GHS分類結果

名称:ビス(スルファミン酸)ニッケル(U)
CAS番号:13770-89-3

結果:
物質ID: H27-A-053/C-131A_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on October 2015)) である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 分子内に自己反応性に関連する原子団 (S=O) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on October 2015)) である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性 (GESTIS (Access on October 2015)) である。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に可溶 (GESTIS (Access on October 2015)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は水溶解度が高く、ニッケル及びニッケル無機化合物として日本産業衛生学会で気道感作性物質 (第2群) に分類されている (産衛学会勧告 (2015)) ことから、区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類で「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は水溶解度が高く、ニッケル及びニッケル無機化合物として、日本産業衛生学会では皮膚感作性物質 (第1群) に分類されている (産衛学会勧告 (2015)) ことから、区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質自体の試験データはない。しかし、ATSDRには本物質は二価の可溶性ニッケル化合物に属すること、ニッケル発がんに関する国際委員会はヒトの肺及び鼻腔のがんの発生は不溶性ニッケル化合物では10 mg Ni/m3以上のばく露で相関があると結論したこと、可溶性ニッケル化合物では 1 mg Ni/m3以上で不溶性ニッケル化合物の発がん性を促進する可能性があるとの記述がある (ATSDR (2005))。 既存分類としては、EUは本物質を 「Carc. 1A」に分類した (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。また、オーストラリアNICNASも本物質を含めて9種類の可溶性ニッケル化合物に関するグループ評価として、発がん性の分類をカテゴリー1 (GHSの区分1A相当) とすべきと提唱している (Australian NICNAS (Access on December 2015))。なお、IARCは2012年のニッケル化合物の発がん性評価では、本物質自体は評価されていないものの、ニッケル化合物、金属ニッケルを含む混合物はヒトに対し発がん性を示す十分な証拠があるとして、実験動物を用いた試験の証拠の多寡に関わらず、ニッケル化合物はヒトに発がん性を示すとして「グループ1」に分類した (IARC 100C (2012))。 以上、本物質の既存分類を踏まえ、本項は区分1A が妥当と判断した。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質自体の生殖発生毒性試験結果はない。しかし、ATSDRには硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルなど可溶性ニッケル化合物の経口ばく露により、雄の生殖器官に対し有害性を示すとの報告があり、精巣上体及び精嚢の組織変化、精子数の減少、精子の運動性低下及び形態異常、雄にばく露後無処置雌との交配による受胎率低下がみられたとの報告、交配前から交配・妊娠後哺育期間を通してばく露した複数の試験において、主に母動物に体重増加抑制がみられる用量で児動物に生存率の低下がみられたとの記述がある (ATSDR (2005))。既存分類としては、EUは本物質を 「Repr. 1B」に分類した (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。また、オーストラリアNICNASも本物質を含めて9種類の可溶性ニッケル化合物に関するグループ評価として、生殖・発生毒性の分類をカテゴリー2 (GHSの区分1B相当) とすることを提唱している (Australian NICNAS (Access on December 2015))。 以上より本項の分類には可溶性ニッケル化合物の分類結果が適用可能と考えた。よって、本項は区分1Bとした。 なお、本邦のGHS分類 (生殖毒性) では、塩化ニッケルが区分1B、硫酸ニッケルが区分2とされている (H21年度分類結果)。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - 本物質自体の単回ばく露データはない。なお、可溶性ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル六水和物 (CAS 10101-97-0) (平成25年度分類)、塩化ニッケル六水和物 (CAS 7791-20-0) (平成25年度分類) でいずれもデータ不足のため分類できないとされている。以上より、本物質はデータ不足のため分類できないとした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器)、区分2 (中枢神経系、肝臓、精巣) 警告
危険
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(中枢神経系、肝臓、精巣)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質自体の試験データはない。 しかし、既存分類としては、いずれも標的臓器自体について特定していないもののEUは本物質を 「STOT RE 1」に分類した (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。また、オーストラリアNICNASも本物質を含めて9種類の可溶性ニッケル化合物に関するグループ評価として、特定標的臓器反復毒性の分類を吸入経路でカテゴリー1 (GHSの区分1相当) とすることを提唱している (Australian NICNAS (Access on December 2015))。 また、本邦のGHS分類では、本物質と同様の可溶性ニッケルである塩化ニッケルが区分2 (肺、中枢神経系) (平成25年度分類結果)、硫酸ニッケル (II) 六水和物 が区分1 (呼吸器)、区分2 (肝臓、精巣) (平成25年度分類結果) に分類されている。 塩化ニッケルでは、ラットを用いた90日間経口投与毒性試験において区分2に相当する35 mgNi/kg/dayで肺胞マクロファージの肺胞内蓄積に特徴付けられる肺の炎症及びII型肺胞上皮細胞の萎縮を根拠に肺を標的臓器とし、また、ラットを用いた77日間経口投与毒性試験において区分2に相当する20 mg Ni/kg/day (90日換算値:17.1 mgNi/kg/day) で知覚の低下、協調運動作用の低下及び食餌を報酬としたレバー押し反応の低下 (動機づけの低下による) がみられ、ラットを用いた90日間経口投与毒性試験において、区分2の上限である100 mgNi/kg/dayで流涎、協調運動失調、嗜眠等を根拠に中枢神経系を標的臓器としている。また、硫酸ニッケル (II) 六水和物 では、ラット又はマウスに90日間又は2年間吸入ばく露した試験で区分1の範囲である0.0002 mgNi/L以下から、肺や気管支の炎症性変化、嗅上皮の萎縮等がみられたことを根拠に呼吸器を標的臓器とし、ラットに30日間経皮投与した試験において区分2に相当する用量 (ガイダンス値換算:20〜30 mgNi/kg/day) で皮膚病変以外に肝臓への影響 (肝細胞腫脹、部分的壊死、類洞の膨張とうっ血)、精巣の病変 (精細管の水腫、変性) を根拠に肝臓及び精巣を標的臓器としている。 本物質についても同様の影響がみられると考えられることから、区分1 (呼吸器)、区分2 (中枢神経系、肝臓、精巣) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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