項目 | 情報 |
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CAS番号 | 56-38-2 |
名称 | パラチオン |
物質ID | H28-B-027, C-038B |
分類実施年度 | 平成28年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 (危険物/有害物) | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類できない |
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- | - | 爆発性に関連する原子団 (N-O基) を含むが、データがなく分類できない |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
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- | - |
エアゾール製品ではない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分外 |
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- | - |
引火点が120℃ (ICSC (2004)) である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類できない |
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- | - | 爆発性に関連する原子団 (N-O基) を含むが、データがなく分類できない |
9 | 自然発火性液体 | 分類できない |
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- | - |
データがなく分類できない。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
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- | - |
液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 |
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- | - |
水溶解度 (0.002 g/100 mL (25℃) (ICSC (2004)) との測定結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類できない |
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- | - |
酸素を含む有機化合物であるが、データがなく分類できない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
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- | - |
分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
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- | - |
データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分2 |
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H300 |
P264 P270 P301+P310 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、2、2.6、6.85、7、13.7、22 mg/kg の6件の報告がある。 2件が区分1に (JMPR (1995))、4件が区分2に該当する (JMPR (1995)) ことから、件数の最も多い区分2とした。 なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源としてJMPRのLD50値を優先的に採用した。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分2 |
|
H310 |
P262 P264 P270 P280 P302+P352 P310 P321 P361+P364 P405 P501 |
ラットのLD50値として、73 mg/kg (雌雄) (JMPR (1995)) の報告に基づき区分2とした。 ガイダンスの改訂に伴い、区分を見直した。 なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源としてJMPRのLD50値を優先的に採用した。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義による液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分1 |
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H330 |
P260 P271 P284 P304+P340 P310 P320 P403+P233 P405 P501 |
ラットのLC50値 (4時間) として、0.03 mg/L (雌雄) (JMPR (1995)、32〜84 mg/m3 (雌雄不明) (ACGIH (7th, 2003))、84 mg/m3 (雄) (ATSDR (2014)、24 mg/L (雌) (JMPR (1995)、77〜91 mg/L (雄) (JMPR (1995)) の5件の報告がある。 1件が区分1に、1件が区分1〜区分2に、1件が区分2に、2件が区分外に該当することから、有害性の高い区分を採用し区分1とした。 なお、この値は飽和蒸気圧濃度 (0.00897 ppm (0.00011 mg/L)) より高いため、ミストの基準値を適用した。 ガイダンスの改訂に伴い、区分を見直した。 なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源として、JMPR、ACGIH、ATSDRのLD50値を優先的に採用した。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 |
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- | - |
ウサギの皮膚刺激性試験 (2試験) では、ごく軽度〜軽度の刺激性 (紅斑、浮腫) が認められたが、72時間後には回復した (いずれもJMPR (1995)) ことから、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B |
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H320 |
P264 P305+P351+P338 P337+P313 |
本物質をウサギの眼に適用した試験において刺激性がみられたとの報告 (JMPR (1995)) に基づき、区分2Bとした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 なお、モルモットのマキシマイゼーション法 (Magnusson-Kliegman法) で、感作性は認められなかったとの報告がある (ACGIH (7th, 2016)、JMPR (1995)) が、試験方法等詳細について不明であるため、分類に用いるには不十分なデータと判断した。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
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- | - |
ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。 すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験、マウスの精原細胞を用いた染色体異常試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、染色体異常試験でいずれも陰性である (JMPR (1995)、ATSDR (2014))。 In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性である (JMPR (1995)、ATSDR (2014))。 |
6 | 発がん性 | 区分2 |
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H351 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
ヒトの情報はない。 実験動物ではラットに46週間又は67週間混餌投与した試験において、副腎皮質の腺腫/がんが雌雄に (ACGIH (7th, 2003)、IRIS (1988))、また甲状腺濾胞腺腫と膵島細胞がんの増加傾向が雄に認められ (IRIS (1988))、EPAはこれを根拠にグループC (possible human carcinogen: 区分2相当) に分類した (IRIS (1988))。 一方、ACGIHはIARCがこの試験は投与期間が短く、他のラット、マウスの混餌投与試験で投与に関連した腫瘍発生頻度の増加がみられていないことから、本物質の実験動物での発がん性は評価できないと結論した (IARC 30 (1983)) ことを引用して、A4に分類した (ACGIH (7th, 2003))。 しかし、IARCは最新の発がん性評価で本物質の実験動物での発がん性の証拠は十分であると結論し、グループ2Bへと分類を変更した (IARC 112 (in prep., Access on June 2015))。 以上、本物質の既存分類結果の経緯を踏まえ、本項は区分2とした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 |
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H361 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
ラットを用いた経口経路 (混餌) による3つの生殖毒性試験のうち、1つはF0、F1雌親動物に振戦が、他の1つはF0、F1親動物に血漿・赤血球・脳内コリンエステラーゼ活性の減少がみられる用量まで投与されたが、児動物には軽微な影響 (哺育期間中、又は離乳時の体重低値) がみられたに過ぎない (JMPR (1995)、ACGIH (7th, 2003))。 しかし、他の1試験では親動物には20 ppm まで毒性所見は認められなかったが、20 ppm 群では妊娠動物数の減少 (3/6例)、10 及び 20 ppm でF1出生児の生後死亡率の高値が認められた (Barnes & Denz (1951)、IARC 30 (1983)、ACGIH (7th, 2003))。 一方、妊娠ラット及び妊娠ウサギを用いた器官形成期強制経口投与による発生毒性試験ではラット、ウサギとも死亡例、体重増加抑制が発現する高用量においても胎児に有意な毒性所見はみられなかった (JMPR (1995)、ACGIH (7th, 2003))。 以上、ラット混餌投与による3つの生殖毒性試験のうち、1試験で親動物に毒性症状が発現しない用量で妊娠率低下、出生児の生後死亡率の高値が認められた。 しかし、他の2試験では親動物の一般毒性影響で児動物に軽微な影響がみられたのみであったことから、本項は区分2が妥当と判断した。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(神経系) |
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H370 |
P260 P264 P270 P308+P311 P321 P405 P501 |
本物質の急性中毒は神経末端のアセチルコリンエステラーゼの阻害によるものである。 ヒトでは頭痛、めまい、吐き気、腹痛などの初期症状の後に、瞳孔収縮、筋肉収縮、流涙、流涎、腸過敏症、さらに霞み目や目の痛みが生じ、反射と括約筋調節の消失、痙攣、昏睡が起こり、主に呼吸不全の結果、死に至る (IARC 30 (1983)、ACGIH (7th, 2003))。 急性中毒症状から回復したヒトの一部は約2日後に呼吸不全、重度の眼震、肢の筋肉の弱り、腱反射低下などの"intermediate syndrome"の症状が起こり、これらの症状は約3週間続くとの報告がある (ACGIH (7th, 2003))。 実験動物ではラットにおいて区分1ガイダンス値相当の用量にてコリンエステラーゼ活性の低下、振戦、運動失調症が報告されている (ACGIH (7th, 2003))。 以上より区分1 (神経系) とした。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系、視覚器) |
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H372 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトについては、農場でパラチオンの噴霧を行う作業者の赤血球中コリンエステラーゼ活性が基準の 30〜50%であったとの報告がある (ACGIH (7th, 2003))。 実験動物では、マウスを用いた混餌による29日間反復経口投与毒性試験において、区分1相当である 100 ppm (4.8 mg/kg/day) で神経系への影響 (振戦、活動性低下)、200 ppm (9.7 mg/kg/day) で胃への影響 (びらん)、ラットを用いた混餌投与による28ヵ月間反復投与毒性試験において、区分1に相当する50 ppm (2.5 mg/kg/day) で脳中コリンエステラーゼ (ChE) 活性の抑制 (雄で対照群の22%、雌で18%)、雌で振戦、異常歩行等、網膜の変性、雄で近位坐骨神経の髄鞘の変性や脱髄等で特徴付けられる神経障害がみられ、ラットを用いた混餌による2年間反復投与毒性試験において、区分1相当である8 ppm (0.4 mg/kg/day) で赤血球中、血漿中ChE活性の抑制 (対照群の > 20%)、32 ppm (1.6 mg/kg/day) でさらに脳中ChE活性の抑制、一般状態の悪化、色素涙、振戦、斜頸 (症状は有意差なし)、網膜の構造の変性と萎縮が報告されている。 このほか、ラットを用いた混餌による3ヵ月間反復投与毒性試験、マウスを用いた混餌投与による18ヵ月間反復投与毒性試験においても区分1範囲で赤血球中・脳中・血漿中コリンエステラーゼ活性の抑制が報告されている (JMPR (1995))。 胃については刺激性が原因と考えられることから標的臓器としなかった。 したがって、区分1 (神経系、視覚器) とした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 なお、HSDB (Access on May 2016) に収載された数値データ (粘性率: 15.30 mPa・s (25℃)、密度 (比重): 1.26 (25/4℃)) より、動粘性率は12.2 mm2/sec (25/25℃) と算出される。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 |
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H400 |
P273 P391 P501 |
甲殻類(ヨコエビ)48時間LC50 = 0.0009 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 |
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H410 |
P273 P391 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(易分解性:なし(SRC: BioWin V4.10))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC(致死) = 0.000125 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BIOWIN)、魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.5 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1となる。 以上の結果から、区分1とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | データなし |
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。 また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。 * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。 * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。 ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。 他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
2017/7/25 |