85.2%)(既存点検, 1976))、魚類(ニジマス)の60日間NOEC = 10 mg/L(SIDS, 2005)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 16 mg/L(環境省生態影響試験, 2003)、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72-h NOEC = 32 mg/Lであることから、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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