GHS分類結果

名称:N-メチル-2- ピロリドン【N-メチルピロリドン】
CAS番号:872-50-4

結果:
物質ID: H27-B-027/C-048B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点86℃ (closed cup) (ICSC (2014)) に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が346℃ (HSDB (Access on June2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、3,500 mg/kg、3,600 mg/kg、3,800 mg/kg (DFGOT vol. 10 (1998))、3,605 mg/kg (SIDS (2009))、3,914 mg/kg (環境省リスク評価暫定的有害性評価シート第8巻 (2010)、SIDS (2009))、4,150 mg/kg (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001)、DFGOT vol. 10 (1998))、4,320 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002))、4,850 mg/kg、7,900 mg/kg (DFGOT vol. 10 (1998)) との9件の報告がある。いずれも区分外に該当するが、8件のデータが該当する区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg (SIDS (2009))、7,000 mg/kg (SIDS (2009)、DFGOT vol. 10 (1998))、ウサギのLD50値として、6,000 mg/kg (DFGOT vol. 10 (1998)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットのLC50値 (4時間) として、> 5.1 mg/Lとの報告 (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001)、DFGOT vol. 10 (1998)) に基づき、区分外とした。なお、試験はエアロゾルで行われたとの記載、及びLD50値が飽和蒸気圧濃度 (1.3 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
ウサギを用いたドレイズ試験において、未希釈の本物質 (純度> 98 %) 0.5 mLを24時間閉塞適用した結果、軽度の紅斑 (ドレイズスコア:1) がみられ、一次刺激指数 (PII) は0.5 (最大値8) であったとの報告がある (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001)、DFGOT vol.10 (1998))。一方、ウサギの皮膚に本物質を5-15分適用した結果、重度の紅斑と落屑がみられ、さらに20時間適用した結果重度の浮腫がみられたが (DFGOT vol.10,1998)、SIDS (2009))、SIDS はこの報告について信頼性が低いとして評価に採用せず、本物質はウサギに対しては軽度の刺激性と結論している (SIDS SIAP (2009))。また、ヒト50人の擦傷皮膚に本物質を24 時間貼付試験を計15 回実施した結果、軽度から中等度の一過性刺激が引き起こされたとの報告がある (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。なお、職業ばく露において本物質を扱う作業者において発赤やかゆみなどの皮膚症状が報告されているが (日本産業衛生学会許容濃度の提案理由書 (2002))、回復性などの詳細については不明である。以上より、動物試験について区分外相当の報告もあるが、ヒトにおいて中等度の刺激性の報告があることから区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いたドレイズ試験において、未希釈の本物質 (純度> 98 %) 0.1 mLを適用した結果、角膜に対する刺激性 (一次刺激指数:洗浄眼; 0-35、非洗浄眼; 0-41) がみられたが、21日以内に回復したとの報告がある (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、角膜混濁、発赤、腫れがみられ、8日後症状が続いたとの報告 (DFGOT vol.10 (1998)) や、中等度から強度の刺激性がみられたとの報告がある (DFGOT vol.10 (1998))。以上の結果から区分2Aとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた感作性試験において感作性はみられなかったとの報告や (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001)、DFGOT vol.10 (1998))、ヒト50人の擦傷皮膚に本物質を24 時間貼付試験を計15 回実施した結果、感作性はみられなかったとの記載がある (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001)、DFGOT vol. 10 (1998)) が、いずれも試験条件等詳細不明である。一方、職業ばく露においては本物質を扱う作業者において接触性皮膚炎や皮膚症状などが報告されている (産業衛生学会許容濃度の提案理由書 (2002))。情報を精査し区分を変更した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウス及びチャイニーズハムスターの骨髄細胞の小核試験、チャイニーズハムスターの骨髄細胞の染色体異常試験で陰性の報告がある (CICAD 35 (2001)、SIDS (2009)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 10 (1998))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、不定期DNA合成試験でいずれも陰性である (CICAD 35 (2001)、SIDS (2009)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 10 (1998)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002)、NTP DB (Access on August 2015))。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトの発がん性に関する情報はない。実験動物では、ラットを用いた吸入経路、及び経口経路 (混餌) での2年間ばく露による発がん性試験では腫瘍誘発の証拠は示されなかった (SIDS (2009))。一方、マウスを用いた経口経路 (混餌) での18ヶ月間ばく露による発がん性試験では、肝細胞がん、又は肝細胞の腺腫が雄マウスに、肝細胞の変異巣の増加が雌雄に認められ、マウス肝臓での腫瘍発生機序としてペルオキシソーム増殖作用、或いは細胞増殖作用の亢進を示唆する記述 (SIDS (2009)) がある。このように、動物種間で相反する結果が得られ、国際機関による発がん性分類結果もなく、現時点ではデータ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでは妊娠16週に流出した本物質を洗浄作業中に直接皮膚に付着し、妊娠20週まで本物質に職業ばく露を受けたとされる女性研究助手の症例報告において、超音波診断での胎児観察で、妊娠13.8週に異常はみられなかったが、妊娠26週に胎児の成長遅延がみられ、31週で死産が確認された。本症例では本物質に経皮、及び吸入ばく露された可能性が高いが、ばく露濃度は不明で、1例のみの報告で、本物質ばく露と胎児死亡との関連性は明らかでないとされた (CICAD 35 (2001)、環境省リスク評価暫定的有害性評価シート第8巻 (2010))。 実験動物では、異なる2系統のラットを用いた経口経路 (混餌) による2世代生殖毒性試験において、F0、及びF1親動物に一般毒性影響がない (SD系)、又は体重増加抑制、摂餌量減少がみられる (Wistar系) 高用量で、F1及びF2児動物への発達影響として、死亡率の増加、体重増加量の減少がみられたが、F0、F1世代の雌雄親動物に生殖毒性影響はみられなかった (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。また、吸入経路では、交配14週間前から妊娠期間中を通して、本物質蒸気を吸入ばく露し、生まれたF1児動物を生後70日に非ばく露の雌雄動物と交配させた試験において、F0世代の高用量 (479 mg/m3) では雌親動物に音刺激への反応性低下 (麻酔作用によると推測)、及びF1児動物に体重の低値がみられたのみで、F1の受胎能、受精能ともに影響はみられなかった (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。すなわち、ラットを用いた経口、及び吸入経路での試験では、親動物に一般毒性影響が発現する用量で、児動物の発生・発達への影響はみられたが、親動物の性機能・生殖能への有害影響はみられなかった。 一方、発生毒性影響としては、妊娠ラット又は妊娠ウサギの器官形成期に経口、吸入、又は経皮経路で投与した催奇形性試験結果がある。強制経口投与した試験では、ラット、ウサギともに母動物に体重増加抑制がみられる用量で、胎児への発生毒性 (胎児重量の低値、矮小児の増加、ウサギでは骨格・軟組織の奇形、又は変異の頻度増加) がみられた (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。同様に、吸入経路での発生毒性試験では、ラットでは母動物に体重増加抑制、摂餌量減少がみられる用量で、胎児に体重の低値がみられたのみで、ウサギではラットと同濃度でばく露したが、高用量群の胎児に骨格変異 (過剰肋骨) がみられた以外、母動物、胎児ともに異常はみられなかった (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。さらに、経皮経路での発生毒性試験では、ラットでは母動物に体重増加抑制がみられる用量で、胎児に死亡例増加、体重の低値、骨化遅延、及び骨格奇形頻度の増加がみられたのに対し、ウサギでは1,000 mg/kg/dayまでの投与量で、母動物毒性は生じず、胎児に骨格変異 (過剰肋骨) がみられたのみであった (SIDS (2009)、CICAD 35 (2001))。 以上、ラットを用いた経口及び吸入経路での生殖毒性試験で、親動物に一般毒性影響がみられる用量まで投与しても、親動物の生殖能に影響はなかった。しかし、妊娠動物の器官形成期投与による発生毒性試験では、経口経路ではラット、ウサギともに母動物毒性がみられる用量で、胎児に骨格奇形を含む発生毒性影響が認められた。骨格奇形はラットの経皮経路の試験でも認められており、体重増加抑制など母動物毒性のみられる用量での胎児の所見ではあるが、胎児毒性及び奇形は母動物毒性による二次的影響ではない (SIDS (2009)) との記述も併せ考え、骨格奇形の誘発は本物質投与による重大な生殖毒性影響を示唆する所見と判断した。よって、本項は区分1Bとした。 なお、本物質はEU CLP分類でもRepr. 1B に分類されており、それに基づきEUは本物質を高懸念物質 (SVHC) に指定した (ECHA CL Inventory (Access on June 2015))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は実験動物で気道刺激性がみられている。ヒトでは重度の眼刺激及び頭痛が認められているが、ボランテイアによる吸入試験などで気道刺激性はないと報告されている (CICAD 35 (2001)、SIDS (2009)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 10 (1998))。実験動物では、ラットの5,100 mg/m3 (5.1 mg/L) (蒸気・エアロゾル混合体) 吸入ばく露で、死亡はみられず、ばく露中、呼吸速迫、不規則呼吸、息切れ、疼痛反射低下、ばく露後は、呼吸速迫がみられた。ラット、マウスの519 mg/kgの経口投与で協調運動失調の報告がある (CICAD 35 (2001))。 これらの知見より、ヒトの気道刺激性はないと判断した。また、ラットで疼痛反射低下、協調運動失調がみられていることから、麻酔作用が考えられた。以上より、区分3 (麻酔作用) とした。新たな情報を追加し旧分類を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2 (神経系、肺、肝臓、骨髄) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(神経系、肺、肝臓、骨髄) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 吸入ばく露による毒性は、エアロゾルと蒸気の比とばく露範囲 (頭部のみばく露または全身ばく露) に大きく影響される (CICAD 35 (2001))。 実験動物については、ラットを用いた2週間吸入毒性試験において、1,000 mg/m3 (ガイダンス値換算:0.11 mg/L) の頭部ばく露では軽度の鼻刺激のみであったが、同濃度でも高湿度で粗大な液滴の全身ばく露では、顕著な死亡率の増加 (8-9/10例)、無関心、不整呼吸、痙攣、振戦、体重/体重増加の減少、鼻部の刺激、死亡例で臓器/組織に対する重篤な影響 (ほぼすべての臓器のうっ血、脾臓のリンパ球枯渇・壊死、骨髄の汎骨髄ろう・ゼラチン様骨髄・細胞枯渇、肺の肺水腫・多発性化膿性肺炎、肝臓の壊死性変性、腺胃の潰瘍、副腎重量増加) がみられている (CICAD 35 (2001))。また、ラットを用いた4週間反復吸入毒性試験 (高用量は、多数の死亡がみられたため10日後にばく露中止)) において、1,000 mg/m3 (ガイダンス値換算:0.11 mg/L) で死亡または瀕死による屠殺 (13/30)、嗜眠、不整呼吸、呼吸困難、死亡/瀕死動物で肺の浮腫・うっ血、骨髄形成不全、胸腺、脾臓、リンパ節のリンパ組織の萎縮や壊死がみられている (環境省リスク評価暫定的有害性評価シート第8巻 (2010)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2002)、CICAD 35 (2001))。 室温での蒸気相濃度最高値は、乾燥空気 (相対湿度0%) では1,318 mg/m3、通常湿度 (相対湿度60%) では412 mg/m3、湿った空気 (相対湿度100%) では0 mg/m3である (CICAD 35 (2001)。したがって、上記の1,000 mg/m3は蒸気ではなくミストを含んでいると考えられることから、ミストの区分を適用し区分2 (神経系、肺、肝臓、骨髄) とした。 なお、経口経路については、ラットを用いた複数の反復経口投与毒性試験において、覚醒低下、眼瞼閉鎖、神経行動学的検査での異常、骨髄形成不全、胸腺萎縮、肝臓の小葉中心性肝細胞肥大、小葉中心性脂肪変性、精巣の変性・萎縮、腸間膜リンパ節のリンパ系細胞の減少、慢性進行性腎症 (雄)、副腎皮質の肥厚・嚢胞形成がみられ、中枢神経系、骨髄、肝臓、精巣、腎臓、副腎に影響がみられている。これらの所見は区分2を超える範囲であった。 旧分類において、蒸気での区分を適用していたが、上述の理由からミストの区分を適用したため、区分が変更となった。また、旧分類において、DFGOT vol.10 (1998) に記載のある5ヶ月間吸入試験のデータを採用していたが、著しく低濃度である100-200 mg/m3で脾臓、肝臓、肺、腎臓に変化がみられているが、これらの所見は疑ってみる必要があるとの記載がDFGOT vol.10 (1998) にあることから、採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB収載の数値データ (粘性率: 1.65 mPa・s (25℃)、密度 (比重) : 1.027) (HSDB (Access on June 2015)) から、動粘性率は1.61 mm2/sec (25℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 藻類(セネデスムス)72時間EC50 > 500 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)24時間EC50 > 1000 mg/L、魚類(ニジマス)96時間LC50 > 500 mg/L(いずれもSIDS, 2009)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(28日でのBOD(NO2)分解度=73%、BOD(NH3)分解度=94%、TOC分解度=96%、GC分解度=100%(通産省公報, 1989))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (繁殖及び致死) = 12.5 mg/L(いずれもSIDS, 2009)であることから、区分外となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類の急性毒性が区分外相当であり、難水溶性ではない(水溶解度=100,000 mg/L、PHYSPROP Database 2009)ことから、区分外となる。 以上の結果から、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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