GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 121-75-5
名称 ジチオりん酸O,O-ジメチル-S-1,2-ビス (エトキシカルボニル) エチル (Malathion)
物質ID H28-B-026, C-037B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外
-

-
- -   引火点が163℃ (closed cup) (HSDB (Access on June 2016)) である。
7 可燃性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-

-
- -   水溶解度 (145 mg/L (20℃) (HSDB (Access on June 2016)) との測定結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類できない
-

-
- -   酸素を含む有機化合物であるが、データがなく分類できない。
  
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   鉄その他の金属を侵すとの情報があるが (HSDB (Access on June 2016))、データがなく分類できない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-

-
- -   ラットのLD50値として、1,390 mg/kg (雄)、1,450 mg/kg (雌) (食品安全委員会農薬評価書 (2014))、1,580 mg/kg (雌雄) (JMPR (1997))、4,061 mg/kg (雌) (JMPR (1997))、5,400 mg/kg (雄)、5,700 mg/kg (雌) (EPA RED (2009)、JMPR (1997))、6,156 mg/kg (雄)、8,000 mg/kg (雌雄)、8,210 mg/kg (雄)、8,239 mg/kg (雌) (JMPR (1997)) との10件の報告がある。
  3件が区分4に、7件が区分外に該当することから、件数の最も多い区分外とした。
  ガイダンスの改訂に伴い、区分を見直した。
   なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源として、JMPR、食品安全委員会、EPAのLD50値を優先的に採用した。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-

-
- -   ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (性別不明) (JMPR (1997))、> 2,000 mg/kg (雌雄) (EPA RED (2009))、> 5,000 mg/kg (雌雄) (食品安全委員会農薬評価書 (2014))、> 44,444 mg/kg (雌雄) (JMPR (1997)) の4件の報告に基づき、区分外とした。
   なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源としてJMPR、食品安全委員会、EPAのLD50値を優先的に採用した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外
-

-
- -   ラットのLC50値 (4時間) として、> 5.2 mg/L (雌雄) (JMPR (1997)) の報告に基づき区分外とした。
  なお、この値は飽和蒸気圧濃度 (0.0045 ppm (0.0603 μg/L)) より高いため、ミストの基準値を適用した。
  ガイダンスの改訂に伴い、区分を見直した。
   なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源としてJMPRのLD50値を優先的に採用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-

-
- -   ウサギの皮膚刺激性試験の結果、ごく軽度の紅潮と浮腫が認められ、2日後には正常に回復したとの報告に基づき (JMPR (1997)、EPA RED (2006, 2009)、ACGIH (7th, 2003)、PATTY (6th, 2012))、区分外 (国連分類基準の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
絵表示なし


警告
H320 P264
P305+P351+P338
P337+P313
  ウサギでの眼刺激性試験では、結膜にごく軽度〜軽度の刺激性が認められたが2日後には回復し、角膜及び虹彩には変化が無かったとの報告に基づき (JMPR (1997)、EPA RED (2006, 2009)、ACGIH (7th, 2003)、PATTY (6th, 2012))、区分2Bとした。
  ガイダンスに従い、区分を変更した。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1

警告
H317 P261
P272
P280
P302+P352
P333+P313
P321
P362+P364
P501
  モルモットを用いた皮膚感作性試験では、皮膚感作性が認められなかったとの報告 (JMPR (1997)、EPA RED (2006, 2009)、ACGIH (7th, 2003)、PATTY (6th, 2012)) や、認められたとの報告 (食品安全委員会農薬評価書 (2014)) があるが、ヒトで本物質ばく露によりアレルギー性接触感作性が報告されたとの記載から (IPCS, PIM 001 (1989))、区分1とした。
   
5 生殖細胞変異原性 区分2

警告
H341 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの精原細胞、精母細胞を用いた染色体異常試験で陽性、陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性、陰性、マウスの骨髄細胞、脾臓細胞、ラットの骨髄細胞、シリアンハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性、陰性、マウスの骨髄細胞、脾臓細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性、ラットの肝臓、腎臓等を用いたコメットアッセイで陽性、ラット肝不定期DNA合成試験で陰性である (JMPR (1997)、IARC 112 (2015)、ATSDR (2003))が、マウスの精原細胞、精母細胞を用いた染色体異常試験での陽性知見は、優性致死試験及び精原細胞を用いた染色体異常試験での陰性知見とのweight of evidenceから明確な知見とはいえない。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験では多くが陰性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で多くが陽性の結果である (JMPR (1997)、ATSDR (2003)、IARC 112 (2015))。
  以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 区分1B

危険
H350 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  IARCの最新の評価ではヒトでは本物質ばく露と非ホジキンリンパ腫及び前立腺がんとの間で正の相関がみられ、ヒトで発がん性の限定的な証拠があるとしている (IARC 112 (2015))。
  実験動物ではマウスに混餌投与した2つの発がん性試験において、肝細胞腺腫、及び肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加 (1件は雄のみ、他1件は雌雄で増加) が認められ、ラットに混餌投与した1試験でも、同様に雌に肝臓腫瘍の発生頻度の増加が認められた。
  この他、ラットの発がん性試験で副腎の褐色細胞腫や乳腺腫瘍の増加の報告もあり、IARCは実験動物では本物質暴露による発がん性の十分な証拠があると結論した (IARC 112 (2015))。
  以上より、IARCは本物質の発がん性をグループ2Aに分類した (IARC 112 (2015))。
  他機関による分類結果として、先にACGIHがA4に (ACGIH (7th, 2003))、EPAがS (suggestive evidence of carcinogenicity: 区分2に該当) に分類した (EPA RED (2009)) 経緯がある。
  以上、IARCの最新評価を踏まえて本項は区分1Bとした。
7 生殖毒性 区分外
-

-
- -   本物質の散布が妊婦に与える影響を調べた疫学研究では本物質ばく露と自然流産、子宮内成長遅延、死産、先天性異常との関係はみられなかったとの記述がある (ACGIH (7th, 2003))。
   実験動物ではラットを用いた混餌投与による2世代繁殖毒性試験では親世代に影響はなく、F1、F2児動物で軽微な影響 (離乳時の体重低値) のみであった (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。
  また、ラット3世代繁殖毒性試験 (混餌投与) ではF0親動物高用量群で呼吸困難、死亡、交配時低体重など一般毒性と受胎率、出産率の低下がみられたが、F1児動物には軽微な影響 (離乳時の体重低値) がみられたのみで、F1、及びF2世代でも親動物よりも児動物のほうが影響が小さい傾向がみられた (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。
  一方、妊娠ラット又は妊娠ウサギを用いた発生毒性試験 (強制経口、ラット:妊娠6〜15日、ウサギ: 妊娠6〜18日) では母動物毒性として体重増加抑制がみられる用量においても胎児に毒性所見はみられなかった (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、JMPR (2003))。
  さらに、妊娠ラットに妊娠6日〜分娩後10日まで、児動物に生後11〜21日まで直接強制経口投与した発達神経毒性試験において、母動物に影響はなく、児動物に生後11〜21日まで振戦及び活動性低下、生後 11 日に立ち直り反応の遅延がみられたが、これらは児動物への直接作用によるもので発達神経毒性はないと結論された (食品安全委員会農薬評価書 (2014)、JMPR (2003))。
  以上の知見を基に、本項は区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系)

危険
H370 P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
  ヒトでの本物質の中毒例は主に自殺企図又は誤飲によるが、その症状としては、頭痛、流涙、流涎、発汗、頻脈、呼吸困難、嘔吐及び痙攣、意識混濁、全身性線維性収縮が報告されている (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989)、ACGIH (7th, 2001))。
  動物実験ではマウスを用いた経口ばく露による急性毒性試験で、区分2のガイダンス値範囲内の用量で警戒性の低下、受動性亢進、腹臥位、四肢姿勢異常、流涎、触覚反応抑制、立ち直り反射抑制、下痢、体温下降、反応性 (運動量) 減少及び自発運動抑制、位置視覚異常、痛覚反応抑制、振戦、攣縮、躯体緊張低下、四肢筋緊張低下、握力低下、耳介及び角膜反射抑制、チアノーゼ及び呼吸数減少などの症状が報告されている (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。
  以上より区分1 (神経系) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系)

危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては、5人の男性に本物質8、16、24 mg/day (0.11、0.23、0.34 mg/kg/day) を32、47、56日間経口投与した実験的研究において、明らかな臨床所見やコリン作動性所見は認められていないが、24 mg/day群で血漿中及び赤血球中コリンエステラーゼ活性が投与開始前の約20%抑制されたことが報告されている (ACGIH (7th, 2003))。
   実験動物では、神経系への影響は区分2あるいは区分外の範囲でみられており、ラットを用いた混餌投与による2年間反復投与毒性試験において、区分2に相当する1,000 ppm (50 mg/kg/day) で、体重増加抑制、赤血球アセチルコリンエステラーゼ活性阻害 (20%以上) がみられた (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。
   なお、ラットを用いた混餌投与による103週間発がん性試験において、区分2の上限である 2,000 ppm (100 mg/kg/day) の雄で、胃の慢性潰瘍、雌で肝臓の脂肪変性及び腎臓の慢性炎症がみられたとの報告がある (食品安全委員会農薬評価書 (2014))。
  しかし、このデータについて食品安全委員会は不十分なデータであり参考程度の資料としていることから採用しなかった。
   したがって、区分1 (神経系) とした。
  
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400 P273
P391
P501
  甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 1.0 ppb(U.S.EPA: RED, 2006, 2009)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410 P273
P391
P501
  慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:22%(既存点検, 2002))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.06 ppb(U.S.EPA: RED, 2006, 2009)であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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