GHS分類結果

名称:アクリル酸エチル
CAS番号:140-88-5

結果:
物質ID: H27-B-032/C-068B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点9℃ (closed cup)、沸点99℃ (ICSC (2003)) に基づいて区分2とした。 なお、UNRTDG分類はUN.1917 (安定剤入りのもの)、クラス 3、PGUである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合 (オレフィン) を含むが、データがなく分類できない。なお、安定剤入りのものはUNRTDGでUN 1917 クラス3に分類されているので、上位の危険物自己反応性化学品には該当しないためタイプG。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が372℃ (HSDB (Access on July 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、500〜5,000 mg/kgの範囲内で9件の報告がある。最も多くのデータ (4件) (約550 mg/kg (DFGOT vol. 6 (1994)、ECETOC JACC28 (1994))、800 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、1,020 mg/kg (約1,000 mg/kg) (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 6 (1994)、ECETOC JACC28 (1994)、NTP TR259 (1986)、IARC 19 (1979))、1,120 mg/kg (SIDS (2008)) が該当する区分4とした。なお、1件が区分外 (国連分類基準の区分5)、1件が分類できないに該当する。また、3件は複数データをまとめた値であるため、該当数に含めずに分類した。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、2,000〜5,000 mg/kg (ECETOC JACC28 (1994)、NITE初期リスク評価書 (2007))、3,049 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、> 5,000 mg/kg (ECETOC JACC28 (1994)) との4件の報告がある。2件 (その中の1件が国連分類基準の区分5に該当する。) が区分外に、残りの2件が分類できないに該当するので、ラットの区分は区分外 (国連分類基準の区分5) となる。 ウサギのLD50値として、461〜3,049 mg/kgの範囲内で6件の報告がある。ウサギの区分は最も多くのデータ (2件) (1,790 mg/kg (約1,800 mg/kg) (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 6 (1994)、ECETOC JACC28 (1994)、NTP TR259 (1986))、1,950 mg/kg (IARC 19 (1979)) が該当する区分4となる。なお、1件が区分3に、1件が区分外に該当し、2件は複数データをまとめた値であるために、該当数に含めずに分類した。 ラットの区分とウサギの区分とを比較し、危険性の高い区分であるウサギの区分4を採用した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、1,000〜2,000 ppm (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)、NTP TR259 (1986))、1,414 ppm (環境省リスク評価第11巻 (2013))、> 1,500 ppm (ECETOC JACC28 (1994))、2,180 ppm (SIDS (2008)、ECETOC JACC28 (1994))、2,180 ppm (環境省リスク評価第11巻 (2013))、< 1,000-2,000 ppm (IARC 39 (1986))、1,000〜2,180 ppm (NITE初期リスク評価書 (2007)) との7件の報告がある。区分を特定できない1件の報告以外は全て区分3に該当することから、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404) が2報あり、軽度から中等度の紅斑がみられたが14日以内に回復したとの報告 (SIDS (2008))や、適用1、24、48、72時間後に重度の紅斑及び重度の浮腫がみられたが14日後には回復し、一次刺激性スコアは8であった (SIDS (2008)) との報告がある。また、別の報告で本物質をウサギに 4 時間閉塞適用した結果、痂皮、壊死塊、瘢痕を伴う強度の紅斑と浮腫が 2 週間後も継続して認められ、腐食性を示した (ECETOC JACC28 (1994))。その他、具体的な情報ではないが本物質はヒトの皮膚に対して強い刺激性を持つとの記載が複数ある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第2巻暫定的有害性評価シート (2003)、NTP TR259 (1986)、PATTY (6th, 2012))。以上、ガイドラインに従った試験2報において、14日以内に回復性みられたことから区分2とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギ6匹を用いたドレイズ試験において、本物質0.1 mLを適用した結果、軽度から強度の結膜刺激、角膜混濁、虹彩炎がみられ、1匹については症状が重かったため屠殺し、他の5匹については、72時間後に症状の軽減がみられた (SIDS (2008)) との報告がある。 また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、本物質0.1 mLを適用した結果、24 時間後壊死がみられたとの報告がある (ECETOC JACC28 (1994)、SIDS (2008))。その他、具体的な情報ではないが本物質はヒトの眼に対して強い刺激性を持つとの記載が複数ある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第2巻暫定的有害性評価シート (2003)、NTP TR259 (1986)、PATTY (6th, 2012))。以上の報告から区分2Aとした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いたビューラー試験 (NITE初期リスク評価書 (2007)、ECETOC JACC28 (1994)) 及びマキシマイゼーション試験 (NITE初期リスク評価書 (2007)) で陽性の結果が報告されている。また、モルモットを用いた他の感作性試験 (フロインド完全アジュバント試験) においても感作性ありとの報告がある (SIDS (2008))。一方、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験では感作性なしとの報告もある (SIDS (2008)) が、SIDS (2008) は本物質について感作性の可能性ありと述べている (SIDS (2008))。 ヒトにおいては、ボランティア 24 人に対する皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法) において、本物質を 4%含有するワセリンを 48 時間閉塞適用した結果、10 人に感作性を示したとの報告がある (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR259 (1986)、DFGOT vol.16 (2001))。その他に、多くのケーススタディで感作性の報告があることから (DFGOT vol.16 (2001))、DFGOTは本物質を感作性物質としている (DFGOT vol.16 (2001))。 以上、ビューラー試験及びマキシマイゼーション試験において陽性の報告があり、ヒトにおいても感作性の報告があることから、区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、マウス骨髄細胞を用いた小核試験で陽性、陰性の結果 (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2008)、ECETOC JACC28 (1994)、IARC 39 (1986)、IARC 71 (1999))、マウス脾臓細胞を用いた小核試験及び姉妹染色分体交換試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2008)、ECETOC JACC28 (1994)、IARC 71 (1999))、ラット前胃、マウス末梢血を用いたDNA切断試験、ラット前胃及び肝臓を用いたDNA付加体形成試験でいずれも陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2008)、ECETOC JACC28 (1994)、IARC 71 (1999))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、hgprt遺伝子突然変異試験で陰性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、ECETOC JACC28 (1994)、IARC 39 (1986)、IARC 71 (1999))。以上より、SIDSではin vivo小核試験陽性の知見に懐疑的であり、本分類においてもSIDSの判断を採用し、in vivo試験陰性ならびに他のin vitro知見より、ガイダンスに従い、分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトでの発がん性に関する情報はない。実験動物では、ラット又はマウスを用いた強制経口投与による2年間発がん性試験において、前胃の扁平上皮がん、又は乳頭腫発生率の用量相関的な増加が両種、両性のいずれにも認められ (ACGIH (7th, 2001)、NTP TR259 (1986))、雄ラットに12ヶ月間強制経口投与し、その後12ヶ月間回復後に屠殺剖検した追加試験でも、前胃扁平上皮の腫瘍発生率の増加が確認された (ACGIH (7th, 2001)、IARC 71 (1999))。一方、ラット、又はマウスに本物質の蒸気を27ヶ月間、又は21ヶ月間 (ばく露終了後6ヶ月の回復期間) 吸入した発がん性試験では、雄マウスで甲状腺濾胞腺腫の増加が示された以外に、いずれの試験でも呼吸器を含む諸臓器に腫瘍発生率の増加はみられていない (ACGIH (7th, 2001))。なお、甲状腺腫瘍については原著者らが本物質ばく露に関連した変化ではないと主張していることを記載した上で、ACGIHは吸入経路では本物質は発がん性を示さず、本物質の発がん性分類はA4とした (ACGIH (7th, 2001))。 この他、国際的な発がん性分類結果としては、IARCが経口経路での前胃の腫瘍発生が追試により確認されたことで、グループ2Bに (IARC 71 (1999))、日本産業衛生学会が第2群Bに分類している (産衛学会勧告 (2015))。他方、NTPは当初は本物質をR物質に分類していたが、経口経路で認められた前胃の腫瘍発生は高濃度の本物質を強制経口投与したことによる粘膜への局所刺激性、及び反復刺激による細胞増殖作用により誘発されたもので、ヒトでは生じないと考えられるとして、2001年のReport on Carcinogens.第9版で発がん性物質リストから削除し (SIDS (2008)、NTP (2001))、最新の改訂版でも「リストからの除外物質」として付属資料に掲載している (NTP RoC 13th (2014))。 以上より、旧分類ではIARC (1999) の分類結果を根拠に区分2とされたが、上記の通り、その後のNTPによる再検討結果、並びにIARCも再評価を予定しているとの記述(SIDS (2008))を踏まえ、本評価ではデータ不足のため分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日、又は妊娠6〜20日) に吸入ばく露した2件の発生毒性試験において、1つは150 ppm の濃度で母動物に体重増加抑制、摂餌量及び摂水量の減少がみられ、胎児に奇形誘発の傾向が窺われたが、統計学的に有意な増加ではなく (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価書第11巻 (2013))、他の試験では200 ppm までばく露したが母動物毒性は発現せず、200 ppm で胎児重量の低値のみで奇形の発生はみられていない (SIDS (2008))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) 警告
危険
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(呼吸器)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は、ヒトの呼吸器及び消化器に強い刺激作用を有し、吸入ばく露で灼熱感、咳、息切れ、頭痛、悪心、咽頭痛、嗜眠、経口摂取で吐き気、嘔吐、腹痛、下痢を生じる (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013))。また、ヒトへの影響は、強い気道刺激性及び胃腸管刺激性であるとの記載 (ACGIH (7th, 2001)、ECETOC JACC 28 (1994)、DFGOT vol. 6 (1994)、IARC 19 (1979)、IARC 39 (1986)、NITE初期リスク評価書 (2007)、PATTY (6th, 2012)) がある。 実験動物では、ラットの吸入ばく露で呼吸器刺激性、呼吸困難 (区分1相当)、ラットの経口投与で腹臥位 (区分2相当)、重度の胃刺激性(用量不記載)、ラットの経皮適用で活動性低下、協調運動失調 (区分2超相当) の報告がある。 以上より、本物質は麻酔作用、呼吸器への強い刺激作用が認められ、区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。 旧分類の振戦の所見については死亡前の症状で、用量も不明のため不採用とし、区分として神経系を採用しなかった。新たな情報を追加し旧分類の区分を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、4〜58 mg/m3 の本物質及び50 mg/m3 のアクリル酸ブチルに平均5年間ばく露された労働者33人では、14人が自律神経系及び神経系の徴候を訴えたが、脳波の異常はなかった(環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2007))。 実験動物では、ラットを用いた12ヶ月間吸入毒性試験において25 ppm (0.104 mg/L) 以上で体重増加抑制、鼻粘膜の炎症、嗅上皮の変性がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。ラットを用いた27ヶ月間吸入毒性試験において25 ppm (0.104 mg/L) 以上で鼻腔粘膜基底細胞の増生、嗅上皮の呼吸上皮化生がみられ、マウスを用いた27ヶ月間吸入毒性試験において25 ppm (0.104 mg/L) 以上でボーマン腺の増生、嗅上皮の呼吸上皮化生がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2008))。 以上のように、ヒトで混合ばく露であるが神経系に影響がみられ、実験動物では鼻腔に対する影響が区分1の範囲で認められている。 したがって区分1 (神経系、呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(メダカ)96時間LC50 = 1.16 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2007、環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急速分解性がなく(14日でのBOD分解度=51.5%、TOC分解度=92.6%、GC分解度=100%(通産省公報, 1975))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (GRO/REP) = 0.19 mg/L(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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