GHS分類結果

名称:メチルビニルケトン
CAS番号:78-94-4

結果:
物質ID: H27-B-065/C-101B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-7℃ (closed cup)、沸点81℃ (ICSC (2003)) に基づいて区分2とした。 なお、UNRTDG分類は安定剤入りのものUN.1251、クラス6.1、副次危険3、8、PGTである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 化学構造に不飽和結合 (オレフィン) を含むが、安定剤を含むものはUNRTDG分類がクラス6.1 (3、8) 、PG Iに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。なお、安定剤が不足しているものは危規則で輸送禁止になっており、純物質の場合はタイプAである。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が491℃ (ICSC (2003)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P361+P364: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、約22 mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998))、23.1 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、約30 mg/kg、31 mg/kg (DFGOT vol. 9 (1998)) との報告に基づき、区分2とした。
1 急性毒性(経皮) 区分1 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギへの経皮適用で、0.05 mg/kg及び0.2 mg/kgで、いずれも3/3例が死亡との報告 (DFGOT vol. 9 (1998)) に基づき、区分1とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、2.4 ppm (ACGIH (7th, 2001))、22.4 ppm (DFGOT vol. 9 (1998)) との報告に基づき、区分1とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (123,552 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物の原液0.2 mLを適用した結果、充血、浮腫、潰瘍、瘢痕形成がみられ、症状の回復には28〜30日要したとの報告がある (DFGOT vol. 9 (1998))。また、ウサギを用いた別の試験において、本物質の適用1.5及び15分後に、重度の炎症がみられ、皮膚組織及び筋肉組織に至る重度の壊死がみられ、回復性がみられなかったとの報告がある (DFGOT vol. 9 (1998))。また、本物質はヒトの皮膚に対して重度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2001)) との記載や、腐食性を示す (DFGOT Vol.9 (1998)) との記載がある。以上より、区分1とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質を1滴適用した結果重度の損傷がみられ、失明したとの報告がある (DFGOT vol. 9 (1998))。また、本物質はヒトの眼に対して重度の刺激性を示す (ACGIH (7th, 2001)) との記載や、腐食性を示す (DFGOT vol. 9 (1998)) との記載がある。本物質は本GHS分類の皮膚腐食性/刺激性の区分において区分1とされている。以上より、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いた皮膚感作性試験において感作性がみられたとの報告や (DFGOT vol. 9 (1998))、モルモットを用いた2件の開放皮膚試験において重度の接触性皮膚炎又は軽度の感作性が認められたとの記述がある (DFGOT vol. 9 (1998))。また、本物質はACGIHでSEN (ACGIH 7th, 2001)、DFGでSh (MAK/BAT, 2004) に分類されている。以上より、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivoでは、雄ラット骨髄細胞を用いた小核試験は不確かな結果であり、マウス末梢血を用いた小核試験の結果は雌で陰性、雄で不確かな結果である (NTP DB (Access on October 2015))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果がある (DFGOT vol. 9 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、NTP DB (Access on October 2015))。In vivoにおける明確な陽性知見がなく、ガイダンスに従い、分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - - - 国際機関による分類結果もなく、データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器、腎臓)、区分3 (麻酔作用) 危険
警告
H370: 臓器の障害(呼吸器、腎臓)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質はヒトに気道刺激性、麻酔作用がある (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 9 (1998))。実験動物では、ラット、マウス、モルモットの吸入ばく露 (区分1相当) で呼吸器への影響 (気道粘膜の重度の傷害及び肺水腫)、ウサギ、ネコの経口投与 (区分1相当) で腎臓の重度の損傷 (詳細不明) が報告されている (DFGOT vol. 9 (1998)、BUA 233 (2003))。 以上より、本物質は麻酔作用のほか、呼吸器、腎臓への影響を有し、区分1 (呼吸器、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでの反復ばく露による有害性情報はない。実験動物ではラット、及びマウスに本物質1 ppmを12回吸入ばく露した試験において、いずれの種でも上気道に傷害を認め、0.5 ppmでは無影響であった (BUA 233 (2003)) との記述、及びラットに本物質6.9 ppmを2.5ヶ月間吸入した試験で、呼吸困難がみられた (DFGOT vol. 9 (1998)) との記述より、吸入経路では呼吸器が標的臓器と考えられた。蒸気によるばく露として、ガイダンス値換算濃度を算出すると、各々0.00038、及び 0.0011 mg/L/6 hrとなり、区分1に該当する。よって、本項は区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - ヒトでの吸引性呼吸器有害性の事例はない。ただし、本物質は3以上13を超えない炭素原子で構成されたケトンに属し、HSDB (Access on August 2015) に収載された数値データ (粘性率: 0.807 mPa・s (21℃)、密度 (比重) : 0.8636 (20℃)) を基に、動粘性率計算値が 0.934 mm2/sec (21/20℃) である。以上、国連分類では区分2に該当するが、旧分類後に改訂された現行ガイダンスにしたがい、分類できないとした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の96時間EC50 (biomass) = 0.12 mg/L(HSDB, 2007、AQUIRE, 2016)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性に関する適切なデータが得られておらず、急性毒性区分1であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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