GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 50-29-3
名称 1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス (4-クロロフェニル) エタン (DDT)
物質ID H28-B-029, C-040B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成26年度   平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
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物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   融点が140℃以下の固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- -   フッ素を含まず、塩素及び酸素を含む有機化合物であるが、この塩素、酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3

危険
H301 P264
P270
P301+P310
P321
P330
P405
P501
  ラットのLD50値として、250 mg/kg (JMPR (1967)、ACGIH (2001)) に基づき、区分3とした。
  ガイダンスの改訂に伴い、区分を見直した。
   なお、本物質は専門家判断に基づき、情報源としてJMPR、ACGIHのLD50値を優先的に採用した。
1 急性毒性(経皮) 区分3

危険
H311 P280
P302+P352
P312
P321
P361+P364
P405
P501
  ラットのLD50値として、1,000 mg/kg (IPCS, PIM 127 (1992))、1,931 mg/kg (HSDB (Access on June 2016))、2,500 mg/kg (環境リスク初期評価第1巻 (2002)、ACGIH (7th, 2001))、250 mg/kg〜3,000 mg/kg (PIM (1992)) の4件の報告があり、1件は区分3に、1件は区分4に、1件は区分外 (国連分類基準の区分5) に、1件は区分3〜区分外に該当する。
   ウサギのLD50値として、300 mg/kg (ATSDR (2002)、HSDB (Access on June 2016)) の報告があり、区分3に該当する。
   件数の最も多い区分3とした。
  
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-

-
- -   ボランティアの経皮ばく露 (EHC 9 (1979))、ヒトの皮膚ばく露 (IPCS, PIM 127 (1992))、本物質取扱い作業者 (ATSDR (2002))において、ごく一部で軽度の皮膚刺激性が認められた以外に皮膚への傷害性を示唆する所見はなかったことから、区分外とした。
  なお、旧分類で採用したウサギの情報 (PATTY (4th, 1994)) は、最新版 (PATTY (6th, 2012)) では確認できなかった。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
絵表示なし


警告
H320 P264
P305+P351+P338
P337+P313
  ヒトにおいて、DDTを含む粉末が眼に入ると稀に眼刺激性が認められることがあり (IPCS, PIM 127 (1992))、また、DDTに暴露したヒトでは、DDTが眼に接触したことによる軽度の眼刺激性が認められた (ATSDR (2002)) ことから、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分1B

危険
H340 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  In vivoでは、ラットの優性致死試験で陽性、マウスの優性致死試験で陽性、陰性、マウススポット試験で陰性、マウスの精母細胞を用いる染色体異常試験で陽性、ラットの骨髄細胞を用いる染色体異常試験で陰性、マウスの骨髄細胞、脾臓細胞を用いる染色体異常試験で陽性、ラットの肝臓を用いるDNA損傷試験で陽性である (ATSDR (2002)、EHC 9 (1979)、IARC 53 (1991)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、JMPR (2000))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験で陽性、陰性、染色体異常試験で陽性、陰性である (ATSDR (2002)、IARC 53 (1991)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、EPA Summary (1987))。
  以上より、ガンダンスに従い区分1Bとした。
6 発がん性 区分1B

危険
H350 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  IARCは最新の評価において、本物質の発がん性はヒトでの限定的な証拠と実験動物での十分な証拠に基づき、分類区分を従来のグループ2B (IARC Suppl. 7 (1987)) から2Aに引き上げた (IARC 113 (in prep., Access on June 2016)、IARC Press Release No. 236 (Access on June 2016))。
  すなわち、疫学研究ではDDTへのばく露と非ホジキンリンパ腫、精巣がん、及び肝がんとの間で正の相関がみられたとしており (IARC Press Release No. 236 (Access on June 2016))、実験動物ではラット、マウスに経口投与した試験で肝臓腫瘍の増加が、マウスではさらに肺がん、悪性リンパ腫の頻度増加も報告されている (IARC 53 (1991))。
  以上より、本項は区分1Bとした。
   なお、他機関による分類結果としては、ACGIHがA3 (confirmed animal carcinogen: 区分2相当) (ACGIH (7th, 2001))、EPAがB2 (possible human carcinogen: 区分1B相当) (IRIS (1987))、NTPがR (NTP RoC (13th, 2014)) に分類している。
7 生殖毒性 区分1B

危険
H360 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ヒトでは本物質及びその代謝物の血中及び胎盤中レベルと早産や自然流産との関連性、母乳中DDE (本物質の主代謝物) レベルと乳児の反射低下との関連性 (PATTY (6th, 2012))、母乳中高本物質及びDDEレベル (他物質も検出) と先天性甲状腺機能低下症との関連性 (EHC 241 (2011)) などが報告されているが、いずれも確定的な知見とは言えない。
   実験動物では多世代試験においてマウスで児動物の死亡率増加 (33 mg/kg/day)、イヌ児動物で性成熟 (思春期) 早期化 (10 mg/kg/day) がみられたとの記述、本物質にばく露された雄児動物で雄の生殖機能及びホルモンレベルへの悪影響がみられた (50 mg/kg/day以上、10日間) との記述、本物質はエストロゲン受容体に対する弱アゴニスト作用、代謝物のDDEはアンドロゲン受容体に対するアンタゴニスト作用を有し、DDEを妊娠期、授乳期に投与した多くの試験で、雄児に抗アンドロゲン作用 (前立腺・精嚢など副生殖器官重量の減少など) が認められたとの記述がある (EHC 241 (2011))。
  さらに、新生児マウスに対して生後10日に本物質を強制経口投与した結果、大脳皮質のアセチルコリン受容体密度の変化、自発運動量の増加、環境への馴化能の低下など神経発達毒性がみられたとの記述がある (EHC 241 (2011))。
   以上、ヒトの生殖能への影響は明らかでないが、実験動物では、内分泌系や神経系等において発生影響が生じることが明らかである。
  よって、本項は区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系)

危険
H370 P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
  ヒトでは事故又は自殺企図による本物質の摂取による急性毒性は、頭痛、めまい等で始まり、吐き気、嘔吐、下痢等がみられ、多量摂取時には、振戦、痙攣、意識消失が特徴的である。
  また、発汗、気管内分泌物の増加、体温上昇、呼吸困難が生じ、呼吸麻痺や心室細動で死亡することがある (環境省リスク評価第1巻 (2002)、IARC 53 (1991)、ACGIH (7th, 2001))。
  したがって区分1 (神経系) とした。
  なお、旧分類では実験動物で区分1のガイダンス値範囲内の用量の経口摂取により、肝臓への影響が認められたとの報告 (ATSDR (2002)) に基づいて区分1 (肝臓) としていたが、影響が肝臓機能障害の指標となる酵素活性の上昇のみであったため、分類を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、免疫系)
区分2(神経系、内分泌系)

危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては、影響を示す報告はない。
  25 年間にわたり平均 0.25 mg/kg/day のばく露を受けた労働者に肝機能障害などの有害な影響は認められなかったとの報告 (JMPR (1984)、環境省リスク評価第1巻 (2002))、0.05〜0.25 mg/kg/day のばく露を受けた労働者の肝機能に影響がなかったとの報告、ボランティアに 0.31〜0.61 mg/kg/dayを21ヵ月間摂食させた結果、神経系への影響がみられなかったとの報告がある (JMPR (2000))。
   実験動物については、ラットを用いた混餌投与による14日間反復投与毒性試験において、区分1相当である 12mg/kg/day (90日間換算値:1.9 mg/kg/day) で肝臓への影響 (細胞質の空胞化、細胞壊死)がみられ (JMPR (2000))、ラットを用いた混餌投与による27週間反復投与毒性試験において、区分1相当の 5 ppm (0.25 mg/kg/day) で肝障害 (肝肥大、好酸、好塩基性顆粒の増加) がみられ (環境省リスク評価第1巻 (2002)、PATTY (6th, 2012)、ATSDR (2002))、ラットを用いた混餌投与による78週間反復投与毒性試験において、区分2相当の 210 ppm (10.5 mg/kg/day) で神経系への影響 (振戦)がみられている (NTP TR 131 (1978))。
  マウスを用いた混餌投与による12週間反復投与により免疫毒性を調べた試験において、区分1相当の 7.5 mg/kg/day で免疫系への影響 (脾臓及び肝臓重量変化、体液性免疫反応の抑制)がみられ、ラットを用いた混餌投与による22週間反復投与による免疫毒性試験においても区分1相当である 50 ppm (2.5 mg/kg/day) 以上で細胞性免疫及び体液性免疫の抑制がみられている (JMPR (2000)、IARC 53 (1991))。
  サルを用いた130ヵ月間反復経口投与毒性試験において、区分2相当である 20 mg/kg/day で肝臓への影響 (脂肪化)、神経系への影響 (振戦、中枢神経系及び脊髄の組織学的異常)、内分泌系への影響 (エストロゲン様作用と考えられる子宮筋腫、乳腺の腺管内過形成) がみられている (JMPR (2000))。
   したがって、区分1 (肝臓、免疫系)、区分2 (神経系、内分泌系)とした。
   なお、旧分類では区分1のガイダンス値範囲をやや超える用量で認められた神経系の影響を区分1としていたが、本評価では区分2とした。
  また、新たな情報源を追加したため分類が変更となった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400 P273
P391
P501
  魚類(ボラ)による96時間LC50=0.00026 mg/L (環境省リスク評価第1巻, 2002) であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410 P273
P391
P501
  慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:0%(既存点検, 1981))、魚類(ファットヘッドミノー)の266日間NOEC(繁殖) = 0.0004 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1となる。
   慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:0%(既存点検, 1981))、甲殻類(ミジンコ)の48時間LC50 = 0.00036 mg/L(EHC 83, 1989)であることから、区分1となる。
   以上の結果から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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