項目 | 情報 |
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CAS登録番号 | 88-89-1 |
名称 | ピクリン酸(再分類) |
物質ID | H26-B-079, R-033 |
分類実施年度 | 平成26年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 等級1.1 |
危険 |
H201 | P370+P380 P210 P230 P240 P250 P280 P372 P373 P401 P501 |
爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を有し、酸素収支が-45であり、かつ爆発安全データベース (2005) による分解開始温度は118℃ではあるが分解エネルギーは5.1 kJ/gであり、爆発物に該当する。国連分類0154、クラス1.1Dに分類されている (乾性又は湿性、30 質量%未満の水を含有するもの)。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない |
- |
- | - | 爆発物に分類されているが、可燃性に関するデータがなく分類できない。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発物に分類されている。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 |
- |
- | - | 発火点が300℃ (ICSC (2008)) であり、常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない |
- |
- | - | フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外の元素 (N) と結合しているが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
危険 |
H301 | P301+P310 P361+P364 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、200 mg/kg (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))、200 mg/kg (雌)、290 mg/kg (雄) (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 17 (2002))、283 mg/kg (雌)、492 mg/kg (雄) (SIDS (2012)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2014)) との5件の報告がある。4件が区分3に、1件が区分4に該当するので、分類ガイダンスに従い、最も多くのデータが該当する区分3とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。なお、SIDS (2012) には信頼性の低い二次情報として、皮膚に対して刺激性を示すとの記載があるが、詳細不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B |
警告 |
H320 | P305+P351+P338 P337+P313 P264 |
ウサギを用いた眼刺激性試験 (ドレイズ試験) において、軽度の刺激性がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2012))。また、ヒトの眼に対して刺激性を示すとの記載がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。以上、動物で「軽度の刺激性」の報告から区分2Bとした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
モルモットを用いた皮膚感作性試験 (Split adjuvant test) で、本物質2%又は0.2%を適用した結果、平均スコアは両群とも4.1であり、「感作性あり」と判断されている (SIDS (2012))。また、モルモットを用いた別の試験においても皮膚感作性ありとの記載がある (DFGOT vol. 17 (2002))。さらに、本物質は感作性を持つとの記載 (PATTY (6th, 2012)) や、ヒトに対して感作性を示す (DFGOT vol. 17 (2002)、ACGIH (7th, 2001)) との記載がある。以上の結果から区分1とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
- |
- | - | ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性 (SIDS (2012)、DFGOT vol. 17 (2002)、HSDB (Access on August 2014))、in vitroでは、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on September 2014)、SIDS (2012)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 17 (2002)、NTP DB (Access on September 2014)、HSDB (Access on August 2014))。 |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない |
- |
- | - | ラットを用いた経口経路 (強制) での簡易生殖毒性試験 (OECD TG 421) において、親動物毒性 (体重増加抑制、肝臓、腎臓及び脾臓の重量増加、精巣上体の重量減少 (雄)、盲腸の粘膜肥厚 (雄1例)、精巣の軽度の精細管萎縮 (雄1例)、精巣のステージIX-XIにおけるstep19精子細胞の遺残) がみられる用量 (45 mg/kg bw/day) で生殖能、次世代の発生・発育に影響がみられていないとの報告がある (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on September 2014)、SIDS (2012))。簡易生殖毒性試験の結果が得られたため情報を追加した。その結果、生殖毒性は認められていないが、簡易生殖毒性試験であることから、情報が十分でなく分類できないとした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性) |
危険 警告 |
H370 H335 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 P304+P340 P403+P233 P261 P271 P312 |
本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004))。ヒトにおいては、経口摂取により、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、下痢、皮膚の黄染、暗色尿、高濃度 (詳細不明) のばく露で、赤血球の破壊、胃腸炎、出血性腎炎、急性肝炎を発症、物が黄色く見える色覚異常、衰弱、昏睡、筋肉痛、無尿、多尿、血尿、タンパク尿の報告がある (環境省リスク評価第3巻:暫定的有害性評価シート (2004)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2012)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on August 2014))。 実験動物では、ラットの200-800 mg/kgの経口投与で、自発運動低下、歩行異常、間代性痙攣、200-290 mg/kgで、振戦、強直間代痙攣、イヌの50 mg/kg (致死量を超えない用量) で、糸球体炎を含む腎臓の一過性の変化が認められている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on September 2014)、SIDS (2012)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 17 (2002))。これらの中枢神経系及び腎臓への影響は区分1のガイダンス値範囲の濃度で認められた。 以上より、区分1 (中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性) とした。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (血液系)、区分2 (肝臓、精巣) |
危険 警告 |
H372 H373 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトでの反復ばく露による知見として、戦時中に本物質を2-20 mg/Lの濃度で含む飲料水を摂取した米兵に血尿が生じた (DFGOT vol. 17 (2002)、ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第3巻: 暫定的有害性評価シート (2004)) との報告があり、本物質単回ばく露でも生じるとされる赤血球溶血 (DFGOT vol. 17 (2002)、ACGIH (7th, 2001)) との関連性が示唆されることから、本物質は反復ばく露により、血液系への影響を示すものと考えられた。 実験動物ではラットに本物質を28日間強制経口投与した試験において、100 mg/kg/day (90日換算: 31.1 mg/kg/day (区分2相当)) で、血液毒性及び脾臓における関連所見 (赤血球数及びヘモグロビン濃度の減少、白血球数の増加、脾臓におけるヘモジデリン沈着、髄外造血、脾臓胚中心の発達)、精巣毒性 (精巣の精細管萎縮、精巣上体における管腔内細胞残屑及び精子の減少)、盲腸の潰瘍、肝臓への影響 (相対重量増加、γ-GT活性の上昇 (雄のみ)、小葉中心性肝細胞肥大) がみられた (SIDS (2012)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on September 2014))。 以上、ヒト及び実験動物の経口経路における有害性知見より、脾臓への影響は血液毒性による二次的影響、盲腸の所見はヒト健康影響への外挿の妥当性を欠くとして標的臓器から除外し、区分1 (血液系)、区分2 (肝臓、精巣) に分類した。なお、今回は旧分類時以降に発行されたSIDSで示唆された標的臓器との整合性も考慮し、標的臓器に「肝臓」を追加した。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分3 |
- |
H402 | P273 P501 |
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 85 mg/L (SIDS, 2010)であることから、区分3とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 |
- |
- | - | 慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:23%(既存点検, 2003)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC=5 mg/L(SIDS, 2010)であることから、区分外となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、藻類(セネデスムス)の72時間ErC50 > 500 mg/L(SIDS, 2010)、魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 109.6 mg/L(環境省リスク評価第4巻, 2005)であり、難水溶性ではない(水溶解度=12700mg/L、PHYSPROP Database, 2009)ことから、区分外となる。 以上の結果から、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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