GHS分類結果

名称:テルブホス
CAS番号:13071-79-9

結果:
物質ID: H27-A-006/C-006A_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
開放式引火点測定で88℃ (HSDB (Access on June 2015)) というデータがあり、所定の密閉式測定でも、60-93℃に入ると考えられる。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水への溶解度 (水溶解度:5.07 mg/L (25℃)、HSDB (Access on June 2015)) が測定されており、水と激しく反応しないと推定できる 。
13 酸化性液体 分類できない - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (P) と結合しているが、データがなく、分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分1 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P361+P364: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、1.6-4.5 mg/kg (雄)、1.3-9.0 mg/kg (雌) (ACGIH (7th, 2002)、EPA Pesticide (1997))、1.4 mg/kg (雌) (絶食下)、3.2 mg/kg (雄) (絶食下)、1.6 mg/kg (雄、雌) (絶食下) (JMPR (2003))、約1.5 mg/kg (EPA Pesticide (2006))、4.5 mg/kg (雄) (非絶食)、9.0 mg/kg (雌) (非絶食) (JMPR (2003)) との8件の報告がある。5件が区分1、1件が区分2に該当するので、最も多くのデータが該当する区分1とした。なお、2件は集約データであるために、該当数から除外した。
1 急性毒性(経皮) 区分1 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、0.97 mg/kg、7.4 mg/kg、9.8 mg/kg (JMPR (1990))、ウサギのLD50値として、0.81 mg/kg (雄)、0.93 mg/kg (雌) (EPA Pesticide (2006)、JMPR (2003))、1.0 mg/kg (雄)、1.1 mg/kg (雄) (JMPR (2003))、0.8-1.1 mg/kg (雄)、0.93 mg/kg (雌) (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2002)、EPA Pesticide (1997)) との報告に基づき、区分1とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) (全身) として、0.0012 mg/L (雌)、0.0061 mg/L (雄) (JMPR (2003)) との報告に基づき、区分1とした。なお、LC50値の一方は飽和蒸気圧濃度 (0.42 ppm) より低く、他方は高いが、蒸気で投与したとの記載 (JMPR (2003)) に基づき、ppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ウサギに本物質0.5 mLを適用した皮膚一次激性試験で、全動物が24時間以内に死亡したとの記載 (PATTY (6th, 2012)、JMPR (2003)、ACGIH (7th, 2002)) がある。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ACGIH (7th, 2002) には、ウサギに本物質0.5 mL又は0.1 mLを適用した眼一次刺激性試験で、全動物が24時間以内に死亡したとの記載 (PATTY (6th, 2012)、JMPR (2003)、ACGIH (7th, 2002)) がある。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoではラット経口投与による優性致死試験において、最高用量 (0.4 mg/kg) で陽性の報告があるが (EPA Pesticide (1997)) 明確な結論は示されておらず、JMPR (2003) はこの試験についてInconclusive (判定できない) としている (JMPR (2003))。また、ラット腹腔内投与による骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性との報告がある (EPA Pesticide (1997)、JMPR (2003))。In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験、CHO細胞株を用いた遺伝子突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において陰性の報告がある (NTP DB (Access on June 2015)、EPA Pesticide (1997)、JMPR (2003))。In vivo優性致死試験の陽性結果については詳細不明であることから、ガイダンスに従い分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトでの発がん性に関する情報はない。実験動物ではラットに2年間、マウスに18ヶ月間混餌投与した結果、明らかな毒性影響 (死亡率の増加 (ラット、マウス)、体重増加抑制 (マウス)、コリンエステラーゼ阻害 (ラット)) がみられる用量においても、発がん性の証拠は認められないとの記述 (ACGIH (7th, 2002)、PATTY (6th, 2012)、EPA Pesticide (1997)) があり、ACGIHはA4に分類した (ACGIH (7th, 2002))。以上、ACGIHの見解も踏まえ、発がん性は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでの生殖毒性に関する情報はない。実験動物ではラットに経口投与した3世代試験ではいずれの世代にも生殖毒性はみられなかったとの記述がある一方で、ラットに混餌投与した2世代試験では、親動物に毒性 (血漿コリンエステラーゼ阻害、哺育期間中の母動物の体重増加抑制) がみられる用量 (2.5 ppm: 0.22-0.24 mg/kg/day) で、妊娠率及び雄の受精率の低下、及び児動物の体重の低値がみられた (ACGIH (7th, 2002)、PATTY (6th, 2012)、EPA Pesticide (1997)) との記述がある。また、妊娠ラット (妊娠6-15日)、又は妊娠ウサギ (妊娠7-19日) に強制経口投与した催奇形性試験において、ラットでは高用量 (0.2 mg/kg/day) でも母動物毒性は生じないが、早期吸収胚、及び着床後吸収胚の増加がみられた。一方、ウサギでは母動物に体重増加抑制がみられる用量 (0.5 mg/kg/day) で、胎児体重の軽度減少と胚吸収率の増加がみられたのみで、いずれの動物種でも催奇形性は認められなかった (ACGIH (7th, 2002)、PATTY (6th, 2012)、EPA Pesticide (1997))。以上、総じて親動物に一般毒性影響がみられる用量で生殖能への影響、及び胎児毒性がみられたことから、分類は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系) 危険 H370: 臓器の障害(神経系) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は典型的な強毒性有機リン系殺虫剤/抗線虫剤であり、その主たる毒性作用機序はコリンエステラーゼ活性阻害である。その作用は急速に起こり、可逆性ではあるものの、神経筋刺激症状を呈する (ACGIH (7th, 2010))。 ヒトでは、コリンエステラーゼ阻害作用の定量的データは限られている (ACGIH (7th, 2010)) とされているが、本物質に関する25件の事故報告があり、うち14件は職業ばく露事故であり、コリン作動性の神経毒性が認められ、3件で死亡した。その他の1件では、本物質が混入したとうもろこしの種から製造されたトルティーヤの摂食事故により子供3人が死亡、他にも、本物質の誤食により子供1名が死亡している (PATTY (6th, 2012))。 実験動物では、マウスの1.69-2.48 mg/kgの経口投与で著しい毒性症状 (振戦、浅呼吸、腹臥、正向反射消失) を示し、ばく露2-9時間で90%の個体が死亡、死亡は最大70時間まで続いたとの報告、ラットでは、床敷に30 ppmの本物質が混入した報告 (主なばく露経路は経皮であるが、経口、吸入ばく露も考えられた) では、著しい急性毒性 (コリン作動性様症状) として、筋攣縮、重度の抑うつ作用、眼球突出、流涎を伴い、その後、死亡したとの報告、0.15-0.9 mg/kgの経口投与で、無気力、流涎、流涙、運動失調、昏迷、前肢強度低下、振戦を示し、縮瞳及びコリンエステラーゼ阻害が0.3-0.9 mg/kgでみられ、0.9 mg/kgで1個体が死亡したとの報告がある (ACGIH (7th, 2010)、PATTY (6th, 2012))。その他、ラットで色素涙、立毛、運動失調、努力呼吸等中枢神経系影響を示すとの報告 (JMPR (2003)、IPCS, PIM G001 (Access on 2015)) がある。 以上、ヒト及び実験動物の所見で認められた本物質の急性影響はコリン作動性の神経系影響であり、実験動物の所見から区分1相当の用量でみられている。 従って、区分1 (神経系) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、消化管) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、消化管) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物では、コリンエステラーゼ活性阻害作用がラットを用いた13週間混餌投与毒性試験、2年間混餌投与試験、イヌを用いた28日間強制経口投与毒性試験、1年間強制経口投与毒性試験、ラットを用いた4週間経皮投与試験、ラットを用いた3週間吸入暴露試験において認められた。また、コリン作動性神経症状がラットを用いた2年間混餌投与試験、イヌを用いた1年間強制経口投与毒性試験、ラットを用いた3週間吸入毒性試験においてみられた。コリンエステラーゼ活性阻害作用は経口経路では0.0125 mg/kg/day以上、経皮経路では1.5 mg/kg/day、吸入経路では0.0946 mg/mから3、コリン作動性神経症状は、経口経路では0.05 mg/kg/day、経皮経路では4 mg/kg/day、吸入経路では0.0946 mg/m3からみられた (ACGIH (7th, 2002)、PATTY (6th, 2012))。これらは、いずれも区分1の範囲でみられた。 このほか、イヌを用いた1年間強制経口投与毒性試験において、6-8週目に0.24及び0.48 mg/kg/day群で摂餌量減少、体重増加抑制、血液検査値の低下、消化管のうっ血・水腫・壊死がみられた。ラットを用いた13週間混餌投与毒性試験において0.025 mg/kg/day以上で肝臓の重量増加、肝臓の髄外造血亢進、0.05 mg/kg/dayで腸間膜リンパ節及び下顎リンパ節の過形成が認められた (ACGIH (7th, 2002)、PATTY (6th, 2012))。これらは、いずれも区分1の範囲でみられた。 したがって、区分1 (神経系、消化管) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ヨコエビ)96時間LC50 = 0.000235 mg/L(幾何平均値)(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(BioWin)、急性毒性区分1であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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