GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 85-44-9
名称 無水フタル酸 (再分類)
物質ID H26-B-131, -
分類実施年度 平成26年度
分類実施者 厚生労働省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成24年度   平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-
-
- - ICSC (2003) では可燃性としているが、データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- - 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- - 発火点が570℃ (ICSC (2003)) であり、常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、ステンレス鋼とアルミニウムは耐久性がある(ホンメル (1991)) という情報がある。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P362+P364
P264
P270
P330
P501
ラットのLD50値として、800-1,600 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、NTP TR159 (1979))、800-4,020 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))、1,530 mg/kg (4件) (CICAD 75 (2009)、DFGOT vol. 25 (2009)、SIDS (2006)、環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003))、2,000 mg/kg (DFGOT vol. 25 (2009))、4,020 mg/kg (2件) (DFGOT vol. 25 (2009)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)、NTP TR159 (1979)) の9件の報告がある。最も多くのデータ (6件) が該当する区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- - ウサギのLD50値として、> 10,000 mg/kgとの報告 (DFGOT vol. 25 (2009)、NITE初期リスク評価書 (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。なお、ラットのLC50値 (1時間) として、> 0.21 mg/L (4時間換算値:> 0.0525 mg/L) との報告 (DFGOT vol. 25 (2009)、NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2006)、環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998)) があるが、このデータのみでは区分を特定できない。なお、SIDS (2006) では、このデータは古く、動物数が少ないため、信頼性が低いもの (Relaiability 4) としている。LC50値が飽和蒸気圧濃度 (0.017 mg/L) より高いため、粉じんの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-
-
- - テストガイドライン (OECD TG 404) に準拠した試験が2報あり、1報目は平均皮膚刺激指数1.21で軽度の刺激性 (SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008))、2報目では刺激反応はみられなかったことから刺激性なし(SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) と報告されている。また、ウサギの皮膚に本物質500 mgを水で湿らせて24時間半閉塞適用した結果、皮膚刺激指数 (PDII) が1.5で軽度の刺激性 (SIDS (2006)) と報告されていることに基づき、JIS分類基準の区分外 (国連分類基準の区分3に相当) とした。なお、ヒトの皮膚に対して強い刺激性があるとの記載があるが (NITE初期リスク評価書 (2008))、SIDS (2006) ではヒトの職業ばく露における影響を、原体中に含まれる不純物が原因のように思われる (SIDS (2006)) と記載している。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
ウサギの結膜嚢に未希釈の試験物質50 mgを適用した試験において、角膜、虹彩、結膜に刺激性がみられたが、7日間の観察期間内に結膜発赤を除き全て回復し中等度の刺激性との報告がある (SIDS (2006)。また、ウサギの眼に未希釈の試験物質100 mgを適用した試験では、平均スコア (AOIに相当) は24時間において59.2で刺激性ありとの評価 (SIDS (2006)) が得られている。以上の刺激性スコア及び中等度の刺激性との記載に基づき区分2Aとした。なお、本物質はEU DSD分類において「Xi:R42」、EU CLP分類において「Eye Dam 1 H318」に分類されている。
4 呼吸器感作性 区分1A


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
本物質は、日本産業衛生学会で気道感作性物質の第1群に、ACGIH (7th, 2013) ではRSEN (Respiratory Sensitizer) に分類されている (産業衛生学会許容濃度の勧告 (2014)、ACGIH (7th, 2013))。また、喘息とアレルギー性鼻炎の最初の事例が1939年に報告されて以来、呼吸器感作物質として知られている (SIDS (2006)) との記載がある。本物質を扱う作業者において喘息の報告が複数あり、118人の疫学調査で、13人 (11%) に慢性気 管支 炎、21人 (18%) に喘息の報告や (SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 11 (1998))、アルキド樹脂製造工場で働く作業者35人の調査において、5人に喘息、6人に慢性気管支炎がみられた (SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告がある。 以上の結果から、区分1Aと判断した。
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験 (OECD TG 406) において、陽性率は90%であった (SIDS (2006)) との報告がある。また、モルモットを用いたビューラー試験やマウスを用いた局所リンパ節試験(LLNA試験) など多くの試験で陽性結果が得られたことから感作性ありと判断されている (SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008))。ヒトにおいても、本物質を取り扱う作業者191人にパッチテストを行った結果、14%の作業者にアレルギー反応がみられたとの報告がある (SIDS (2006))。また、本物質は、DFGOT vol. 25 (2009) でSEN、ACGIH (7th, 2013) ではDSEN に分類されている (DFGOT vol. 25 (2009)、ACGIH (7th, 2013))。以上の結果から区分1と判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。In vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2014)、SIDS (2006)、NTP DB (Access on October 2014)、CICAD 75 (2009)、DFGOT vol. 25 (2009))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- - ACGIHでA4に分類されている (ACGIH (7th, 2014)) ことから、「分類できない」とした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
旧分類において、「環境省リスク評価第2巻 (2003) の記述から、母動物での一般毒性に関する記述はないが、精子形成、睾丸及び副睾丸への影響がみられていることから区分2とした。」と記載されている。根拠データは、雄ラットに45日間吸入ばく露した試験であるが、SIDS (2006) では報告が不十分であり評価できないとしている。また、雄の生殖器についてのみ調べていることから分類に用いなかった。
なお、本物質ではないが、フタル酸を妊娠ラットに混餌投与した催奇形性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる極めて高い用量 (3,000 mg/kg/day) において胎児にわずかな影響 (尾椎の骨化遅延) が報告されている (SIDS (2006))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性、麻酔作用)


警告
H335
H336
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
P405
P501
本物質は、気道刺激性を示す(環境省リスク評価第2巻:暫定的有害性評価シート (2003)、ACGIH (7th, 2014)、CICAD 75 (2009)、DFGOT vol. 25 (2009)、SIDS (2006))。ヒトにおいては、高濃度のガス状の吸入ばく露で、呼吸器障害の報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1998))。また、粉塵等の吸入ばく露で、頭痛、めまい、吐き気、心窩部灼熱感、窒息感が報告されている (SIDS (2006))。
実験動物では、経口投与500 mg/kgで、鎮静、ふらつきの報告がある (SIDS (2006))。
以上より、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
アルキド樹脂又はポリエステル樹脂の製造工場で本物質に反復吸入ばく露を受けた作業者118名のうち、28名に鼻炎及び上気道の炎症、13名に慢性気管支炎、21名に喘息がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 75 (2009)、ACGIH (7th, 2014)) との記述、並びにアルキド樹脂製造工場で本物質に反復吸入ばく露された作業者35名中16名に結膜炎、14名に鼻炎、5名に喘息、6名に慢性気管支炎がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 75 (2009)) との記述がある。
実験動物ではラット、又はマウスに7週間又は2年混餌投与した試験では、1,000 mg/kg/dayを超える用量でも明確な標的臓器毒性はみられなかった (SIDS (2006)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2014))。一方、吸入経路では信頼性に制限はあるが、モルモットに反復吸入ばく露 (8.5 mg/m3: 3時間/日、4日間連続ばく露後10日間ばく露を中止するサイクルで8ヶ月間ばく露) した試験において、眼 (結膜炎) 及び呼吸器 (気道粘膜の充血、肺の炎症) に影響がみられた (ACGIH (7th, 2014)、NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
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- - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) -
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11 水生環境有害性(長期間) -
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12 オゾン層への有害性 -
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分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

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