GHS分類結果

名称:1-ブロモプロパン【臭化プロピル】
CAS番号:106-94-5

結果:
物質ID: H27-B-001/C-022B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-10℃ (closed cup) (ICSC (J) (2004))、沸点71℃ (HSDB (Accss on June 2015)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類はUN.2344、クラス3、PGUである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が490℃ (HSDB (Access on June2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)) 及び3,600 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014)) との報告がある。環境省リスク評価第12巻 (2014) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kgとの報告 (ACGIH (7th, 2014)、NTP TR564 (2011)、NTP monograph (2003)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、7,000 ppm (鼻部ばく露) (ACGIH (7th, 2014)、NTP TR564 (2011))、14,374 ppm (全身ばく露) (ACGIH (7th, 2014)、NTP monograph (2003))、17,881 ppm (環境省リスク評価第12巻 (2014)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (184,211ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 本物質2,000 mg/kgをラットに24時間半閉塞適応した結果、皮膚反応はみられなかったとの報告がある (ACGIH (7th, 2014))。一方、本物質は皮膚に対して刺激性を持つとの記載がある (PATTY (6th, 2012))。また、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R36/R38」、以上の結果から、ラットの24時間適用の報告をもとに区分外とした。なお、EU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
本物質はマウスに対して眼刺激性を持つとの記載や (PATTY (6th、2012))、眼に付くと発赤や痛みを生じるとの記載 (環境省リスク評価第12巻 (2014)、眼を刺激する (HSDB (Access on June 2015)) との記載がある。以上の結果から区分2と判断した。なお、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R36/R38」、EU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた感作性試験 (10日間塗布し、12日後に再度塗布した試験) において、本物質 (25%パラフィン油溶) 適用による皮膚反応はみられなかったとの報告があるが (ACGIH (7th, 2005))、試験法や結果の詳細について不明であるため区分に用いるには不十分なデータと判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラット、マウスを用いた優性致死試験で陰性 (環境省リスク評価第12巻 (2014)、ACGIH (7th, 2014))、ラット、マウスの骨髄細胞、マウスの末梢血リンパ球を用いた小核試験で陰性 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、ACGIH (7th, 2014)、NTP monograph (2003)、NTP DB (Access on July 2015)) の報告がある。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性の報告およびMLAでの陽性報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012)、ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、NTP monograph (2003)、NTP DB (Access on July 2015))。以上より、細菌の復帰突然変異試験で1件の陽性の結果があるものの、他の数件は陰性であること、加えてMLAの陽性知見は細胞毒性濃度であり、in vivo優性致死試験、in vivo小核試験で陰性であることから、区分2の根拠とはならないと判断した。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでの発がん性に関する報告はない。実験動物ではラット、及びマウスに本物質を2年間吸入ばく露した試験において、ラットでは雄に皮膚腫瘍 (角化棘細胞種、基底細胞腺腫、基底細胞がん、扁平上皮がんの組合せ)、雌に大腸の腺腫の発生頻度の有意な増加 (雄は有意差ないが増加傾向) が、マウスでは雌に肺胞/細気管支の腺腫、及びがんの発生頻度の増加 (雄は鼻腔及び気管支上皮に顕著な非腫瘍性変化がみられたものの腫瘍性変化なし) が、それぞれ認められ (NTP TR564 (2011)、NTP RoC (13th, 2014)、ACGIH (7th, 2014))、この結果に基づきACGIHはA3に (ACGIH (7th, 2014))、NTPはRに分類した (NTP RoC (13th, 2014))。以上より、分類は区分2とした。なお、旧分類以後にNTPの試験結果が報告されたたため、分類結果を変更した。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質のヒトにおける生殖毒性に関して、信頼性の高い情報はない。実験動物では、吸入経路でのラット2世代試験において、F0、F1世代ともに親動物に受胎率の低下、及び同腹児数の減少がみられ、加えて雌の性機能への影響 (性周期異常、卵巣の形態異常) も認められた (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。雌の性機能異常は非妊娠雌ラットを用いた12週間反復吸入ばく露試験においても、胞状卵胞数の用量依存的な増加、発情休止期の延長を含む性周期異常としてみられている (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。一方、雄ラットに吸入経路で反復ばく露した複数の試験で、精子の数及び運動能の減少、異常精子頻度の増加、精巣精細管における変性精子細胞の用量依存的増加などがみられ、雄マウスでも同様の精子への影響がラットよりも高感度にみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。 発生毒性影響としては、妊娠ラットに対し妊娠期間及び哺育期間を通して吸入ばく露した試験において、出生児の生存率、及び体重ともに低値であったとの報告、妊娠ラットの妊娠6-19日に吸入ばく露し、妊娠20日に胎児を観察した試験において、母動物毒性が発現しない用量から胎児体重の低値、母動物毒性発現量で骨化遅延、骨格変異 (肋骨の湾曲) がみられたのみで、奇形発生は認められていない (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。 以上、本物質は実験動物を用いた試験で雌雄の生殖能、及び次世代の発生、発達への影響が明らかである。また、本物質の既存分類に関して、日本産業衛生学会は生殖毒性第2群に (産衛学会勧告 (2015))、EUによるCLP分類ではRepr. 1Bに分類されており (ECHA CL Inventory (Access on June 2015))、本分類では既存分類との整合性の観点も併せ考慮し、区分1Bに分類した。なお、旧分類時以降に追加・変更された新たな情報も加えて、分類結果を見直した結果、区分を「2」から「1B」に引き上げた。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。 ヒトでは経路不記載ながら、頭痛、悪心、倦怠感、嗜眠、中枢神経系抑制作用 (麻酔性) の報告がある (ACGIH (7th, 2014)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、PATTY (6th, 2012))。 実験動物では、ラットの7,000 ppm (35.2 mg/mL) 以上の吸入ばく露で、立毛、活動低下、運動失調、流涙がみられている (ACGIH (7th, 2014))。この用量は区分2を超える用量であった。 以上より、本物質は気道刺激性及び麻酔作用があることから、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系)、区分2 (肝臓、呼吸器) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、呼吸器)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、本物質を製造あるいは、洗浄剤、接着剤の噴霧剤として用いた労働者に、頭痛、下肢を中心とした異常感覚、感覚消失、痙性対麻痺、歩行障害、睡眠障害、記憶障害、腓腹神経の感覚神経伝導速度低下、腓骨神経の遠位潜時の延長、足指振動感覚閾値の上昇、脱髄性多発性神経炎脊髄神経根の肥厚などがみられた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012))。 実験動物では、神経系への影響は、ラットを用いた12週間吸入ばく露毒性試験において区分2を超える400 ppm (ガイダンス値換算:2.68 mg/L) で歩行異常、握力低下、神経伝導速度低下などの神経障害が認められた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012))。ラット、マウスを用いた14週間吸入ばく露毒性試験において、肝臓の肝細胞空胞化、肝臓重量増加が区分2の範囲 (125-250 ppm、ガイダンス値換算:0.49-0.98 mg/L) で認められた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、NTP TR564 (2011))。ラット、マウスを用いた105週間吸入ばく露毒性試験において、呼吸器への影響 (鼻腔の呼吸上皮過形成、鼻腔・喉頭・気管支細胞空胞化、細気管支再生像) が区分2の範囲 (62.5-125 ppm、ガイダンス値換算:0.31-0.63 mg/L) で認められた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012)、NTP TR564 (2011))。 したがって、区分1 (神経系)、区分2 (肝臓、呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、文献値より動粘性率は0.36 mm2/s (粘性率: 0.489 mP/sec (HSDB (Access on June 2015))、密度 (20℃) : 1.35 g/cm3 (HSDB (Access on June 2015)、GESTIS (Access on June 2015))) と算出可能であった。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)96時間LC50 = 67.3 mg/L(環境省リスク評価第12巻, 2014)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(難分解性:標準法による28日間BOD分解度=70%であるが、逆転法においても完全分解されなかった(経済産業公報, 2003))、急性毒性は区分3であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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