名称:コールタールピッチ (高温)/コールタールピッチ
CAS番号:65996-93-2
物質ID: | H27-A-057/C-135A_P |
分類実施者: | 厚生労働省/環境省 |
分類実施年度: | 平成27年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。なお、可燃性 (ICSC (2002) との情報がある。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が> 500℃ (HSFS (2009)) であり常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない (融点は30〜180℃ (ICSC (2002))。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 水溶解度が測定されており、水と激しく反応しないと推定される。 水溶解度: 0.0035〜0.0041 mg/L (25℃) (NITE総合検索 (Access on October 2015)) |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素を含む有機化合物で、酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していないと推察される。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物であると推察される。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない (融点は30〜180℃ (ICSC (2002))。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値として、3,300 mg/kg、> 5,000 mg/kg、6,200 mg/kg、> 15,000 mg/kgとの報告 (EU-RAR (2008)) に基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値として、> 400 mg/kg及び> 5,000 mg/kgとの2件の報告 (EU-RAR (2008)) がある。1件が分類できなく、1件が区分外であるので、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、EU-RAR (2008) では、動物及びヒトに対して、揮発性コールタールピッチのばく露 (光との同時ばく露を含む) において、皮膚症状が生じるが、これらが皮膚刺激性に起因するものかを特定できないとしている (EU-RAR (2008))。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、コールタールピッチ (ヒューム、揮発物) の職業ばく露において、眼刺激性を有するものとして、眼に重篤な損傷のリスクがある (Xi, R41) と結論付けているEU-RAR (2008))。また、ウサギの眼に対してコールタールピッチ蒸留物を10μL適用した試験において、瞼の充血 (血管拡張)、流涙、僅かな粘液分泌が24時間後にみられたが回復したとの報告 (EU-RAR (2008)、IARC 35 (1985)) があるが、詳細不明である。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、EU-RAR (2008) は、コールタールピッチ (揮発物) について、単独もしくは光との同時ばく露によって、ヒト及び動物に対して皮膚症状を生じさせるが、原因は皮膚刺激性、皮膚感作性、光感作性のいずれであるかを特定できないとしている。しかしながら、本物質はベンゾ[a] ピレン (皮膚感作性物質) を1.5%含有するので、EU-CLP規則に従い、皮膚感作性物質とみなすことを推奨している (EU-RAR (2008))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分1B | 危険 | H340: 遺伝性疾患のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質のIn vivoデータはなく、in vitroでは細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性である (ECHA RAC (2011)、EU-RAR (2008)、IARC 35 (1985)、IARC 100F (2012))。本物質は1.5%のベンゾ[a]ピレン (Muta Cat. 1B) を含有することから、混合物 (ベンゾ[a]ピレン 0.1%以上含有) による分類として「区分1B」とした。 | |
6 | 発がん性 | 区分1A | 危険 | H350: 発がんのおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
IARCは2010年にコールタールピッチ にばく露 (一部ビチューメン (アスファルト) と同時ばく露例を含む) された可能性がある舗装工事作業者、屋根職人では発がんリスクの増加が示唆されたとの疫学研究結果に基づき、道路舗装や屋根の作業中の本物質への職業ばく露はヒト発がん性の十分な証拠があると結論された (IARC 100F (2012))。特に、肺がんの過剰リスクが米国、英国の屋根職人又は舗装工事作業者を対象とした疫学研究の結果、明らかにされ、フィンランドとオランダの舗装作業者を対象とした発がん頻度の追跡研究においても確認された (IARC 100F (2012))。また、フランスでは1970年以前、ノルウェー及びスウェーデンでは1965年以前にコールタールを含むアスファルト混合物に初期にばく露された作業者の間で肺がんによる高い死亡率、発生率が報告されたが、アスファルトの品質改良により、2003年の報告では死亡率、発生率ともに有意な増加は示されなかった (IARC 100F (2012))。さらに、フィンランドの道路舗装作業者を対象とした研究ではコ−ルタールのばく露レベルを半定量的にランク付け (スコア-年数積) 解析された結果、肺がんの相対リスクが非ばく露群1に対し、低レベルばく露群で1.49、中レベルばく露群で10.7に上昇したとの記述もある (IARC 100F (2012))。 実験動物ではマウスにコールタールピッチを経皮適用した6件の試験、及びコールタールピッチの抽出物を経皮適用した3件の試験全てにおいて、皮膚がんを含む皮膚腫瘍の発生が認められた (IARC 35 (1985)、IARC 100F (2012))。以上、IARCは舗装作業、屋根塗装作業に伴うコールピッチばく露によるヒトでの発がん性には十分な証拠があり、作業中の本物質は肺がんの原因物質となること、実験動物における本物質の発がん性も十分な証拠があるとして、グループ1に分類した (IARC 100F (2012))。その他、本物質 (揮発物含む) に対して、EUがピッチ、コールタール、高温 (Pitch, coal tar, high-temp) に対し、「Carc. 1A」 に (ECHA Termination of Evaluation (2014))、日本産業衛生学会がコールタール、コールタールピッチ揮発物に対し、「第1群」に (許容濃度の勧告 (2015)) 分類している。以上より、本項は区分1Aとした。 | |
7 | 生殖毒性 | 区分1B | 危険 | H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質自体 (Coal-tar, Pitch, High Temperature (CTPHT)) のデータはない。EUはCTPHTの生殖影響を評価するのに利用可能でないデータとして、高温煮沸コール液 (high-boiling coal liquid)、コールタール派生産物及びクレオソートの試験データがあり、妊娠ラットを用いた発生毒性試験で母動物毒性発現量で胎児毒性がみられたが、分類には利用できないとした。しかし、本物質が1.5%以下のベンゾ[a]ピレン (Repr. 1B) を含んでおり、これを0.5%以上含む混合物として本物質の生殖毒性は Repr. 1B に分類提案された。EUのリスク評価委員会はこれを了承した (ECHA RAC Opinion (2011))。よって、本項の分類もEUに倣い、ベンゾ[a]ピレン (CAS番号: 50-32-8) の本項分類結果 (区分1B (H23年度)) に基づき、混合物 (ベンゾ[a]ピレン 0.3%以上含有) による分類として「区分1B」とした。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3 (気道刺激性) | 警告 | H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質は気道刺激性があり、咳、くしゃみ、鼻腔粘膜の腫脹を引き起こすとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。なお、神経毒性があり手足の痺れ及び疼きを引き起こすとの記載があり (PATTY (6th, 2012))、不明確であったが、反復によるものと推定し判断した。 以上より、本物質は気道刺激性があることから、区分3 (気道刺激性) とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質は、神経毒性があり手足の痺れ及び疼きを引き起こすとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。 以上より、本物質は神経毒性があることから、区分1 (神経系) とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 | 警告 | H400: 水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
EUリスク評価書(EU-RAR, 2008)に記載されたWAFを用いたメダカの急性毒性試験のデータからは分類することはできない。EUリスク評価書においては、コールタールピッチ(高温)の代表的な組成に基づき、ベンゾaピレン等の成分の分類をもとに混合物の加算法を用いて、分類されている。 コールタールピッチにはPAH類(アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、ベンゾaピレン等)が相当濃度含まれることから、本政府分類においてもEUリスク評価書の方法と同様に、GHSの混合物の加算法を用いて分類することとした。これらのPAH類はいずれも政府向け分類ガイダンスに従った分類において水生環境有害性急性区分1であることから、コールタールピッチについても区分1とした。 | |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 | 警告 | H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
急性区分と同様に、PAH類は政府向け分類ガイダンスに従った分類で水生環境有害性慢性区分1であることからコールタールピッチについても区分1とした。 | |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
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