項目 | 情報 |
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CAS番号 | 10141-05-6 |
名称 | ビス(硝酸)コバルト(U) |
物質ID | H28-A-053, C-112A |
分類実施年度 | 平成28年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 (危険物/有害物) | 新規分類 |
他年度における分類結果 | |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類できない |
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- | - |
爆発性に関連する原子団 (硝酸塩類) を含むが、データがなく分類できない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
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- | - |
エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 区分外 |
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- | - |
不燃性である (ICSC (J) (2013))。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類できない |
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- | - |
爆発性に関連する原子団 (硝酸塩類)を含むが、データがなく分類できない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 |
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- | - |
不燃性である (ICSC (J) (2013))。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分外 |
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- | - |
不燃性である (ICSC (J) (2013))。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 |
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- | - |
金属 (Co) を含むが、水溶解度について103 g/100 g (R.Lide (2010)) との測定データが得られており、水と急激な反応はしないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない |
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- | - |
硝酸塩であり、酸化性が考えられるが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
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- | - |
無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
|
- | - |
固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分4 |
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H302 |
P264 P270 P301+P312 P330 P501 |
ラットのLD50値 (OECD TG 401) として、434 mg/kg (SIAP (2014)、HSDB (Access on September 2016)) との報告に基づき、区分4とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 |
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- | - |
ウサギの皮膚刺激性試験 (OECD TG 404) において紅斑及び浮腫のスコアが刺激スコアの閾値2.3未満であり、48時間以内に回復していることから刺激性が認められなかったとの記載 (SIAP (2014)) より、区分外とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
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H318 |
P280 P305+P351+P338 P310 |
SIAPには、「可溶性コバルト塩は、コバルトイオンによる生物学的利用能 (急性経口毒性、呼吸器系及び眼刺激性、皮膚感作性、反復投与毒性、発がん性及び生殖) に基づいてヒトの健康に有害である」との記載がある (SIAP (2014))。 また、ウサギの眼刺激性試験 (OECD TG 405) において、不可逆性の影響が認められたとの報告がある。 よって、区分1とした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 区分1A |
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H334 |
P261 P284 P304+P340 P342+P311 P501 |
日本産業衛生学会の許容濃度勧告では、コバルト及びコバルト化合物は気道感作性第1群に指定されている (産衛学会勧告 (2016))。 また、長期間に金属加工業務に従事した作業者で喘息用症状を発症した作業者では、コバルトに対するIgA及びIgE抗体が産生され、コバルトがハプテンとして作用することが明らかにされている (ATSDR (2004))。 以上より、区分1とした。 なお、本物質はEU CLP分類において、「Reps. Sense 1 H334」に分類されている (ECHA C&L Inventory (Access on September 2016))。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1A |
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H317 |
P261 P272 P280 P302+P352 P333+P313 P321 P362+P364 P501 |
日本産業衛生学会の許容濃度勧告では、コバルト及びコバルト化合物は皮膚感作性第1群に指定されている (産衛学会勧告 (2016))。 また、コバルトによりヒトで皮膚炎を起こすとの報告が多数あり、塩化コバルト及び硫酸コバルトは実験動物で皮膚感作性が認められ (ATSDR (2004))、本物質は塩化コバルト及び硫酸コバルトと同様に皮膚感作性を有することが示唆されている (SIAP (2014))。 以上より、区分1Aとした。 なお、本物質はEU CLP分類において、「Skin. Sense 1 H317」に分類されている (ECHA C&L Inventory (Access on September 2016))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
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- | - |
本物質のデータはない。 しかし、In vivoでは、可溶性コバルト化合物(U)の塩化コバルトを用いたマウス骨髄細胞の小核試験、染色体異常試験で陽性の報告がある (ATSDR (2004)、CICAD 69 (2006)、環境省リスク評価書(2013)) ものの、これらのin vivo試験データは信頼性や妥当性が十分ではない。 また、作業者ばく露では、末梢血の有意な小核及びDNA傷害は検出されていないとの報告がある (SIAP (2014))。 In vitroでは、可溶性コバルト化合物(U)は、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の報告、哺乳類培養細胞の小核試験、染色体異常試験、遺伝子突然変異試験で陽性である (ATSDR (2004)、CICAD 69 (2006)、環境省リスク評価書 (2013)、IARC 52 (1991)) が、上記のin vivo小核試験の報告の中で、分離したマウス骨髄細胞を用いて行ったin vitro小核試験ではS9の有無にかかわらず陰性であった。 SIAP (2014) では、可溶性コバルトは変異原性 (突然変異) を細菌、細胞に示さないが、in vitroでは染色体損傷を示し、これは活性酸素種(ROS)によるものと推察され、Weight of evidenceによれば、in vivo染色体損傷試験での陰性知見及びヒト職業ばく露での陰性知見から、in vivoでは保護作用が機能するとしている。 以上より、可溶性コバルト化合物はin vivoでの影響はなく、分類できないとした。 |
6 | 発がん性 | 区分2 |
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H351 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
本物質自体の試験データはないが、硫酸コバルト及びその他のU価の水溶性コバルトに対しIARCがグループ2B (IARC 86 (2006)) に、コバルト及びコバルト化合物に対しNTPがR (NTP RoC (14th, 2016)) に、日本産業衛生学会が第2群B (産衛学会勧告 (2016); 提案年度: 1995年) にそれぞれ分類している。 したがって、本項は区分2とした。 なお、EUは本物質をCarc 1B に分類し、SVHC指定した (ECHA (2011))。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
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H360 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
本物質は水に可溶との情報がある (CICAD 69 (2006))。 本物質自体の生殖影響に関する情報はないが、可溶性コバルト化合物の情報が利用可能と考えられる、すなわち、雄ラットに塩化コバルト六水和物を混餌投与 (265 ppm: 20 mg Co/kg/day) した試験では、35日間投与後に精巣に中等度から重度のうっ血がみられ、70日間投与後には精巣の胚上皮及びセルトリ細胞における退行性ないし壊死性の変性に加えて、精原細胞や精母細胞、精子細胞への著しい影響が認められた (環境省リスク評価第11巻 (2013))。 また、塩化コバルトを雄マウスに12週間飲水投与後に無処置雌と交配させた試験では、200 mg/L 以上で、精巣上体精子数の減少及び生存胎児数の減少、400 mg/L 以上で妊娠動物数の減少 (雄の受胎能低下)、精巣重量の減少、精巣精子数の減少及び精子形成能の低下がみられ、精巣の組織検査ではライディッヒ細胞の肥大、うっ血した血管、精原細胞の変性、精細管及び間質組織の壊死などが認められた (環境省リスク評価書第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。 さらに、硫酸コバルトを妊娠雌ラットに強制経口投与 (妊娠1〜21日) した試験では、母動物毒性発現量 (100 mg/kg/dayで肝臓・副腎・脾臓相対重量の減少) より低い50 mg/kg/dayから、胎児に奇形発生 (頭蓋、脊柱、腎盂、尿細管、卵巣、精巣の奇形) が報告され、妊娠マウスへの経口投与 (妊娠6〜15日) でも 50 mg/kg/day で、胎児の眼瞼、腎臓、頭蓋、脊椎に奇形発生がみられたと報告されている (環境省リスク評価書第11巻 (2013))。 以上、可溶性コバルト化合物では経口経路で雄生殖器官への有害性影響とそれによる受胎能の低下、並びに母動物毒性のない用量で催奇形性を示すことが報告されている。 本物質も可溶性コバルト化合物であり、同様の生殖発生毒性を生じる可能性が十分にあると考えられ、本項は区分1Bとした。 なお、EUは硫酸コバルト、二塩化コバルトなど無機コバルト化合物と共に本物質を Repr. 1Bに分類し、SVHC指定した (ECHA (2011))。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) |
区分2(中枢神経系、消化管) 区分3(気道刺激性) |
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H371 H335 H336 |
P260 P264 P270 P308+P311 P405 P501 P261 P271 P304+P340 P312 P403+P233 |
本物質は水に可溶との情報がある (CICAD 69 (2006))。 本物質及び、他の可溶性コバルト塩である塩化コバルト(U) (CAS番号 7646-79-9)、硫酸コバルト(U) (CAS番号 10124-43-3)、酢酸コバルト(U) (CAS番号 71-48-7) は、ラットの急性経口投与試験で、投与の最高用量 (区分2相当の用量) で鎮静、下痢、死亡前の振戦と痙攣、体温低下、心拍数増加及び立毛を引き起こしたが、主要臓器には肉眼的な変化はみられず、ほとんどの影響は72時間後には消失したとの報告がある (SIAP (2014))。 また、コバルト化合物が、ラットの単回経口投与で体温低下を起こすとの記載 (ATSDR (2004)) があるが、原典の文献 (Speijers et al., Food Chem Toxicol. 20: 311 (1982)) では、本物質の六水和物である硝酸コバルト六水和物 (CAS番号 10026-22-9) を用いたラットの単回経口投与試験で、用量依存的に体温低下が起こり、更に最高用量の2,250 mg/kg (無水物換算値1,413 mg/kg) で鎮静と下痢が認められたと報告されている。 更に塩化コバルト(U) は、ラットの単回経口投与試験において区分1相当の用量で、自発運動低下、筋緊張低下、呼吸数減少、胃腸管への影響が報告されており (ATSDR (2004))、GHS政府モデル分類では区分1 (中枢神経系、消化管) として分類されている (平成27年度)。 以上の情報を総合すると、本物質も他の可溶性コバルト塩と同様に中枢神経系と消化器への影響が考えられる。 SIAP及びATSDRに記載された症状が区分2相当の用量でみられたことから区分2 (中枢神経系、消化管) とした。 更に本物質の粉塵がヒトの鼻と喉を刺激し、吸入すると咳と呼吸困難を起こすとの記載がある (HSDB (Access on September 2016))。 したがって区分2 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性) とした。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) |
区分1(神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系) 区分2(生殖器 (男性)) |
警告 |
H372 H373 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
本物質は水に可溶との情報がある (CICAD 69 (2006))。 本物質についてヒト及び実験動物において関連する情報はない。 可溶性コバルトの情報として、ヒトにおいて、貧血の治療用に塩化コバルト又は硫酸コバルトを投与した際の過剰障害として、神経系 (食欲不振、吐き気、耳鳴り、難聴、神経障害)、甲状腺 (甲状腺腫、甲状腺へのヨウ素の取り込み阻害) への影響、ボランティアに塩化コバルトを経口投与した結果、赤血球系の造血亢進がみられた他、自覚症状として頭痛、腹部不快感の主訴が多かった (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006)) との報告がある。 また、かつてビールの泡の安定化目的で、硫酸コバルトが添加されており、多量にコバルトを含むビールの大量消費者に心筋症による死亡例が報告され、コバルトの心筋障害作用が懸念され (CICAD 69 (2006)、ACGIH (7th, 2001))、コバルトの添加制限を行うことにより、心筋症の発生、それによる死亡例は消失したとされる (環境省リスク評価第11巻 (2013))。 以上より、ヒトでの本物質を含む可溶性コバルト化合物の反復ばく露による標的臓器として、神経系、心血管系、甲状腺、血液系が挙げられる。 実験動物ではラットに塩化コバルトを7ヵ月間強制経口投与した試験において、0.5 mg コバルト/kg/day以上の用量で、赤血球数及びヘモグロビン量の増加が認められている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、ATSDR (2004))。 また、塩化コバルトの6水和物をラットに8週間強制経口投与した試験でも血液影響がみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、ATSDR (2004))。 この他、硫酸コバルト7水和物のラット、又はマウスを用いた13週間、又は2年間吸入ばく露試験において、ラット、マウスともに0.3 mg/m3 (コバルトとして0.11 mg/m3) の低濃度から、呼吸器に炎症性組織変化がみられ、ラット13週間ばく露では、加えて血液影響 (多血症、血小板数減少、網状赤血球数増加) もみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。 この他、雄マウスに塩化コバルトを200〜800 ppmの濃度で12週間飲水投与した試験で、400〜800 ppm (47〜93 mg/kg/day、コバルトとして21〜42 mg/kg/day) (90日間換算値:コバルトとして19.6〜39.2 mg/kg/day) で精巣重量減少、精巣上体精子数の減少、精子形成能の低下、精細管及び間質組織の変性がみられた (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006)) との報告がある。 以上より、実験動物での可溶性コバルト化合物の標的臓器は呼吸器、血液系、精巣と考えられ、精巣は区分2、他は区分1の用量範囲での影響であった。 以上、ヒト及び実験動物での可溶性コバルト化合物の反復ばく露影響に関する情報に基づき、本項は区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系)、区分2 (生殖器 (男性)) とした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分外 |
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- | - |
甲殻類(ブラインシュリンプ)48時間LC50 =172 mg/L(CICAD 69, 2006)であることから、区分外とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 |
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- | - |
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。 難水溶性ではなく(水溶解度=103 g/100g水、R.Lide, 2010)、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | データなし |
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2017/7/25 |