GHS分類結果

名称:N,N−ジメチルドデシルアミン=N−オキシド
CAS番号:1643-20-5

結果:
物質ID: H27-B-07-METI/M-016B_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 爆発性に関連する原子団 (N-オキシド類) をみ、酸素収支の計算結果 (計算値:-296) は判定基準の-200より低いが、発熱分解エネルギーと発熱開始温度のデータがなく、分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 爆発性に関連する原子団 (N-オキシド類) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - 用途が界面活性剤であり、常温の空気と接触しても発火しないと考えられるが、データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外の元素 (N) と化学結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、1,267 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006)) との報告に基づき、区分4とした。優先度の高い情報に基づき、区分を見直した。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、本物質を0.3%含むヘアスプレー (水:85〜95%、PVP/VA共重合体:1〜5%、コカミドDEA:0〜2%、ポリクオタニウム-11:0〜2%、その他:< 1%) のミストをラットに吸入ばく露させた際のLC50値 (4時間) が5.3 mg/L (本物質換算値:0.016 mg/L) との報告 (SIDS (2007)) があるが、このデータのみでは区分を特定できない。なお、試験は当該ヘアスプレーをエアロゾルで供給したとの記載に基づき、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質を24時間適用した結果、強度の刺激性がみられたとの報告がある (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007)、HSDB (Access on October 2015)) が24時間適用の試験であることから分類には用いなかった。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質の1%溶液を適用した結果、強度の刺激性がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験においては、本物質 (30%) 適用による軽度の刺激性の報告 (SIDS (2007)) や、 本物質 (0.3%) 適用により刺激性はみられなかった (SIDS (2007)) との報告がある。SIDS (2007) は、本物質を含む酸化アミン化合物について、低濃度では刺激性は示さないが、30%程度の濃度では重度の刺激性を示すと報告している (SIDS (2007))。以上、強度の刺激性がみられたとする報告から区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、感作性はみられなかったとの報告や (NITE初期リスク評価書 (2007))、ヒト (84人、101人、141人) のパッチテストの報告で感作性は認められなかったとの報告が複数ある (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007))。SIDS (2007) では本物質は感作性を示さないと結論している (SIDS (2007))。以上より、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007))。したがって、ガイダンスに従い分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - - - 雌雄ラットに本物質を1,000 ppmで93週間経口 (飲水) 投与した発がん性試験において、本物質1,000 ppm 単独投与群に加えて、本物質1,000 ppmと亜硝酸ナトリウム2,000 ppmの併用投与群を設け、発がん性の有無を比較した。その結果、単独投与群では無処置対照群と比べて腫瘍発生頻度増加の証拠は示されなかったのに対し、本物質と亜硝酸ナトリウム併用群では亜硝酸ナトリウム単独投与群と比べて、肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫) の頻度増加がみられた (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007))。 この他、アルキルジメチルN-アミノキシド (AO) の市販品である27%水溶液製品で、95%以上がC10〜C16の直鎖アルキルアミノオキシドであり、主成分がC12である被験物質 (C10〜16AO (CAS番号: 70592-80-2)) を用いたラット2年間混餌投与試験、及びマウス2年間経皮適用試験の報告があり、高用量群において混餌投与では体重増加抑制、経皮適用試験では皮膚刺激による皮膚の肥厚がみられる用量まで投与されたが、いずれも発がん性の証拠は示されなかった (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006)) との記述もある。 以上、本物質のラット経口経路 (飲水)、及び本物質を含む市販品水溶液ではラット経口経路、及びマウス経皮経路で発がん性の証拠はないが、ラット飲水投与で本物質と亜硝酸塩を併用投与した結果、肝臓に肝細胞腺腫の頻度増加が認められた。ただ、亜硝酸塩を併用投与した結果から本物質の発がん性の評価は困難で、単独投与の結果からは本物質自体の発がん性の可能性は低いと考えられる。しかしながら、一定純度の本物質を投与した試験報告はラット飲水投与 (1,000 ppm) の試験報告のみであり、用量反応関係、動物種間差等の情報が欠落しており、データ不足で分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 本物質をラットに経口 (混餌) 投与した2世代生殖毒性試験において、F0親動物に投与開始後6.5週間後に体重低下のために、用量を下げてF0、F1世代の親動物に11〜40 mg/kg/day相当量を投与してF2児動物の離乳まで試験を継続した結果、親動物には体重増加抑制がみられたが、生殖能に悪影響はなく、F1、F2児動物には低用量群から哺育期の体重低値推移がみられただけであった (SIDS (2007))。発生毒性試験としては、本物質を妊娠ラットに最大 200 mg/kg/dayで妊娠7〜17日に強制経口投与し、2/3の動物は妊娠20日に帝王切開し胎児を観察し、残りは自然分娩させ、育成後10週齢でF1同士を交配させ妊娠20日に屠殺した試験において、F0母動物には200 mg/kg/dayで体重増加抑制 (軽度、< 10%)、摂水量の減少が、F1母動物には200 mg/kg/dayで胎盤重量の減少がみられ、胎児 (F1) には200 mg/kg/dayで胎児重量の低下及び骨化遅延がみられた (SIDS (2007))。同様に妊娠ウサギに本物質を40〜160 mg/kg/dayで妊娠6〜18日に強制経口投与した試験では、母動物には40 mg/kg/day以上で体重増加抑制、摂餌量及び摂水量の減少がみられ、80 及び160 mg/kg/dayでは各3例が死亡又は瀕死のため安楽死せしめたが、生存例の胎児には異常はみられていない (SIDS (2007))。 以上、本物質の経口経路での生殖発生毒性試験では、親動物の生殖能には有害影響はなく、胎児又は児動物の発生影響は母動物毒性発現量で最小限の影響しか示されておらず、分類可能な毒性情報は得られないが、区分外とするには情報不足と判断された。よって、本項はデータ不足のため分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。 本物質を投与した試験報告は次に示したラット飲水投与 (0.1%) の試験報告のみであり、用量反応関係、動物種間差等の情報が欠落しており、データ不足で分類できない。 ラットに0.1%の本物質 (250 mg/kg/day相当) を93週間にわたって飲水投与した試験において、毒性影響はみられていない (SIDS (2007))。このほか、本物質単独ではないが、アルキルジメチルアミンオキシド (AO、アルキル鎖長C12〜C16、ドデシル (C12) が主成分) を27%含む水溶液製品 (ただし、AOに含まれるDDNOの割合は不明) をラットに104週間混餌投与した試験では、0.2%投与群 (AOとして100 mg/kg/day) の雌雄に体重増加抑制がみられている。また、同じアルキルジメチルアミンオキシド (AO、アルキル鎖長C12〜C16、ドデシル (C12) が主成分) を27%含む水溶液製品をマウスに104週間経皮投与した試験では、皮膚の肥厚がみられたが全身毒性はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006))。ウサギに0.3%の本物質を含む製品、2 mL/kg/dayで5日/週、4週間適用した試験では適用部位の局所影響のみで全身毒性はみられていない (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2007))。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間EC50 = 0.1 mg/L(環境省リスク評価第3巻, 2004)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急速分解性がなく(4週間でのBOD:54, 52, 82%、TOC:68, 54, 81%、LC-MS:100, 100, 100%(通産省公報, 1995))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC(r) = 0.004 mg/L(環境省リスク評価第3巻, 2004)であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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