名称:綿じん
CAS番号:-
物質ID: | H27-A-021/C-021A_P |
分類実施者: | 厚生労働省/環境省 |
分類実施年度: | 平成27年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | 可燃性を有するが、データがなく分類できない。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。なお、綿廃くず (油性のもの) と綿花 (湿性のもの) は、UNRTDG分類がUN1364とUN1365であり、どちらもクラス4.2、PGIIIに分類されていて自己発熱性を有し区分2に相当する。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、衣類の着用により刺激性を誘発したり、化学残留物により皮膚反応が起きたりすることがあるとの記載がある (IARC 48 (1990))。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、衣類の着用により刺激性の繊維 (irritant fibres) や化学残留物により皮膚反応が起きたりすることがあるとの記載がある (IARC 48 (1990))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | IARCによる発がん性分類評価は綿じんばく露による疫学研究も含めて評価され、繊維製造業の作業者では膀胱がん、鼻腔の腫瘍など発がんリスクの上昇に関し、限定的な証拠があるとしてグループ2Bに分類された (IARC 48 (1990))。一方、ACGIHは2009年半ばまでの公表文献を調査し、繊維産業に従事し綿じんにばく露された女性作業者を対象とした研究で、喉・咽頭がんのリスク上昇の報告、並びに声門上の喉頭がん発症例が過去の綿じんばく露の履歴と有意な相関を示したとの報告がある一方で、綿じんにばく露された作業者では喉・咽頭がんのリスクが有意に減少したとの報告があること、職業ばく露による女性作業者の副鼻腔がんの症例対照研究では、ウール、合成繊維を含む全繊維に対してのばく露履歴とは相関があったが、綿じんばく露に限定した場合、相関性はなかったとした報告、非ホジキン性リンパ腫の有病例で15年以上綿じんに職業ばく露された症例と直腸がんとの間に相関があるとした症例対照研究報告があるが、他の多くの報告では綿じんを扱う作業者に発がんの過剰リスクはないとの結果であった (ACGIH (7th, 2010))。むしろ、肺がんによる死亡率、及び膵臓がんの発生率に関しては、綿じんばく露群では逆に低下したという複数の疫学研究報告があり、綿じんに含まれるエンドトキシンによる肺がん予防効果の推測まで指摘されている (ACGIH (7th, 2010))。以上より、ACGIHは綿じんの職業ばく露による発がん性をA4に分類しており (ACGIH (7th, 2010))、本分類でも、ACGIHの分類結果を支持し、分類できないとした。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、チェコでの国による先天性奇形発生監視システムにより、親の綿じんばく露と奇形発生頻度との間に有意な相関がみられたとの記述がある (ACGIH (7th, 2010)) が、この他分類に利用可能なデータはない。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (呼吸器) | 危険 | H370: 臓器の障害(呼吸器) |
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質は、ヒト並びに実験動物において呼吸器への影響が知られており、ヒトでは、綿織物の作業者 (0.62 mg/m3の吸入ばく露) で咳、胸部圧迫感、息切れ、呼吸困難、その他、1秒間努力呼気肺活量 (FEV1) が有意に低下し肺機能への急性影響が認められている。また、綿じん作業者 (濃度不明) で、同様の急性症状が認められ、いわゆる綿肺症として知られている。ボランティアを用いた吸入実験では、167 mg/mLの希釈粉砕綿苞により気管支収縮が認められている (ACGIH (7th, 2010)、PATTY (6th, 2012))。その他にも綿じんの急性及び慢性ばく露による健康影響は、肺機能低下、胸部圧迫感 (綿肺症)、過敏性気管支炎であるとの知見がある (IARC 48 (1990)、PATTY (6th, 2012))。 実験動物では、モルモットの綿肺症急性粉じん吸入モデルとして、ヒトで知られているのと同様、気道の生理学的反応性誘発が知られており、気管支及び肺胞への多形核細胞浸潤が重要なメカニズムであるとの報告、綿じんの溶解抽出物をエアロゾル化し、カニクイザルに単回気管内吸入ばく露 (34又は100 mg/mL) した試験で、動的呼吸器抵抗が45%以上減少し、本物質に気管支収縮性があることが示された (ACGIH (7th, 2010))。 以上より、実験動物データから本物質の呼吸器影響の区分をつけることはできないが、ヒトで明確な呼吸器への影響が知られていること、動物でもヒトと同様の影響が知られていることから、区分1 (呼吸器) とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (呼吸器) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトにおいて、綿肺症、肺機能低下、慢性気管支炎の報告があり (ACGIH (7th, 2010)、PATTY (6th, 2012))、病理組織学的検査において、肺気腫、肺性心、ダストの肺への沈着、扁平上皮化生、気管支の炎症、粘液腺の過形成、杯細胞の異形成などの報告がある (PATTY (6th, 2012))。 したがって、区分1 (呼吸器) とした。 なお、実験動物では、モルモットを用いた52週間吸入ばく露試験において、区分2の範囲である21 mg/m3で呼吸数、呼吸の深度の変化、細気管支の上皮の過形成、II型細胞の過形成がみられている (ACGIH (7th, 2010))。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
使用マニュアル |
|
解説・用語集(エクセルファイル) |