GHS分類結果

名称:5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-エチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (別名エチプロール)
CAS番号:181587-01-9

結果:
物質ID: H27-A-11-METI/M-009A_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 隣接する窒素原子 (ピラゾール環) を含むが、データがなく分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 隣接する窒素原子 (ピラゾール環) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - フッ素、酸素及び塩素を含む有機化合物であり、酸素が炭素、水素以外の元素 (S) と化学結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 7,080 mg/kg との報告 (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kgとの報告 (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットのLC50値 (4時間) として、> 5.21 mg/Lとの報告 (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014)) に基づき、区分外とした。なお、被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質500 mgを適用した結果、72時間の観察期間中皮膚反応は認められなかったことから刺激性なしと報告されている (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014))。以上より、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質100 mgを適用した結果、1〜72時間までの観察期間中に角膜や虹彩の刺激性反応は認められなかったことから、刺激性なしと報告されている (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014))。以上より、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、感作惹起後に感作反応はみられず、皮膚感作性なしと報告されている (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014))。上記の試験は、OECD TG 406相当のGLP適合試験であることから、本物質を区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験で陰性、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞及び培養ヒト末梢血リンパ球の染色体異常試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性である (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会_農薬評価書 (2004)、EPA Pesticide Fact Sheet (2012))。したがって、ガイダンスに従い、分類できないとした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物では本物質をラットに2年間、又はマウスに1.5年間、経口 (混餌) 投与した発がん性試験において、ラットでは高用量 (250 ppm) の雄で有意差はないが、甲状腺濾胞上皮の腺腫及び肝細胞腺腫の増加が、マウスでは高用量 (300 ppm) の雌で肝細胞腺腫の頻度の軽度増加 (6/50例、5%で有意) がみられた (農薬抄録 (2015)、EPA Pesticide Fact Sheet (2012))。食品安全委員会は発がん性試験において、ラットで甲状腺腫瘍、マウスで肝腫瘍の増加が認められたが、いずれも発生機序は遺伝毒性メカニズムとは考え難く、評価にあたり閾値を設定することは可能であるとした (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。国際機関等による既存発がん分類結果としては、EPAがS (Suggestive Evidence of Carcinogenicity) に分類している (EPA Pesticide Fact Sheet (2012)、EPA 2014 Annual Cancer Report (Access on January 2015))。 以上、既存分類結果に基づき、ガイダンスに従い本項は区分2とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物ではラットを用いた経口 (混餌) 投与による2世代繁殖毒性試験において、親動物ではP (F0)、F1世代ともに高用量 (500 ppm) で、体重増加抑制 (雌)、肝臓又は甲状腺への影響 (重量増加、肝細胞肥大/甲状腺濾胞上皮細胞肥大) が雌雄、又は雌雄のいずれかに認められ、肝臓重量の増加は中用量 (75 ppm) でもみられたのに対し、F1及びF2児動物では高用量 (500 ppm) で哺育期間中の体重の低値、離乳時の剖検で臓器 (胸腺、脾臓、腎臓、脳) 重量の減少、高用量群のF1児動物では加えて、性成熟遅延 (包皮分離及び膣開口日齢の遅延) も認められた (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014))。このように、親動物に一般毒性影響がみられる用量で、児動物に成長抑制及び性成熟遅延を示す所見がみられたものの、親動物の性機能、生殖能への有害影響は認められなかった (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会農薬評価書 (2014)、EPA Pesticide Fact Sheet (2012))。 一方、催奇形性試験としては、妊娠ラットに本物質の3〜30 mg/kg/dayを妊娠6〜20日に、又は妊娠ウサギに0.25〜4.0 mg/kg/dayを妊娠6〜28日にいずれも強制経口投与した試験において、ラットでは30 mg/kg/dayで母動物に体重増加抑制、摂餌量減少、肝小葉明瞭化、胎児に骨格変異 (胸椎体ダンベル状、第1中足骨未骨化の頻度増加) がみられた (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会 農薬評価書 (2014)) との記述、ウサギでは2.0 mg/kg/day以上で母動物に体重増加抑制、摂餌量減少、流産の頻度増加、胎児に骨格変異 (第1中手骨不完全骨化/未骨化、前肢第4、5中節骨未骨化の頻度増加) がみられた (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会 農薬評価書 (2014)) が、ラット、ウサギともに本物質は催奇形性を示さないと報告されている (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会 農薬評価書 (2014))。また、米国EPAの報告でも母動物毒性発現用量で胎児に骨格変異又は骨化不全がみられたと記述されている (EPA Pesticide Fact Sheet (2012))。 以上、ラットの繁殖毒性試験では親動物への一般毒性発現量で児動物の離乳時までの体重の低値、臓器重量減少に加えて、F1児動物には性成熟の遅延が示され、いずれも離乳までの成長遅延を反映した所見と考察されているが、性成熟遅延は発生毒性影響として分類根拠とすべき所見と判断した。催奇形性試験では発生影響は骨化不全と骨格変異のみの軽微な発生影響がみられたのみであった。 以上、ラット繁殖試験において親動物の毒性発現用量で次世代に成長抑制及び性成熟遅延がみられたため、本項は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系) 危険 H370: 臓器の障害(神経系) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質に関するヒトのデータはない。実験動物では、ラットの経口投与 (100 mg/kg、区分1相当) で着地開脚幅の減少、自発運動低下、ラットの経皮投与 (LD50 > 2,000 mg/kg) で異常所見なし、ラットの吸入ばく露 (LC50 > 5.21 mg/L、区分2超) で円背位、眼瞼下垂、呼吸数減少、協調運動失調、振戦、嗜眠、ラットの経口投与による神経毒性試験で、区分1相当の250 mg/kgで身繕いの減少、前肢及び後肢握力増加、眼瞼閉鎖、円背位、着地開脚幅の減少、自発運動低下、35 mg/kgで眼瞼閉鎖、覚醒程度の低下、マウスの経口投与 (120 mg/kg、区分1相当) による一般薬理試験で痙攣がみられている (農薬抄録 (2015)、食品安全委員会_農薬評価書 (2014)、EPA Pesticide Fact Sheet (2012))。 以上より、本物質は神経毒性があり、区分1 (神経系) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (肝臓、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、甲状腺)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液系、腎臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する報告はない。 実験動物に関しては、ラットを用いた90日間混餌投与毒性試験において、区分2の範囲である500 ppm 投与群 (雄30.5 mg/kg/day、雌:37.6 mg/kg/day) 以上で雌雄に肝臓への影響 (小葉中心性肝細胞肥大等)、甲状腺への影響 (甲状腺濾胞上皮細胞肥大/過形成等)、雌に血液への影響 (ヘモグロビン量、ヘマトクリット値減少等) がみられている (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015))。イヌを用いた90日間混餌投与毒性試験において、区分1の範囲である90 ppm投与群 (雄:3.2 mg/kg/day) 以上の雄及び200 ppm投与群 (雌:8.5 mg/kg/day) の雌で肝臓への影響 (雄:小葉中心性肝細胞肥大、雌:アルカリホスファターゼ活性の増加) がみられている (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015))。ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/発がん性併合試験において、区分1の範囲である75 ppm 投与群 (雄:3.2 mg/kg/day、雌:4.4 mg/kg/day) 以上で雌雄に肝臓への影響 (雄:胆管線維化等、雌:胆管過形成等)、雌に甲状腺への影響 (コロイド鉱質沈着等)、区分2の範囲である250 ppm 投与群 (雄:10.8 mg/kg/day、雌:14.7 mg/kg/day) で雌雄に腎臓への影響 (雄:進行性慢性腎症、雌:動脈炎/動脈周囲炎) がみられている (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015))。マウスを用いた混餌投与による18か月発がん性試験において、区分2の範囲である300 ppm投与群 (雄:50.8 mg/kg/day) で雄に肝臓への影響 (淡明性変異肝細胞巣等) みられている (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)) 以上のように肝臓、甲状腺に対する影響が区分1からみられ、血液系、腎臓に対する影響が区分2の範囲でみられた。 したがって、区分1 (肝臓、甲状腺)、区分2 (血液系、腎臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


GHS関連情報トップページに戻る