GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 88-85-7
名称 2-(1-メチルプロピル)-4, 6-ジニトロフェノール (別名: ジノセブ)
物質ID H28-B-06-METI, M-005B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含み、酸素収支の計算値が-140であるが、UNRTDGにおいてUN 2779 クラス6.1 (毒物) 容器等級Tに分類されており、優先評価項目である爆発性には該当しないと考えられる。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
  なお、可燃性という情報 (ICSC (2011)) がある。
8 自己反応性化学品 タイプG
-

-
- -   爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 2779 クラス6.1 (毒物) 容器等級Tに分類されており、優先評価項目である自己反応性には該当しないため、タイプGとした。
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-

-
- -   UNRTDGにおいてUN 2779 クラス6.1 (毒物) 容器等級Tに分類されており、優先評価項目である自然発火性固体には該当しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-

-
- -   フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外の元素(N)と化学結合しているが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を含んでいない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   融点が55℃以下の物質ではあるが、データがなく分類できない。
  なお、「水の存在下で軟鋼を侵す」という情報 (HSDB (Access on October 2016)) がある。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2

危険
H300 P264
P270
P301+P310
P321
P330
P405
P501
  ラットのLD50値 (OECD TG 423) として、「5 mg/kgと50 mg/kgの間にあると推定される。
  」 (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on October 2016)、SIDS (2008)) との報告に基づき、区分2とした。
  なお、旧分類時に用いたCERIハザードデータ集 (1998) は、List 3の情報源であるため、分類には使用しなかった。
1 急性毒性(経皮) 区分1

危険
H310 P262
P264
P270
P280
P302+P352
P310
P321
P361+P364
P405
P501
  ウサギのLD50値として、40 mg/kg (雄雌)、146 mg/kg (雄雌) (SIDS (2008)) の2件の報告があり、1件は区分1に、1件は区分2に該当する。
  有害性の高い区分を採用し、区分1とした。
  新たな情報に基づき、区分を見直した。
  なお、旧分類時に用いたCERIハザードデータ集 (1998) は、List 3の情報源であるため、分類には使用しなかった。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分1

危険
H330 P260
P271
P284
P304+P340
P310
P320
P403+P233
P405
P501
  ラットのLC50値 (4時間) として、33 mg/m3から290 mg/m3の間 (SIDS (2008))、35 mg/m3から130 mg/m3の間 (SIDS (2008)) との2件の報告があり、 区分1〜区分2に該当する。
  有害性の高い区分を採用し、区分1とした。
  新たな情報に基づき、区分を見直した。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  ガイダンスの更新により区分を変更した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A

警告
H319 P264
P280
P305+P351+P338
P337+P313
  ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質 (51〜55%) を適用した結果、角膜混濁や結膜刺激が適用7日後までみられたことから、本物質は強い眼刺激性を持つと報告されている (SIDS (2008))。
  以上から区分2Aとした。
  なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA C&L Inventory (Access on June 2015))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  すなわち、in vivoのデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性である (SIDS (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on October 2016)、IRIS summary(1989))。
6 発がん性 分類できない
-

-
- -   マウスに2年間混餌投与した発がん性試験において、肝臓腺腫の頻度に有意な増加が示されたが、再解析の結果では増加の傾向はみられず、かつ肝臓には過形成や変性など肝細胞がんの発生前にみられるような変化が認められなかったことから、EPAは肝臓腺腫の増加は被験物質投与による影響ではないと判断し、グループDに分類した (IRIS Summary (1989))。
  一方、EPAのOffice of Pesticide Programs (OPP) は本物質をグループC (Possible Human Carcinogen) に分類している (EPA OPP Chemicals Evaluated for Carcinogenic Potential (2015) (分類年は1986年))。
  このように、IRISとOPPで分類結果が異なるが、分類年の新しいEPA IRIS の分類結果を採用することとし、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分2

警告
H361 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、高用量群 (7 mg/kg/day) では雌10/12例が妊娠19〜21日に死亡ないし切迫屠殺された。
  生存雌では体重増加抑制がみられたが、雄に重篤な毒性は認められなかった。
  生殖影響として、雄親動物に精子の生存率及び運動能の減少と異常形態精子の比率の増加が、雌親動物に妊娠率の低下が認められた (SIDS (2008)、環境省リスク評価第7巻 (2009))。
  また、雄ラットに77日間混餌投与し、その後無処置雌と交配させた1世代試験において、15.6 mg/kg/day以上で雄に死亡 (15.6 mg/kg/day: 1/20例、22.2 mg/kg/day: 10/36例)、及び発熱、衰弱、不規則呼吸など毒性症状がみられ、9.1 mg/kg/day以上で精子数の減少及び異常精子の比率の増加が、15.6 mg/kg/day以上で精子の運動能及び妊娠率の減少 (不妊雌の増加) が認められた (SIDS (2008)、環境省リスク評価第7巻 (2009))。
  一方、妊娠ラットの妊娠6〜15日に本物質を経口 (混餌) 投与した発生毒性試験では、母動物に体重増加抑制がみられる用量 (200 ppm) で胎児に体重低値、骨格変異に加え小眼球症がみられた (SIDS (2008))。
  また、妊娠ウサギの妊娠7〜19日に本物質を経皮適用した試験でも、母動物毒性 (死亡、発熱) がみられる 3 mg/kg/day 以上の用量で胎児に水頭症、無眼球症の発生頻度増加がみられている (SIDS (2008))。
   以上、親動物に死亡など重篤な毒性所見のみられる用量で精子への影響、妊娠率低下、胎児に外表奇形の発生頻度増加など生殖発生影響がみられたことから、本項は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓)
区分2(腎臓)
区分3(麻酔作用)


危険
警告
H370
H371
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
  ヒトでは本物質は大脳と下位の脳中枢に直接作用して刺激とそれに引き続く抑制を起こし、また腎尿細管に壊死性の障害を起こす。
  劇症の中毒の場合は24時間以内に死亡し、死因は呼吸及び循環器系の障害であるとの記述がある (HSDB (Access on October 2016))。
  症例としては、本物質を含む除草剤の散布作業中に、装置の故障により吸入及び手へのばく露を受けた農業従事者が発熱、発汗、振戦、呼吸困難、突発性の咳、ラ音、ケルニヒ徴候、皮膚や眼の強膜の黄疸、肝機能と肺機能の低下、嗜眠を示したが、約12週間後には回復した例が報告されている (環境省リスク評価第7巻 (2009)、原典: Smith, W.D.; Practitioner. 225 (1356); 923-926 (1981))。
  また、本物質を主要成分として含有する液体を誤飲した幼児が、意識喪失、痙攣、高熱を示した後に心臓麻痺で死亡し、剖検では手、髄膜、気道、食道、胃粘膜の黄色の変色がみられ、また 肝臓の組織学的所見では、肝小葉周辺領域に細胞の損傷を示唆するグリコーゲン含有核封入体を含む細胞が認められたとの報告がある (環境省リスク評価第7巻 (2009)、原典: Vycudilik, W. et al.; Beitr Gerichtl Med. 44; 573-577 (1986) (in German))。
  実験動物ではラットを用いた4時間の単回吸入ばく露試験で、区分1相当の0.033 mg/Lで努力呼吸と運動低下が認められた (SIDS (2008))。
  また、ラットの単回経口投与試験で、区分1相当の50 mg/kgで腹臥、緩徐呼吸、下痢、自発運動低下が認められた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on October 2016))。
  以上より本物質は中枢神経系、呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓に影響を示すと考えられる。
  このうち呼吸器と心血管系への影響は中枢神経系への作用の二次的影響であると考えられるため、これらの臓器は標的臓器から除外した。
  したがって区分1 (中枢神経系、肝臓)、区分2 (腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
  HSDBがList 2の情報源であるため、腎臓の区分は区分2とした。
  新たな情報原を用いたため、旧分類から区分を変更した。
  
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(生殖器、眼)

危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては有用な情報はない。
   実験動物では、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、区分1相当の0.78 mg/kg/day (90日換算値: 0.36 mg/kg/day) 以上で赤血球数・ヘマトクリット値の増加あるいは増加傾向、2.33 mg/kg/day (90日換算値: 1.09 mg/kg/day) 以上で、ヘモグロビン量の増加、脾臓の髄外造血の減少等がみられ、7.0 mg/kg/day (90日換算値: 3.27 mg/kg/day) で平均赤血球容積の増加、精子運動性の低下、生存精子率の減少、奇形精子率の増加等が報告されている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on October 2016)、SIDS (2008)、環境省リスク評価第7巻 (2009))。
  ラットを用いた混餌による13週間反復投与毒性試験において区分1相当の0.004% (原典中に記載の換算値: 雄: 3.49 mg/kg/day、雌: 3.76 mg/kg/day) 以上で赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値の増加、区分2相当の0.012% (原典中に記載の換算値: 雄: 11.95 mg/kg/day、雌: 11.97 mg/kg/day) 以上で心臓・腎臓・脾臓の相対重量増加、尿比重低下、0.036% (原典中に記載の換算値: 雄: 56.8 mg/kg/day、雌: 52.8 mg/kg/day) で死亡 (1週間で13/20例、生存例は6週後に瀕死のため屠殺)、体重増加抑制、リンパ性細網組織形成不全、血中尿素窒素の増加がみられ、ラットを用いた混餌による12ヵ月間反復投与毒性試験において区分1相当の0.004% (原典中に記載の換算値: 雄: 2.46 mg/kg/day、雌: 3.28 mg/kg/day) 以上で肝臓のグリコーゲンの枯渇、肝臓及び腎臓で鉄沈着の軽微な増加、血中尿素窒素量の増加、血液濃縮の傾向が報告されている (環境省リスク評価第7巻 (2009))。
  また、マウスを用いた混餌による2年間発がん性試験において、区分1相当の1 mg/kg/day以上で子宮に嚢胞性子宮内膜過形成、精子形成減少を伴う精巣萎縮あるいは変性 (IRIS (1987)、SIDS (2008))、3 mg/kg/day以上 (低用量は未検査) で白内障の報告がある (IRIS (1987))。
   上記のうち、赤血球の増加については、ジニトロフェノール類には酸素消費量増加作用があり、その結果、動脈血酸素飽和度低下を来たし、エリスロポエチン増加が起こり赤血球産生増加を生じると考えられている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on October 2016))。
   以上より、区分1 (生殖器、眼) とした。
   なお、旧分類での「肝臓、腎臓、神経系に毒性を有し、肝臓実質及び腎尿細管に退行性変化をきたす」については芳香族ニトロ化合物一般についての記載であった。
  
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400 P273
P391
P501
  魚類(アメリカナマズ)96時間LC50 = 0.058 mg/L(SIDS, 2008)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410 P273
P391
P501
  急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存点検, 2004))、魚類(レイクトラウト)の10日間NOEC < 0.0005 mg/L、魚類(カットスロートトラウト)の10日間NOEC < 0.0005 mg/L(いずれもSIDS, 2008)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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