GHS分類結果

名称:結晶質シリカ (クリストバライト)
CAS番号:14464-46-1

結果:
物質ID: H27-A-037/C-107A_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on September 2015)) である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on September 2015)) である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on September 2015)) である。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に不溶 (ACGIH (7th, 2001)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、本物質を用いてラットに13週間吸入ばく露し肺胞上皮細胞のhprt遺伝子突然変異を調べた試験で突然変異頻度の有意な増加が認められたとの報告がある (SIDS (2013))。それ以外にin vivo、in vitroのデータはない。以上より、データが限定されるものの、ガイダンスに従い区分2とした。なお、本物質の遺伝毒性は、当該物質からの、あるいは当該物質による炎症細胞からの活性酸素種に起因すると考えられる (SIDS (2013)、IARC 100C (2012))。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
多くの疫学研究結果において、本物質を含む結晶質シリカへの職業ばく露と肺がんリスクの増加との間に正の相関が認められており、特に複数の研究結果をプールし、異なるメタ解析を行っても、相対リスクは一貫して有意な増加を示した (IARC100C (2012)、SIDS (2013))。すなわち、本物質の形状を有する結晶質シリカ粉じんの吸入ばく露によりヒトで肺がんの発症リスクが増加するのは十分な証拠があるとしている (IARC 100C (2012))。 一方、実験動物ではラットに本物質20 mg/匹を単回胸腔内注射後に生涯観察した結果、投与群では平均生存日数が597日で4例 (4/32例) に組織球性悪性リンパ腫が認められたのに対し、対照群では平均生存日数は717日で同タイプの腫瘍発生はみられなかった (0/32例) との報告がある (IARC 68 (1997)、ACGIH (7th, 2006))。 以上、ヒト及び実験動物での発がん性情報より、IARC は本物質の粉じんばく露によるヒト発がん性に対し、1997年に「グループ 1」に分類し、2012年の再評価でも分類結果を変更していない (IARC 68 (1997)、IARC 100C (2012))。他の国際機関による発がん性分類結果としては、日本産業衛生学会が結晶質シリカに対して、「第1群」に (産衛学会勧告 (2015))、ACGIHが2004年以降、本物質に対し「A2」に (ACGIH (7th, 2006))、NTPが1991年以降、結晶質シリカ (吸入性粒子径) に対して、「K」に分類している (NTP RoC (13th, 2014))。よって、本項は区分1Aとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、本物質は石英と同様珪肺症が報告されている。また、実験動物ではα-石英に比べてより炎症性で線維形成性があることが報告されている (ACGIH (7th, 2006))。 したがって、区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 非晶質シリカを用いて試験されたデータで、甲殻類(オオミジンコ)の24時間LL50 > 10,000 mg/L、魚類(ゼブラフィッシュ)の96時間LL0 = 10,000 mg/L(いずれもSIDS, 2013)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - 信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急性毒性は区分外であるが、無機化合物であり、急速分解性及び生物蓄積性に関する適切なデータが得られていないことから、分類できないとした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


GHS関連情報トップページに戻る