GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:塩素
CAS番号:7782-50-5

結果:
物質ID: 25B0045
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成25年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H25.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分外 - - - - 不燃性(HSDB(Access on September 2013))
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 区分1 危険 H270: 発火又は火災助長のおそれ:酸化性物質 P370+P376: 火災の場合:安全に対処できるならば漏洩を止めること。
P220: 衣類/.../可燃物から遠ざけること。
P244: バルブ及び付属品にはグリース及び油を使用しないこと。
P403: 換気の良い場所で保管すること。
本物質は ISO 10156-2010 に記載されている酸化性ガスである。国連分類UN1017、クラス2.3(副次危険5.1,8)。
5 高圧ガス 液化ガス 警告 H280: 高圧ガス:熱すると爆発のおそれ P410+P403: 日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。 臨界温度(144℃(HSDB(Access on September 2013))は+65℃を超えるため、液化ガス(低圧液化ガス)とした。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(経皮) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの1時間LC50値として、293-1,000 ppm(4時間換算値: 147-500 ppm)(PATTY(6th, 2012))、850 mg/m3(293 ppm)(4時間換算値: 146 ppm)(EHC 21(1982)、 ATSDR(2010)、ACGIH(7th, 2001))、447 ppm(4時間換算値: 224 ppm)(ATSDR(2010)、EU-RAR(2007))の報告がある。ラットの53分ばく露LC50値として、1000 ppm(4時間換算値: 470 ppm)(ATSDR(2010))、ラットの30分ばく露LC50値として、688 ppm(4時間換算値: 243 ppm)(ATSDR(2010))、ラットの440分ばく露LC50値として、250 ppm(4時間換算値: 339 ppm)(ATSDR(2010))の報告がある。これらのLC50値はいずれも区分2に該当することに基づき、区分2とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで塩素ガスへのばく露により顔面に軽度の火傷を生じた事例(EHC 21(1982))、皮膚に腐食性を示す可能性がある HSDB(Access on September 2013))との記載がある。また、液化塩素は凍瘡、火傷を起こすとの記載(HSDB(Access on September 2013))があることから、液化塩素への接触には特に注意を要する。EU-RAR(2007)では、皮膚腐食性があることにより区分1を提案している。したがって、これらの情報に基づき、区分1とした。なお、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R36/37/38」、EU CLP分類において「Skin Irrit. 2 H315」に分類されている。今回の調査で入手した EU-RAR、EU DSD分類及びEU CLP分類を追加した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
本物質は、眼へのばく露で重篤な影響があると記載されている(詳細不記載)(SIDS-SIAP(2003))。また、サルで眼に刺激性を認めたとの記載(PATTY(6th, 2012))、ヒトで濃度により軽度から重度の刺激があるが、いずれも短時間で回復するとの記載(EHC 21(1982))、及びヒトで眼に腐食性や火傷を引き起こす危険があり、重篤なあるいは永続的な障害を及ぼすことがあるとの記載(HSDB(Access on September 2013))がある。すなわち、SIDS(2003)における眼へのばく露で重篤な影響と、HSDB(Access on September 2013)のヒトで眼に腐食性や火傷を引き起こす危険があり、重篤なあるいは永続的な障害を及ぼすとの情報は、区分1に該当する。なお、本物質はEU DSD分類で「Xi; R36/37/38」、EU CLP分類において「Eye Irrit. 2 H319」に分類されている。今回の調査で入手したSIDS-SIAP、EU DSD分類及びEU CLP分類の情報を追加した。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - 分類ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いる小核試験、染色体異常試験で陰性である(ATSDR(2010)、IUCLID(2000))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、染色体異常試験で陽性、陰性の結果が存在する(ATSDR(2010)、IUCLID(2000))。塩素(次亜塩素酸ナトリウム)は、in vitro変異原性を示す可能性があるが、in vivoでは変異原性を示さないと考えられている(SIDS(2003)、EU-RAR(2007))。なお、試験は次亜塩素酸ナトリウムを使って実施されていることが多いが、塩素の変異原性評価には妥当と考えられている(EU-RAR(2007))。
6 発がん性 分類できない - - - - ACGIH(1995)でA4に、IARC(1991)でグループ 3(塩素消毒した飲料水として)に、IRIS(1994)でグループDに分類されていることにより、「分類できない」とした。分類ガイダンスの改訂により分類区分を変更した。
7 生殖毒性 区分外 - - - - ラット及びマウスの試験において、親の生殖能力、児の発生発育に対する影響が見られないこと(EHC 21(1982)、EU-RAR(2007)、IRIS(1994)、IUCLID(2000))、及び塩素工場従業員において妊娠から授乳に至るまで影響がなかったとの記載(EHC 21(1982))に基づいて区分外とした。EU-RAR(2007)を追加した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウス、ウサギ、イヌの吸入ばく露において、区分1のガイダンス値範囲内のばく露量に相当する用量(< 2,500 ppm)で肺水腫、肺出血、肺機能低下、気管支炎、気管上皮の壊死など呼吸器系への障害が見られ、ラットでも用量の記載はないが同様の障害が見られる(EHC 21(1982)、EU-RAR(2007))。また、マウス、ネコ、ウサギ及びモルモットでは気道粘膜の炎症、息詰まり、呼吸数減少、上部気道刺激の記載(EHC 21(1982)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、EU-RAR(2007))もある。ヒトにおいては、肺炎、肺水腫、気管支炎、気管気管支の潰瘍、肺機能の低下、喘息及び喘息様症状(RADS)、喉や鼻への刺激、咳、呼吸困難など呼吸器系への障害及び刺激性を示す記載(EHC 21(1982)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012))がある。これらの情報に基づいて区分1(呼吸器)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器、肝臓、腎臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、肝臓、腎臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに6週間、マウスに2年間ガスを吸入ばく露した試験において、区分1のガイダンス値範囲内の濃度 0.41-3 ppm)で、気道や肺に障害を及ぼすとの記載や、気道上皮の炎症及び組織学的変化を認めたとの記載(EHC 21(1982)、 PATTY(6th, 2012)、IUCLID(2000))がある。ヒトで気管支疾患、肺出血を起こす可能性が指摘され(EHC 21(1982))、咳、喉の痛み、喀血、胸痛などの所見が記載されている(ACGIH(7th, 2001))。これらの情報に基づいて区分1(呼吸器)とした。また、ラットの6週間吸入ばく露試験(ガス)において、区分1のガイダンス値範囲内の濃度で、肝細胞の空胞化(1.4ppm以上(90日換算値))、腎臓の近位尿細管の変性(4.2 ppm(同換算値))がみられたとの記載(PATTY(6th, 2012))に基づき、区分1(肝臓、腎臓)とした。なお、旧分類に採用された区分1(嗅覚器)への影響は「呼吸器」に包含されると判断し、これを削除した。また、旧分類の区分2(歯)はList 3の情報源を基にした分類結果であったが、今回調査したList 1及び2の情報源からは「歯」を標的臓器毒性とする根拠データが得られなかったため、これを削除した。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - - - GHS定義におけるガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - 適切なデータが得られておらず、分類できない。なお、本物質は、水中では、塩酸と次亜塩素酸を生じ、次亜塩素酸は水素イオンと活性酸素の・ClOとなり、殺菌作用を示すことが知られている。よって、水生環境の分類においては、次亜塩素酸ナトリウムあるいは次亜塩素酸カルシウムなどの分類を参照することが望ましい。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る