GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 606-20-2
名称 2,6-ジニトロトルエン
物質ID H28-B-15-METI, M-007B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 経済産業省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含み、酸素収支の計算値が-114であるが、UNRTDGにおいてUN 3454 (溶融状のものならば1600) クラス6.1 (毒物) 容器等級Uに分類されており、優先評価項目の爆発物には該当しないと考えられる。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
  なお、可燃性 (ICSC (2005)) との情報がある。
8 自己反応性化学品 タイプG
-

-
- -   爆発性に関連する原子団としてニトロ基を含むが、UNRTDGにおいてUN 3454 (溶融状のものならば1600) クラス6.1 (毒物) 容器等級Uに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しないと考えられる。
  
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-

-
- -   発火点が約400℃ (ホンメル (1991)) であり、常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-

-
- -   炭素、水素以外の元素 (N) と化学結合している酸素を含む有機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を含んでいない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4

警告
H302 P264
P270
P301+P312
P330
P501
  ラットのLD50値として、180 mg/kg (雄) (ATSDR (2016)、NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 65 (1996))、535 mg/kg (雄) (ATSDR (2016))、795 mg/kg (雌) (ATSDR (2016)、NITE初期リスク評価書 (2005))、535〜800 mg/kg (DFGOT vol. 21 (2005)) の4件の報告がある。
  1件は区分3に、3件は区分4に該当する。
  件数の最も多い区分4とした。
   なお、旧分類で用いているLD50値 535 mg/kg (SIDS (2005)) は、ジニトロトルエン (CAS番号 25321-14-6) の評価書であり、本物質含有率が 20% の異性体混合物のデータであるため、不採用とした。
  また、LD50値 177 mg/kg (環境省リスク評価第5巻 (2005)) は、RTECSのデータであり、入手不可であったため、採用しなかった。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分3

危険
H331 P261
P271
P304+P340
P311
P321
P403+P233
P405
P501
  ラットのLC50値 (6時間) として、> 0.026 mg/L (雌雄) (4時間換算値: > 0.032 mg/L) (ATSDR (2016))、0.24 mg/L (雄) (4時間換算値: 0.36 mg/L) (ATSDR (2016)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))、0.66 mg/L (雌) (4時間換算値: 0.99 mg/L)、0.43 mg/L (雌雄) (4時間換算値: 0.65 mg/L) (ATSDR (2016)、NITE初期リスク評価書 (2005)) の4件の報告がある。
  1件は区分1〜区分外に、1件は区分2に、2件は区分3に該当する。
  件数の最も多い区分3とした。
  新たな情報に基づき、区分を見直した。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、ウサギを用いたドレイズ試験において、本物質の適用による刺激性はみられなかったとの報告がある (DFGOT vol. 6 (1992)) が、試験条件等の詳細は不明であるため分類には不十分なデータと判断した。
  また、ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質及び2,4-ジニトロトルエン (用量不明) を適用した結果、軽度の刺激性がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。
  
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質を適用した試験において刺激性なしとの報告があるが (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 6 (1992))、試験条件等の詳細が不明であるため分類には不十分なデータと判断した。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において10匹中2匹に陽性反応がみられたとの報告があるが (NITE初期リスク評価書 (2005))、試験条件等の詳細について不明のため分類に用いるには不十分なデータとした。
5 生殖細胞変異原性 区分2

警告
H341 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  In vivoでは、ラット骨髄細胞及び末梢血赤血球の小核試験で陰性、ラット肝臓及び末梢血のコメットアッセイで陽性、ラット肝臓の不定期DNA合成試験で陽性、ラット精母細胞の不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、IARC 65 (1996)、ATSDR (2016))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陰性、染色体異常試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、IARC 65 (1996)、ATSDR (2016)、NTP DB (Access on October 2016))。
  以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 区分1B

危険
H350 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ヒトでは本物質と2,4-ジニトロトルエンの混合物にばく露された作業者の間に肝臓及び胆嚢の発がんリスクの増加が米国の作業者を対象としたコホート研究でみられたとする報告と、このような発がんリスクの増加は検出されなかったとの報告があり、結果に一貫性がなく、IARCでは本物質を含むジニトロトルエン類に対する発がん性の証拠は不十分であると結論された (IARC 65 (1996))。
  実験動物では雄ラットに本物質を1年間混餌投与した2つの試験において、いずれも肝臓腫瘍 (1つは肝細胞がん又は肝腫瘍性結節が100%の動物に発生し、他の1つでは肝細胞がん又は肝腫瘍性結節の用量依存的な発生に加え、肝臓腫瘍の肺転移がみられた) が認められており (IARC 65 (1996)、環境省リスク評価第9巻 (2011))、かつラットを用いたイニシエーション-プロモーション試験で本物質にはイニシエーター及びプロモーターの両作用が検出され、本物質は肝臓に対する完全発がん物質 (Complete Hepatocarcinogen) であると示唆されている (環境省リスク評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
  既存分類結果としては、IARCが実験動物では十分な証拠とがあるとしてグループ2Bに分類し (IARC 65 (1996))、一方、EUはCarc. 1Bに分類している (ECHA C&L Inventory (Access on November 2016))。
   以上、IARCの古い分類結果に従えば区分2となるが、実験動物で完全肝発がん物質であるとの知見、並びにEUのより新しい分類結果を踏まえて、本項は区分1Bとした。
7 生殖毒性 区分2

警告
H361 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  標準的な生殖発生毒性試験データはないが、ラット又はイヌに13週間経口投与した結果、精巣の萎縮・変性、及び精子形成能の低下がみられたとの報告がある (環境省リスク評価第9巻 (2011)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
  EU はRepr. 2 に分類している (ECHA C&L Inventory (Access on November 2016)。
  以上より、本項は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系)
区分3(麻酔作用)


危険
警告
H370
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
  ヒトでの本物質の単回ばく露のデータはない。
  実験動物では、ラットを用いた本物質の6時間の単回吸入ばく露試験で、区分1相当の0.196 mg/L (4時間換算値: 0.294mg/L) 以上で呼吸異常、運動失調、嗜眠及び死亡例がみられ、死亡動物では肺のうっ血及び相対重量増加が認められたと報告されている (ATSDR (2016)、SIDS (2005)、NITE初期リスク評価書 (2005)、BUA 114 (1993))。
  このうち肺の所見に関しては死亡動物のものであるため分類根拠としなかった。
  したがって区分1 (中枢神経系)、区分3 (麻酔作用) とした。
   なお、ネコでの単回腹腔内投与試験で、本物質60 mg/kg以上で血中メトヘモグロビン量とハインツ小体形成の増加がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 6 (1992)、BUA 12 (1987)) があるが、腹腔内投与のデータであるので分類根拠としなかった。
  また、旧分類が血液系の分類根拠としたICSC(J) の記述は原典が確認できない。
  以上より血液系を標的臓器とするには根拠となる情報が十分でないと判断した。
  旧分類ではラットに本物質を腹腔内投与又は経口投与した試験で、肝臓に広範囲な小葉中心性の出血性壊死がみられたとの記述 (NITE初期リスク評価書 (2005)) に基づいて区分1 (肝臓) としていたが、原典を確認したところ腹腔内投与のデータであったため、分類結果を変更し、肝臓を標的臓器としなかった。
  更に、旧分類は旧分類当時のICSC(J) の記述に基づいて標的臓器に心血管系も分類していたが、ICSC(J) は現在のガイダンスではList 3の情報源であり、他に心血管系への影響を示す情報も得られなかったため、分類結果を変更した。
  
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(血液系、肝臓)
区分2(神経系、腎臓、生殖器 (男性))

危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについて、本物質単独での情報はない。
  なお、ジニトロトルエンはヒトでは主に心臓、血液及び中枢神経系に作用する。
  工場でジニトロトルエンに暴露された労働者で心電図の異常、頻脈がみられ、15 年以上勤務した労働者に虚血性心疾患による死亡率の増加がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。
   実験動物については、イヌを用いた強制経口による13週間反復投与毒性試験において、区分1相当の4 mg/kg/dayで血液系への影響に対する反応性変化 (脾臓の髄外造血の亢進)、区分2相当の20 mg/kg/日以上で強直、痙攣、麻痺、貧血、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、リンパ球の減少、アルカリ性ホスファターゼの増加、ALT活性 と尿素窒素の増加、胆管の上皮の過形成、肝臓の変性・炎症、腎臓の変性・炎症、精巣の萎縮が認められている (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、ATSDR (2016))。
  ラットを用いた混餌による1年間反復投与毒性試験において、区分1相当の7 mg/kg/day以上の群で肝細胞の変性及び空胞化、胆管上皮過形成、ALT活性増加が認められ (環境省リスク評価第9巻 (2011))、13週間反復投与毒性試験 (混餌) では区分2相当の35〜37 mg/kg/day以上でALT活性 の上昇、メトヘモグロビン血症、血小板の増加、脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮が認められている (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、ATSDR (2016))。
  マウスを用いた混餌による13週間反復投与毒性試験では区分2相当の51〜55 mg/kg/day以上で脾臓の髄外造血の亢進、精巣の萎縮、精子形成能の低下、胆管上皮の過形成がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第9巻 (2011)、ATSDR (2016))。
   したがって、区分1 (血液系、肝臓)、区分2 (神経系、腎臓、生殖器 (男性)) とした。
   なお、旧分類は旧分類当時のICSC(J) の記述に基づいて標的臓器に心血管系も分類していたが、ICSC(J) は現在のガイダンスではList 3の情報源であり、他に心血管系への影響を示す情報も得られなかったため、分類結果を変更した。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   デ-タ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
絵表示なし


注意喚起語なし
H401 P273
P501
  甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50 = 5 mg/L(環境省リスク評価第9巻, 2011)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410 P273
P391
P501
  急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.06 mg/L(環境省リスク評価第5巻, 2006、第9巻, 2011、NITE初期リスク評価書, 2005、ECETOC TR91, 2003)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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