GHS分類結果

名称:クロロエタン
CAS番号:75-00-3

結果:
物質ID: H27-B-049/C-085B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分1 危険 H220: 極めて可燃性又は引火性の高いガス P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P377: 漏洩ガス火災の場合:漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
P381: 安全に対処できるならば着火源を除去すること。
P403: 換気の良い場所で保管すること。
UNRTDG分類、UN.1037、クラス2.1である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 区分外 - - - - 国連分類クラス2.1の可燃性/引火性のガスである。
5 高圧ガス 液化ガス 警告 H280: 高圧ガス:熱すると爆発のおそれ P410+P403: 日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。 臨界温度187℃ (HSDB (Access on August2015)) は65℃を超えているため、液化ガス (低圧液化ガス) とした。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(経皮) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分外 - - - - ラットのLC50値 (4時間) として、> 19,000 ppm (SIDS (2007)) 及びLC50値 (2時間) として、57,600 ppm (4時間換算値:40,305 ppm) (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol.3 (1992)、IARC 52 (1991))、57,600 ppm (4時間換算値:40,305 ppm) (環境省リスク評価第4巻 (2005))、60,632 ppm (4時間換算値:42,873 ppm) (ACGIH (7th, 2001))、57,600〜60,632 ppm (NITE初期リスク評価書 (2005)) との報告がある。4時間値では区分を特定できないが、2時間値はいずれも区分外に該当するので、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
ラットに本物質を適用した結果、皮下組織に浮腫がみられたとの報告がある (SIDS (2007))。また、本物質の蒸気にばく露されたヒトで皮膚刺激性の報告がある (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの眼に本物質を適用した結果、角膜混濁がみられたとの報告がある (SIDS (2007)) が、刺激性の程度は不明である。本物質の蒸気にばく露されたヒトで眼刺激性の報告 (SIDS (2007)、NITE初期リスク評価書 (2005)) や、本物質は眼に刺激性を示すとの記載 (ACGIH (7th, 2001)) がある。以上より、区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ボランティア2名に本物質のパッチテストを行った結果感作反応がみられたとの報告がある (SIDS (2007)、ATSDR (1998)) が、詳細不明であるため区分に用いるには不十分なデータと判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験及び染色体異常試験で陰性、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2007)、IARC 71 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1998)、PATTY (6th, 2012))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陽性、ラット及びマウスの肝臓の培養細胞を用いたDNA傷害、修復試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2007)、IARC 71 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol.3 (1992))。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの発がん性に関する情報はない。実験動物ではラット、及びマウスに15,000 ppmを2年間吸入ばく露した発がん性試験において、ラットでは皮膚腫瘍頻度の軽微な増加 (雄)、及び稀な腫瘍である神経膠細胞の腫瘍の発生 (雌、少数例)、マウスでは肺胞/細気管支の腫瘍頻度の増加 (雄)、肝細胞腫瘍の頻度増加 (雌)、子宮がんの増加がみられた。この実験動物での発がん性試験結果に基づき、ACGIH は1995年にA3に分類した (ACGIH (7th, 2001))。一方、IARCは1999年に本物質のヒト発がん性を再評価し、ヒトで利用可能なデータがなく、実験動物では限定的な証拠として、グループ3に分類した (IARC 71 (1999))。この他、分類年は特定できないが、EUのCLP分類ではCarc.2 に分類されている (ECHA 2014 CMR Report (ECHA (Access on August 2015))。以上、実験動物での発がん性試験結果の解釈が評価機関により異なるが、ACGIHとEUの分類結果を採用し、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠マウスに本物質の蒸気を 5,000 ppm (13,000 mg/m3) で妊娠6〜15日に吸入ばく露した結果、母動物毒性はなく、胎児に頭蓋骨の骨化遅延、過剰肋骨の発生頻度に最小限の増加がみられた (SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2001)) との報告がある。しかし、分類ガイダンス上で発生毒性影響として分類するには影響が軽微であること、他のラット、マウスを用いた吸入経路の発生毒性試験では胎児毒性がみられていない (SIDS (2007)) こと、一方で性機能、生殖能を評価した試験成績がなく、よって全体として分類に利用可能なデータがなく、分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器、心臓)、区分2 (肝臓)、区分3 (麻酔作用) 危険
警告
H370: 臓器の障害(呼吸器、心臓)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H371: 臓器の障害のおそれ(肝臓)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2001)、IARC 52 (1991)、NTP TR 346 (1989)、ATSDR (1998))。ヒトにおいては、麻酔剤として過去に使用された。吸入ばく露により、麻酔作用、酩酊感、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈、協調運動失調、意識消失、中枢神経系影響、反射低下、昏迷、胃痙攣、呼吸及び心障害、筋協調運動失調、不整脈、期外収縮、心室細動、心収縮不全、心筋抑制、心感作性、頻呼吸、呼吸麻痺、呼吸不全の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2007)、ACGIH (7th, 2001)、IARC 52 (1991)、NTP TR 346 (1989)、ATSDR (1998)、DFGOT vol.3 (1992)、PATTY (6th, 2012))。 実験動物では、モルモットの20,000 ppm吸入ばく露 (区分2相当) で、不安定歩行、低迷、眩暈、肺のうっ血・出血、肺水腫、肝臓のうっ血、肝浮腫、肝臓に対する病理組織学的変化 (生存例) が認められている (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1998)、DFGOT vol.3 (1992))。 ヒトにおける中枢神経系影響は麻酔作用に伴うもの (NITE初期リスク評価書 (2005)) であるため、中枢神経系は採用しなかった。 以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用のほか、呼吸器、心臓、肝臓に影響を与える。したがって、区分1 (呼吸器、心臓)、区分2 (肝臓)、区分3 (麻酔作用) とした。 なお、旧分類で記載された腎臓については区分2超の用量のため採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでは4ヶ月間、200〜300 mL/dayの本物質を吸引乱用した女性で、神経症状 (運動失調、震え、言語困難、反射遅延、眼振、幻覚) 及び肝臓の腫張、圧痛がみられた (環境省リスク評価第4巻 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th、2012) との記述、及び4ヶ月間毎日およそ100 mLの本物質を吸引した男性で、神経症状 (短期記憶喪失、幻視、下肢神経障害) がみられたが、肝臓影響の記載はない (環境省リスク評価第4巻 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、PATTY (6th、2012) との記述がある。一方、実験動物では、ラット、マウス、ウサギ、イヌに本物質を2〜26週間吸入ばく露した試験報告があるが、区分2をはるかに超える用量 (4,000〜19,000 ppm/6 hr) で、肝臓相対重量の増加がみられたのみで、標的臓器を特定可能な所見はない (環境省リスク評価第4巻 (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 以上、ヒトで本物質ばく露による神経症状の発症は確実と考えられるが、肝臓影響については1例のみの所見であり、標的臓器とするには情報不足と考えた。よって、本項は区分1 (神経系) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 58 mg/L(SIDS, 2003、NITE初期リスク評価書, 2005)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(BODによる分解度:1%(通産省公報, 1991))、急性毒性区分3であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る