GHS分類結果

名称:m-ジクロロベンゼン
CAS番号:541-73-1

結果:
物質ID: H27-B-045/C-081B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点63℃ (closed cup) (GESTIS (Access on August 2015)) に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が> 500℃ (HSDB (Access on August 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、580 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008))、1,200 mg/kg (雄)、1,000 mg/kg (雌) (環境省リスク評価第6巻 (2008)、ATSDR (2006))、2,300 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 1 (1990)) との3件の報告がある。2件が区分4に、1件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当するため、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (環境省リスク評価第6巻 (2008)) との報告に基づき、区分外とした。旧分類の区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (7時間) として、8,200 mg/m3 (4時間換算値:1,779 ppm) (環境省リスク評価第6巻 (2008)) との報告に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (1,974 ppm (12,081 mg/m3)) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットのLC50値 (4時間) として、17.6 mg/Lとの報告 (環境省リスク評価第6巻 (2008)) に基づいて、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (1,974 ppm (12,081 mg/m3)) より高いため、ミストの基準値を適用した。今回の調査で入手した新たな情報を追加して、区分を見直した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
本物質は皮膚に対して刺激性を有するとの記載や、皮膚に付着すると発赤や痛みを生じるとの記載がある (環境省リスク評価第6巻 (2008))。以上より、区分2とした。なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質を24時間閉塞適用した結果強度の刺激性がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 1(1991)) が、24時間適用の結果であるため分類には用いなかった。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質0.1 mLを24時間適用した結果、軽度から重度の結膜浮腫及び軽度の角膜混濁がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 1 (1991)、BUA 8 (1987))。また、本物質は眼に対して刺激性を有するとの記載や、眼に付着すると痛みを生じるとの記載がある (環境省リスク評価第6巻 (2008))。以上、重度の症状報告があることから区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、腹腔内投与によるマウス骨髄細胞の小核試験で陽性 (環境省リスク評価第6巻 (2008)、DFGOT vol. 1 (1990)、EHC 128 (1991)、IARC 73 (1999))、経口投与によるチャイニーズハムスターの骨髄細胞を用いる染色体異常試験で陰性である (BUA 133 (1996))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である(環境省リスク評価第6巻 (2008)、ATSDR (2006)、DFGOT vol. 1 (1990)、IARC 73 (1999)、EHC 128 (1991))。以上より、in vivo骨髄小核試験の陽性知見は評価には使えないものとされ (DFGOT vol. 1 (1990))、ガイダンスにしたがい分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒト、実験動物ともに本物質の発がん性に関して、分類に利用可能な情報はなく、IARCは 「グループ3」 に分類した (IARC vol. 73 (1999))。この他、発がん性分類としてはEPAが1990年に 「D (Not classifiable as to human carcinogenicity) 」 に (IRIS Summary (Access on August 2015)) に分類しており、以上より本項は分類できないとした。 なお、旧分類結果 (区分外) とは基準とした分類ガイダンスが変更されたため、分類結果が変わった。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため、分類できない。なお、本物質を妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日) に強制経口投与した発生毒性試験において、200 mg/kg/dayまでの用量では、母動物毒性も、胎児への発生毒性影響もみられなかったとの記述があるが、要約のみで、方法、結果の詳細な記述がなく、不十分な報告とされている (ATSDR (2006)、DFGOT MAK Value Documentation (2013)、HSDB (Access on August 2015))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (肝臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 危険
警告
H370: 臓器の障害(肝臓)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第6巻 (2008)、EHC 128 (1991))。ヒトか実験動物か詳細不明であるが、吸入ばく露では咳、嗜眠、咽頭痛、経口摂取では、下痢、吐き気、嘔吐 (環境省リスク評価第6巻 (2008))、マウスの経口投与では300 mg/kg (区分1相当) で、有意な肝重量増加、血清ALT増加、広汎な小葉中心性肝細胞壊死を起こし肝障害の報告 (IARC 73 (1999))、マウスの1,000 mg/kg以上の経口投与 (区分2相当) で協調運動失調、努力呼吸の報告 (EHC 128 (1991))、中枢神経抑制 (麻酔作用) の記載がある (EHC 128 (1991))。 以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用、肝臓影響があり、区分1 (肝臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2 (肝臓) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物では、ラットを用いた10日間強制経口投与毒性試験において、区分2の範囲である368 mg/kg/day (90日換算:40.9 mg/kg/day) で肝臓重量増加、肝臓の変性 (空胞化及び腫脹) がみられ、また、90日間強制経口投与毒性試験において、区分2を超える範囲である147〜588 mg/kg/dayで肝臓重量増加、肝細胞の変性、壊死が認められている (環境省リスク評価第6巻 (2008)、ATSDR (2006))。なお、この90日試験において、区分1の範囲である9 mg/kg/dayでGOT (AST) ・コレステロール増加(雄)、LDH減少 (雄)、甲状腺の濾胞コロイド密度の減少、下垂体前葉の細胞の空胞化 (雄) も認められたが、肝臓の酵素誘導に伴った二次的所見と考えられ分類に用いなかった。また、ラットを用いた28日間強制経口投与毒性試験において、区分2の範囲である100 mg/kg/day (90日換算:31.1 mg/kg/day) で肝臓重量増加及び肝酵素誘導 (病理組織学的変化を伴っていない) がみられ、区分2を超える500 mg/kg/day (90日換算:155.6 mg/kg/day) で肝細胞肥大、軽度の血清酵素活性増加が認められている (BUA 133 (1996)、環境省リスク評価第6巻 (2008))。 したがって、区分2 (肝臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on August 2015) に収載された数値データ (粘性率: 1.044 mPa・s (25℃)、密度 (比重) : 1.2884) より、動粘性率は0.810 mm2/sec (25℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50/EC50 = 2.85 mg/L(EHC 128, 1991)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急速分解性がなく(BOD分解度=0%、GC分解度=0%(通産省公報, 1983))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (繁殖) < 0.1 mg/L(環境庁生態影響試験, 1995、環境省リスク評価第6巻, 2008)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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