GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 156-60-5
名称 trans-1,2-ジクロロエチレン  (再分類)
物質ID H26-B-046, R-020
分類実施年度 平成26年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点6℃ (closed cup)、沸点48.7℃ (HSDB (Access on June 2014)) に基づいて区分2とした。
なお、国連分類はUN1150、クラス3、PGIIである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 分子内に自己反応性に関連する原子団 (不飽和結合) を含むが、通常流通しているものは安定剤が含まれる。国連分類はUN1150、クラス3、PGIIに分類している。したがって、安定剤を含むものについて、タイプGとした。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- - 発火点が440℃ (GESTIS (Access on June 2014)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P362+P364
P264
P270
P330
P501
ラットのLD50値として、1,235 mg/kg (環境省リスク評価第4巻 (2005))、1,280 mg/kg (IRIS TR (2010))、1,275 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、7,900 mg/kg (雄)、10,000 mg/kg (雌) (ATSDR (1996))、7,902 mg/kg (雄)、9,939 mg/kg (雌) (IRIS TR (2010))、7,900 mg/kg (雄)、9,900 mg/kg (雌) (PATTY (6th, 2012))、1,235 - 10,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) の7件の報告がある。最も多くのデータが該当する区分は区分4及び区分外 (各3件づつ) であるが、LD50値の最小値が該当する区分4とした。なお、残りの1件は集約データであるため、該当数に含めなかった。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- - ウサギのLD50値として、> 5,000 mg/kg との報告 (IRIS TR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク第4巻 (2005)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外
-
-
- - ラットのLC50値 (4時間) として、95,400 mg/m3 (=24,041 ppm) との報告 (IRIS TR (2010)) に基づき、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (435,526 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
ウサギに本物質の原液0.5 mLを24時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で、軽度から中等度の紅斑がみられた (NITE初期リスク評価 (2008)、ATSDR (1996)、IRIS TR (2010)) との報告や、ウサギの皮膚に本物質5,000 mg/kgを適用した結果、重度の皮膚刺激性がみられたが回復性については不明との報告がある (ATSDR (1996))。また、ヒトに対しても皮膚を刺激するとの記載がある (環境省リスク第4巻 (2005))。以上の結果から区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
ウサギに本物質の原液0.01 mLを適用し、適用20秒後に洗浄した眼刺激性試験で、洗浄した眼では重度の角膜混濁がみられ、また洗浄、非洗浄に関わらず、中等度の虹彩炎及び結膜炎が観察されたが、3 日後、2 匹とも回復したとの報告がある (NITE初期リスク評価 (2008)、ATSDR (1996)、IRIS TR (2010))。また、ヒトにおいて本物質のばく露により、焼灼感を伴う眼の痛みや軽度の炎症の報告がある (NITE初期リスク評価 (2008)、環境省リスク第4巻 (2005))。以上の結果から、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞及び末梢血赤血球の小核試験、染色体異常試験、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性である (環境省リスク第4巻 (2005)、ATSDR (1996)、IRIS TR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008)、NTP DB (Access on July 2014))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験 (異数性) で陽性結果があるが、それ以外の細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、不定期DNA合成試験では陰性の結果である (環境省リスク第4巻 (2005)、ATSDR (1996)、IRIS TR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008)、NTP DB (Access on July 2014))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験において、母動物毒性 (体重減少、摂餌量減少、昏睡、嗜眠、流涎、脱毛) のみられる用量で胎児体重減少がみられたとの報告がある (IRIS TR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。胎児への影響はわずかであったため不採用とした。生殖能に対する影響に関してはデータがなく不明のため分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器、肝臓)、区分2 (心臓)、区分3 (麻酔作用)



危険
警告
H370
H371
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
ヒトにおいては、気道刺激性を有する (環境省リスク第4巻 (2005))。また、吸入により、咳、咽喉痛、眩暈、吐き気、傾眠、脱力感、嘔吐、衰弱、振戦、幻覚、誤認識、意識低下、頭蓋内圧亢進などが報告され、中枢神経系抑制作用を示し、経口摂取では、腹痛を生じる場合がある。また、本物質は麻酔剤として用いられ、めまい、悪心など麻酔作用を有する (環境省リスク第4巻 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1996))。
実験動物においては、吸入ばく露で麻酔作用が認められている。また、ラットの0.79 mg/Lで肝小葉及びクッパー細胞の軽度-重度の脂肪変性あるいは脂肪蓄積、11.90 mg/Lで心筋の線維性腫脹及び充血、心筋横紋パターン消失、3.97 mg/L及び11.90 mg/L (trans体かどうかは不明) は、著しい肺の充血、肺胞中隔膜の拡張及び肺浸潤が報告されている (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1996)、PATTY (6th, 2012))。
ラット又はマウスの1,000 mg/kgの経口投与で、活動低下、運動失調、正向反射消失、立毛、円背位姿勢、呼吸減少、胃粘膜と小腸粘膜表面の充血の報告、ラットの解剖所見では、肺毛細血管の重度の充血、肺胞中隔膜の拡張、心筋の線維性腫脹及び充血、マウスの解剖所見では胃・小腸の粘膜表面の充血が認められている (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1996)、PATTY (6th, 2012))。なお、以上の実験動物の知見は、呼吸器及び肝臓の影響が区分1に相当するガイダンス値の範囲で、また、心臓の影響が区分2に相当するガイダンス値の範囲でそれぞれ見られた。
以上より、区分1 (呼吸器、肝臓)、区分2 (心臓)、区分3 (麻酔作用) とした。



9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない
-
-
- - ヒトで分類に有用なデータはない。実験動物ではマウスに90日間飲水投与又はラットに14週間混餌投与した試験において、区分外の高用量 (175 mg/kg/day) で肝臓 (重量増加、血清ALPの上昇)、血液系 (赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトリット値及び白血球数の減少)、免疫系 (液性免疫の低下 (マウスのみ)) への影響がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、IRIS TR (2010)、環境省リスク評価第4巻 (2005))。
一方、吸入経路ではラットに本物質 (蒸気と推定) を16週間吸入ばく露 (8時間/日) した試験において、区分2を僅かに超える濃度 (200 ppm: 790-802 mg/m3 (ガイダンス値換算: 1.05-1.07 mg/L/6 hr)) で、呼吸器 (肺胞中隔の拡張を伴った肺の充血) 及び肝臓 (肝小葉及びクッパー細胞における脂肪沈着) への影響が認められた (NITE初期リスク評価書 (2008)、IRIS TR (2010)、環境省リスク評価第4巻 (2005))。しかし、この試験より後に実施されたラットの90日間吸入ばく露試験では区分2の上限値を遥かに超える高濃度 (15.8 mg/L/6 hr) ばく露でも、総白血球数及びリンパ球数の減少がみられた以外に有害性影響はみられず (IRIS TR (2010))、IRISは試験の信頼性に疑問を呈し、吸入経路でのRfD算出は情報不足のため困難としている (IRIS (2010))。
以上、経口経路では区分外相当であるが、吸入経路では2件のラット吸入ばく露試験間で、標的臓器及び影響濃度に一貫性がなく、吸入経路では分類に利用する上で、適切なデータはないと判断した。すなわち、データ不足のため分類できないとした。なお、旧分類はIRIS (1998) を情報源としたが、今回はIRIS改訂版 (2010) を情報源として利用したため、分類結果が異なったと推定された。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外
-
-
- - 甲殻類(オオミジンコ )の48時間LC50 = 220 mg/L (環境省リスク評価第4巻, 2002、NITE 初期リスク評価書, 2008)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-
-
- - 信頼性のある慢性毒性データが得られていない。難水溶性ではなく(水溶解度=4520mg/L、PHYSPROP Database 2009)、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

GHS関連情報トップページに戻る