名称:p-キシレン
CAS番号:106-42-3
物質ID: | H27-B-048/C-084B_P |
分類実施者: | 厚生労働省/環境省 |
分類実施年度: | 平成27年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分3 | 警告 | H226: 引火性液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること/アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
引火点25℃ (closed cup) に基づいて区分3とした。なお、UNRTDG分類はUN1307、クラス3、PGVである。 | |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が528℃ (HSDB (Access on August2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値として、4,029 mg/kg (EHC 190 (1997)、3,900〜4,030 mg/kg (NITE有害性評価書 (2008))、5,000 mg/kg (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2001)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 | 警告 | H332: 吸入すると有害 |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 |
ラットのLC50値 (4時間) として、4,550 ppm (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2001))、4,740 ppm (EHC 190 (1997))、約4,800 ppm (雌) (NITE有害性評価書 (2008)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (8,885 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 | |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 |
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質0.5 mLに4時間ばく露した結果刺激性がみられたとの報告 (EHC 190 (1997)) から区分2とした。なお、本物質を含むキシレン混合物をウサギの皮膚に適用した試験で、紅斑、浮腫、落屑及び壊死が観察され、中等度から強度の皮膚刺激性を示したとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008))。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、本物質を含むキシレン混合物をウサギの眼に適用した試験で軽度の刺激性を示したとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008))。旧分類のデータは混合物のデータであるため分類に用いなかった。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、腹腔内投与によるマウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性 (NITE有害性評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、ATSDR (2007))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、ATSDR (2007))。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | 発がん性の既存分類としては、本異性体単独での分類結果はACGIH のA4 (ACGIH (7th, 2001)) 以外には、キシレン混合物としてIARCが「グループ3」に (IARC vol. 71 (1999))、EPAが2003年に「 I (Inadequate for an assessment of the carcinogenic potential of xylenes) 」 に (IRIS Summary (Access on August 2015)) 分類している。試験データとしては、本物質14%を含むキシレン混合物 (その他、m-キシレン60%、o-キシレン9%、エチルベンゼン17%を含有) をラット、又はマウスに2年間強制経口投与した試験で、ラットで500 mg/kg/day、マウスで 1,000 mg/kg/dayを投与されたが、腫瘍発生の増加はみられていない (NTP TR 327 (1986)、IARC 71 (1999)、IRIS Tox Review (2003)、NITE有害性評価書 (2008))。 以上、本物質単独ではデータ不足のため、またキシレン混合物としては国際機関による既存分類結果に基づき、いずれの場合も、本項は分類できないに該当する。なお、ACGIHはNTPの発がん性試験結果が陰性であったことに基づき、混合物、及び各異性体に対し、「A4」としている (ACGIH (7th, 2001))。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 | 警告 | H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトでは本物質単独ばく露による情報はないが、キシレン混合物にばく露された妊婦の集団では自然流産の頻度の増加がみられた (オッズ比: 3.1、 95%信頼区間: 1.3〜7.5) とする報告があるが、他の溶媒、化学物質 (エチルベンゼンを含むかは不明) への同時ばく露を受けており、キシレンによる影響とは言えず (ATSDR (2007))、また、尿中バイオマーカー検査でいくつかの有機溶媒 (エチルベンゼンを含むかは不明) に混合ばく露されたことが判明しているフィンランド人作業者を対象とした自然流産に対する症例研究でも、キシレンばく露と関連したオッズ比の有意な増加は示されなかった (ATSDR (2007))。 一方、実験動物では、本物質を妊娠マウスの器官形成期に強制経口投与した試験では、母動物毒性が発現しない用量で、胎児に口蓋裂の頻度増加がみられたとされるが、この内容は講演要旨にある不十分な記述 (NITE有害性評価書 (2008)) で、ATSDR (2007)、ACGIH (7th, 2001) にはこの記述がなく、分類に利用すべきではないデータと判断した (旧分類はこの結果により区分1Bと分類された)。 吸入経路では、本物質を妊娠ラットの器官形成期に吸入ばく露 (24時間/day) した試験では、母動物に摂餌量減少、又は血清中性ホルモン濃度の低下がみられる用量 (3,000 mg/m3) で、胎児重量の低値、同腹児数の減少、過剰肋骨がみられた (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)) との報告がある一方、妊娠ラットの器官形成期に最大7,000 mg/m3を6時間/dayでばく露した試験では、母動物に体重増加抑制がみられたが、胎児に有害影響はみられなかった (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)) との報告、並びに妊娠ウサギの器官形成期に最大1,000 mg/m3を24時間 /dayで吸入ばく露した試験でも母動物には死亡例、流産がみられたが、胎児には無影響であったとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007))。 日本産業衛生学会はエチルベンゼンを含む工業用キシレン (混合キシレン) に対して「生殖毒性物質第2群」に、エチルベンゼンを含まないキシレン (o-, m-, p-キシレン及びその混合物) に対して「生殖毒性物質3群」に分類している (許容濃度の勧告 (2015))。 以上、キシレン混合物を含む複数溶媒への複合ばく露で、ヒトで自然流産の頻度増加が懸念されるとの不確実な情報があるが、エチルベンゼンの含有については不明であり、産衛学会の分類区分に照らした分類はできない。しかし、実験動物に対して本物質自体を単独吸入ばく露した複数の試験において、概ね母動物毒性が発現する用量で軽微な胎児毒性が示されたとの結果、及び日本産業衛生学会の分類結果 (エチルベンゼンを含まないp-キシレンとして「生殖毒性物質3群」に該当) を踏まえて、本項は区分2とした。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) |
危険 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) H370: 臓器の障害(中枢神経系) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質は気道刺激性がある (ACGIH (7th, 2001))。ヒトの事例では、ボランティア 6人への 本物質吸入ばく露で、4人に眩暈がみられた (NITE有害性評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2007)、EHC 190 (1997))。実験動物では、吸入ばく露 (動物種不明) (区分1相当の用量) で協調運動失調、振戦、軸索輸送の減少、高用量で麻酔作用、また、経路や用量等は不明ながら、本物質の毒性症状として、振戦、二相性 (抑制及び興奮) の中枢神経系反応、胃腸管障害の報告がある (NITE有害性評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2007)、EHC 190 (1997))。 以上より、本物質は気道刺激性、中枢神経系への影響、麻酔作用があり、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 分類できない | - | - | - | - | ヒトで本物質単独ばく露による有害性情報はない。しかし、p-キシレンを含む混合物については、ヒトで神経系 (頭痛、不安、健忘、不眠、自律神経失調症、集中力低下、筋力低下)、呼吸器 (胸部痛、呼吸困難、肺機能低下など)、血液系 (貧血、白血球減少、骨髄低形成など) への影響が報告されており (NITE有害性評価書 (2008)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2007))、これらはベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなど他の溶剤ばく露も含めた複合ばく露による影響であることが一部の報告で記述されており (NITE有害性評価書 (2008))、キシレン混合物ばく露による純粋な影響とは言えない。 一方、実験動物では、ラットを用いた10日間強制経口投与試験で、250 mg/kg/day (90日換算値: 27.8 mg/kg/day) で肝臓重量の増加がみられたが、血液化学検査値、組織変化などから肝毒性を示唆する付随所見を伴わず (NITE有害性評価書 (2008))、この記述を含めて実験動物での有害性情報に関しても、分類に利用可能なデータはない。 以上、本物質単独ばく露による影響として分類するにはヒト、実験動物ともに情報が不足しており、他の異性体と同様にデータ不足のため分類できないとした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 区分1 | 危険 | H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ |
P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 P331: 無理に吐かせないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
炭化水素で、動粘性率計算値が 0.70 mm2sec (25/20℃) である (粘性率: 0.603 mPa・s (25℃)、密度 (比重) : 0.861 (20/4℃) (HSDB (Access on August 2015)) ことから、区分1とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
甲殻類(ベイシュリンプ)の96時間LC50 =1.7 mg/L、魚類(ストライプトバス)の96時間LC50 = 1.7 mg/L(いずれもNITE初期リスク評価書, 2005、EHC 190, 1997)であることから、区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分2 | - | H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がないが(BODによる分解度:38%、良分解性(通産省公報, 1975))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 1.29 mg/L(環境省生態リスク初期評価第10巻, 2012、NITE初期リスク評価書, 2005)であることから、区分外となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(ストライプトバス)の96時間LC50 = 1.7 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005、EHC 190, 1997)であることから、区分2となる。 以上の結果を比較し、区分2とした。 | |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
使用マニュアル |
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