GHS分類結果

名称:N-ブトキシメチル-2-クロロ-2',6'-ジエチルアセトアニリド (別名:ブタクロール)
CAS番号:23184-66-9

結果:
物質ID: H27-A-09-METI/M-007A_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が> 135℃ (closed cup) (The pesticide manual (2006)) であり、区分外とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団及び自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 熱に150℃まで安定 (農薬抄録U-2、農薬ハンドブック (2005)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素を含まず、酸素及び塩素を含む有機化合物であるが、この酸素及び塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、1,740 mg/kg、2,000 mg/kg (HSDB (Access on October 2015))、 2,620 mg/kg (雄)、3,050 mg/kg (雌) (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)) との4件の報告がある。区分4と区分外 (国連分類基準の区分5) に、それぞれ2件ずつが該当するので、LD50値の最小値が該当する区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値として、13,000 mg/kg (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)) 及び> 13,000 mg/kgとの報告 (HSDB (Access on October 2015) に基づき区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、> 3.34 mg/L (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))、> 5.3 mg/L (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)) との2件の報告がある。1件は区分外であり、1件は> 3.34 mg/Lのため区分を特定できなく分類できないので、区分外となるが、安全側に立ち、LC50値の最小値が該当する区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (0.00003 mg/L) の90%より高いため、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質0.5 mLを24時間又は72時間適用した結果、浮腫及び紅斑がみられたとの報告がある (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)) が、24時間適用の報告であるため分類には用いなかった。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質の原液0.1 mLを適用した結果、結膜充血及び結膜浮腫がみられたが3日以内に回復した (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)) との報告がある。以上から区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いたビューラー試験において、感作惹起後に半数の動物に明確な感作反応がみられ、さらに2回目の惹起では全例に明確な反応を示したとの報告がある (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。以上より、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、マウスの優性致死試験、マウス骨髄細胞の小核試験、ラット骨髄細胞の染色体異常試験、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験で陰性、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性である (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。したがって、ガイダンスに従い分類できないとした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口経路 (混餌) による26ヶ月間発がん性試験において、雌雄ともに死亡率の軽度増加がみられる1,000 ppm以上の用量で甲状腺濾胞上皮腺腫及び鼻部の腺腫の頻度増加が雌に、3,000 ppmではそれらが雌雄に、加えて胃の悪性腫瘍 (カルチノイド:悪性神経内分泌細胞腫) の頻度増加が雌にみられた (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)、HSDB (Access on October 2015))。 一方、マウスの24ヶ月間混餌投与による試験では、2,000 ppm までの用量で被験物質投与と関連した腫瘍発生はみられなかったと報告されている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。食品安全委員会では、発がん性試験において、ラットで胃、甲状腺及び鼻部における腫瘍の発生頻度が増加したが、腫瘍の発生メカニズムは遺伝毒性によるものではなく、評価にあたり閾値を設定することは可能であるとした (食品安全委員会農薬評価書 (2011))。なお、国際機関等による分類結果はない。 以上、実験動物での発がん性に関して、ラットとマウスの動物種間で異なる結果が得られたが、ラットでは多臓器に腫瘍発生がみられ、特に雌のみであるが胃に悪性腫瘍が高頻度 (20/80例) にみられたことを重視し、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 区分外 - - - - ラットを用いた経口経路 (混餌投与) による2世代繁殖毒性試験において、親動物にはF0 の3,000 ppm、F1 の1,000 ppm 以上の用量で体重増加抑制がみられ、F1児動物に1,000 ppm以上で哺育14日以降、F2児動物では3,000 ppmで哺育4日以降にいずれも体重増加抑制がみられた以外に親動物の生殖能、児動物の生存率、生後の発育に異常はみられていない (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。また、妊娠ラットの妊娠6〜19日、又は妊娠ウサギの6〜28日に強制経口投与した催奇形性試験において、ラットでは最高用量の490 mg/kg/dayで母動物に体重増加抑制がみられたものの、胎児には明らかな毒性影響は示されなかった (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。一方、ウサギでは147 mg/kg/day及び 最高用量の245 mg/kg/dayで、母動物に死亡例の発現、流産の増加、体重の低下、致死胚数の増加、胎児には胎児重量の低値、第5・第6胸骨の未骨化がそれぞれみられた (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。胸骨の未骨化は胎児体重の低値から推察されるように、胎児の成長遅延を反映した骨化遅延によるものとされている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。すなわち、ラット及びウサギの催奇形性試験において、母動物毒性発現量まで投与しても、胎児への影響は軽微な影響のみで、明確な発生毒性はないと考えられる。 以上、ラット繁殖毒性試験、及び妊娠動物を用いた催奇形性試験結果より、本項は区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質に関するヒトのデータはない。実験動物では、ラット、マウスの経口投与、ウサギの経皮投与、ラットの吸入ばく露試験のデータがある (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011)、農薬工業会 農薬安全性情報_日本農薬学会誌 第25巻 第1号 (1999))。そのうち、ラットの急性吸入ばく露試験で呼吸器の刺激 (食品安全委員会農薬評価書 (2011)) と記載されているため、区分3 (気道刺激性) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (腎臓)、区分2 (眼、甲状腺、呼吸器、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(眼、甲状腺、呼吸器、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する報告はない。 実験動物に関しては、ラットを用いた90日間混餌投与毒性試験において、区分2の範囲である1,000 ppm投与群 (雄:58.7 mg/kg/day、雌:62.7 mg/kg/day) 以上で、雄に肝臓への影響 (び漫性肝細胞肥大等)、雌に膀胱への影響 (膀胱上皮過形成) がみられている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。イヌを用いた1年間強制経口投与毒性試験において、区分2の範囲である25 mg/kg/day投与群で雌雄に肝臓への影響 (小葉周辺性あるいはび漫性肝細胞肥大等)、雌に膵臓への影響 (外分泌腺細胞肥大) がみられている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。ラットを用いた混餌投与による24ヶ月間慢性毒性/発がん性併合試験において区分2の範囲である1,000 ppm投与群 (雄:37.1 mg/kg/day、雌:43.4 mg/kg/day) で雌雄に肝臓への影響 (び漫性肝細胞腫大、GGTの増加等)、腎臓への影響 (慢性腎症等)、膀胱への影響 (膀胱粘膜上皮過形成)、雌に眼への影響 (白内障、網膜萎縮・変性) がみられている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。ラットを用いた混餌投与による26ヶ月間慢性毒性/発がん性併合試験において、区分1の範囲である100 ppm投与群 (雄:4.5mg/kg/day、雌:5.7 mg/kg/day) 以上で雌雄に 腎臓への影響 (慢性腎症等)、区分2の範囲である1,000 ppm投与群 (雄:45.6 mg/kg/day、雌:58.5 mg/kg/day) 以上で雌雄に甲状腺への影響 (濾胞上皮過形成等)、雄に鼻腔への影響 (鼻粘膜杯細胞過形成)、雌に膵臓への影響 (脂肪症) がみられている (農薬抄録 (2012))。マウスを用いた混餌投与による2年間発がん性試験において区分2の範囲である500 ppm投与群 (雄:72.45 mg/kg/day、雌:85.62 mg/kg/day) 以上で雌雄に眼への影響 (白内障)、雄に胆嚢への影響 (胆嚢粘膜過形成)、雌に肺への影響 (肺胞・細気管支上皮過形成等) がみられている (農薬抄録 (2012)、食品安全委員会農薬評価書 (2011))。 以上のように、腎臓への影響は区分1から、眼、甲状腺、呼吸器、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱への影響は区分2の範囲でみられている。 したがって、区分1 (腎臓)、区分2 (眼、甲状腺、呼吸器、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on October 2015) に収載された数値データ (粘性率: 37 mPa・s (25 ℃)、密度: 1.07 g/cm3 (25 ℃)) より、動粘性率は34.6 mm2/sec (25 ℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)72時間ErC50 = 0.0033 mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第8巻, 2010)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC(r) = 0.000474 mg/L(環境省リスク評価第8巻, 2010))であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(メダカ)の96時間LC50 = 0.28 mg/L(環境庁生態影響試験, 1997、環境省リスク評価第8巻, 2010)、魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.28 mg/L(環境省リスク評価第8巻, 2010)であることから、区分1となる。 以上の結果から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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