GHS分類結果

名称:メチル=(S)-7-クロロ-2,3,4アール,5-テトラヒドロ-2-[メトキシカルボニル(4-トリフルオロメトキシフェニル)カルバモイル]インデノ[1,2-e][1,3,4]オキサジアジン-4a-カルボキシラート (別名インドキサカルブ又はインドキサカルブM)(S体:R体=75:25)
CAS番号:173584-44-6

結果:
物質ID: H27-A-10-METI/M-008A_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 隣接する窒素原子を含み、酸素収支が-153と判定基準の-200より大きいが、発熱分解エネルギーと発熱開始温度のデータがなく、分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性 (ECHA (2011)) である。ただし、ラセミ体 S体:R体=50:50 でのデータ。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 隣接する窒素原子を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性 (ECHA (2011)) である。ただし、ラセミ体 S体:R体=50:50 でのデータ。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素及び塩素を含む有機化合物であるが、この酸素、フッ素及び塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、雌雄ともに> 1,500 mg/kgとの報告 (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008)) がある。また、1,730 mg/kg (雄)、268 mg/kg (雌) との2件の報告 (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)) があるが、詳細は不明である。したがって、雌雄ともに > 1,500 mg/kgとのデータをもとに区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として> 5,000 mg/kg (雄、雌) との報告 (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットのLC50値 (4時間ばく露) として、5.5 mg/kgとの報告 (農薬抄録 (2007)) に基づき、区分外とした。被験物質が固体であるために、粉じんの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、刺激性なし (S体:R体=75:25及び79:21) との報告がある (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)、農薬抄録 (2007))。以上より、区分外とした。なお、その他の情報として、ウサギを用いた皮膚刺激性試験報告において軽微〜軽度の刺激性あり (S体:R体=50:50) との報告がある (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)、農薬抄録 (2007)) が、本分類はS体:R体=75:25の情報を用いて分類した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、中等度の刺激性あり (S体:R体=75:25) (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)) 及び軽度の刺激性あり (S体:R体=79:21) との報告 (農薬抄録 (2007)) がある。以上、中等度の刺激性ありとの報告から区分2Aとした。なお、その他の情報として、ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性あり (S体:R体=50:50) (農薬抄録 (2007)) 又は刺激性なし (S体:R体=50.6:17.2) との報告 (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)) があるが、本分類はS体:R体=75:25の情報を用いて分類した。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質を含む異性体混合物 (S体:R体=75:25、79:21) については、モルモットを用いた感作性試験の報告が複数あり、いずれも陽性と判断されている (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)、農薬抄録 (2007))。以上より区分1とした。本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1B H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - S体:R体=75:25では、in vivoにおいて、染色体異常試験 (動物種等不明) で陰性 (EPA Pesticide Fact Sheet (2000))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性である (EPA Pesticide Fact Sheet (2000))。したがって、ガイダンスに従い、分類できないとした。なお、S体:R体=79:21の物質では、in vivoでマウスの骨髄小核試験で陰性、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ヒト末梢血リンパ球の染色体異常試験で陰性である (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008)、HSDB (Access on October 2015))。
6 発がん性 区分外 - - - - 本物質自体の試験データはない。しかし、EPAはラセミ体混合物 (R体:S体 = 50:50) について実施された発がん性データに基づき、本物質に対する発がん性分類として、NL (Not Likely to be Carcinogenic to Humans) に区分した (EPA Pesticide Fact Sheet (2000)、HSDB (Access on October 2015))。その根拠データはラセミ体混合物をラットに2年間、又はマウスに1.5年間混餌投与した発がん性試験において、ラットでは雄で125 ppm 以上、雌で60 ppm以上で、マウスでは雌雄とも100 ppm以上の用量で体重増加抑制がみられたが、ラット、マウスの雌雄いずれの群にも腫瘍発生はみられなかった (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008)、HSDB (Access on October 2015)) との結果に基づく。 以上、ラセミ体混合物の発がん性試験結果を用いたEPAの発がん性分類結果より、ガイダンスに従い本項は区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 本物質自体に関しては催奇形性試験結果が1件ある。すなわち、妊娠ラットにポリエチレングリコール (PEG) に溶解した本物質 (S体:R体=79:21) を妊娠6〜15日まで強制経口投与した催奇形性試験では、最高4.0 mg/kg/dayの用量で母動物に体重増加抑制、摂餌量低下が、胎児に平均胎児体重の低値と骨格変異 (波状肋骨、2/22腹) がみられ (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008)、HSDB (Access on October 2015))、EPAもこの結果より本物質 (S体:R体=75:25) の母動物毒性/発生毒性のNOAELはともに2 mg/kg/day と報告している (EPA Pesticide Fact Sheet (2000))。 以上、胎児にみられた影響はいずれも軽微で分類の対象としない所見であったが、本物質投与による生殖能・性機能への影響を評価した試験結果がなく、本項はデータ不足のため分類できないとした。 なお、ラセミ体混合物 (S体:R体 = 50:50) については、ラットを用いた2世代生殖毒性試験、妊娠ラット又は妊娠ウサギを用いた催奇形性試験のデータがあり、親動物に体重増加抑制、摂餌量減少などがみられる毒性発現用量においても、児動物、胎児には体重の低値、骨化遅延など軽微な影響がみられたのみであった (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008)、HSDB (Access on October 2015)、EPA Pesticide Fact Sheet (2000))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (中枢神経系)、区分3 (麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(中枢神経系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質のデータではないが、S体/R体=71.3/22.0などの混合物 (配合比は試験データにより若干異なる複数のものが存在する) を用いた実験動物のデータは存在する。すなわち、ラットの経口投与による急性神経毒性試験では、区分1相当の100 mg/kgで自発運動量の一過性の減少、区分1相当の200 mg/kgで前肢握力の減少、後肢開脚幅の減少が認められ、神経毒性の無毒性量は50 mg/kgとされている。ラットの経皮毒性試験 (LD50> 5,000 mg/kg) では異常所見はみられていない (農薬抄録 (2007)、食品安全委員会農薬評価書 (2008))。 以上より、本物質は中枢神経系への影響及び麻酔作用があると考えられ、区分1 (中枢神経系)、区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (血液系)、区分2 (神経系、心臓) 警告
危険
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(血液系)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(神経系、心臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物では、本物質 (S体:R体=75:25) の情報として、本物質 (S体:R体=79:21) をラットに90日間混餌投与した毒性試験において、区分1の範囲である雌50 ppm (3.78 mg/kg/day) 以上、雄100 ppm (6.01 mg/kg/day) 以上の群で赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の減少等がみられた (食品安全委員会農薬評価書 (2008)、農薬抄録 (2007))。 また、ラセミ体 (S体:R体=50:50) の情報として、同様に区分1の範囲でラット及びイヌで血液系への影響がみられたほか、マウスを用いた混餌投与による18ヶ月間発がん性試験において雄の125〜200 ppm (22.1 mg/kg/day) 群、雌の100 ppm (20.3 mg/kg/day) 以上の群で神経系への影響 (斜頸、歩行及び行動異常、脳の神経細胞変性及び壊死等)、雄の125〜200 ppm (22.1 mg/kg/day) 群で心臓への影響 (胸水、心筋壊死・出血又は炎症) がみられている (食品安全委員会農薬評価書 (2008)、農薬抄録 (2007))。 ラセミ体 (S体:R体=50/50) でみられた神経系及び心臓に対する影響がS体が原因と仮定した場合約14 mg/kg/day、R体が原因と仮定した場合約45 mg/kg/day、S体とR体が同等と仮定した場合約20 mg/kg/day、すなわち、区分2の範囲 (14〜45 mg/kg/day) で本物質 (S体:R体=75:25) においてもみられると推定される。 したがって、区分1 (血液系)、区分2 (神経系、心臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間EC50 = 0.0542 ppm(AQUIRE, 2016)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、魚類(シープスヘッドミノー)の32日間NOEC = 0.0169 ppm(AQUIRE, 2016)であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対しては急性毒性データも得られていない。 以上から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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