項目 | 情報 |
---|---|
CAS番号 | 302-01-2 |
名称 | ヒドラジン |
物質ID | H28-B-032, C-043B |
分類実施年度 | 平成28年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 (危険物/有害物) | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
---|---|
分類に使用したガイダンス(外部リンク) | GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 区分外 |
|
- | - |
爆発性に関わる原子団 (隣接した窒素原子) を含み、データはないが、国連分類 UN 2029、クラス8、副次3および6.1、PGTであり、クラス3が付されていることから、優先評価項目の爆発物には該当しない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
|
- | - |
エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分3 |
|
H226 |
P210 P233 P240 P241 P242 P243 P280 P303+P361+P353 P370+P378 P403+P235 P501 |
引火点は40℃ (密閉式) (ICSC(J) (2009)) であることから、区分3とした。 国連分類UN2029、クラス8、副次3および6.1、PGTである。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | タイプG |
|
- | - |
爆発性に関わる原子団(隣接した窒素原子)を含み、データはないが、国連分類 UN 2029、クラス8、副次3および6.1、PGTであり、クラス3が付されていることから、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類できない |
|
- | - |
データがなく分類できない。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
|
- | - |
液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 |
|
- | - |
金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
|
- | - |
酸素、ハロゲンを含まない無機物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
|
- | - |
無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
|
- | - |
データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
|
H301 |
P264 P270 P301+P310 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、60 mg/kg (環境省リスク評価第1巻 (2002)、産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol.1 (1992)、PATTY (6th, 2012)、BUA 205 (1996))、90 mg/kg (BUA 205 (1996))、60〜90 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)) の3件の報告がある。 これらに基づき、区分3とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分2 |
|
H310 |
P262 P264 P270 P280 P302+P352 P310 P321 P361+P364 P405 P501 |
ウサギのLD50値として、91 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第1巻 (2002)、DFGOT vol.1 (1992))、93 mg/kg (産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1998)、ATSDR (1997)、EHC 68 (1987))、91〜283 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の3件の報告がある。 2件が区分2に、1件が区分2〜区分3に該当することから、件数の最も多い区分2とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
|
- | - |
GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分3 |
|
H331 |
P261 P271 P304+P340 P311 P321 P403+P233 P405 P501 |
ラットのLC50値 (4時間) として、570 ppm (環境省リスク評価第1巻 (2002)、産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1998)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1997)、EHC 68 (1987)、DFGOT vol.1 (1992)) との報告に基づき、区分3とした。 なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (19,005 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
|
- | - |
データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 |
|
H314 |
P260 P264 P280 P301+P330+P331 P303+P361+P353 P363 P304+P340 P310 P321 P305+P351+P338 P405 P501 |
ウサギの皮膚刺激性試験 (4時間適用) で適用部位に刺激性が認められ (NITE初期リスク評価書 (2005))、ウサギを含む各種の動物試験 (イヌ、モルモット) で重度の刺激性がある (ACGIH (2001)、PATTY (6th, 2012))。 また、ヒトにおいても皮膚刺激性が報告されていることから (EHC 68 (1987)、ACGIH (2001)、PATTY (6th, 2012))、区分1とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
|
H318 |
P280 P305+P351+P338 P310 |
ウサギの眼刺激性試験で重度の眼の損傷がみられ (NITE初期リスク評価書 (2015))、また、眼の高度ないし重度の刺激性が報告されている (DFGOT vol. 1 (1992)、PATTY (6th, 2012))。 ヒトでも眼の刺激性が知られていることから (EHC 68 (1987)、ACGIH (2001)、PATTY (6th, 2012))、区分1とした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
|
- | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
|
H317 |
P261 P272 P280 P302+P352 P333+P313 P321 P362+P364 P501 |
産業衛生学会勧告 (2015年) で皮膚感作性物質第1類に分類され、ヒトにおいてアレルギー性接触皮膚炎が認められたことから (EHC 68 (1987)、DFGOT (1999)、ACGIH (2001)、PATTY (6th, 2012))、区分1とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分2 |
|
H341 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウス精子の不定期DNA合成試験で陰性、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性、マウス肝臓、肺のDNA損傷試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 68 (1987)、IARC 71 (1999)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、ATSDR (1997))。 In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で多くの陽性結果が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 71 (1999)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、EHC 68 (1987)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1997))。 以上より、ガイダンスに従い区分2とした。 |
6 | 発がん性 | 区分1B |
|
H350 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
ヒトでは小さな集団の疫学研究のみで腫瘍発生の増加の報告はないが、実験動物ではラット又はハムスターへの経口 (飲水) 投与で肝臓腫瘍の増加、ラットの吸入ばく露で鼻腔のポリープ様腺腫の増加の報告がある (IARC 71 (1999))。 当初、IARCはヒドラジンの発がん性はヒトで不十分な証拠、実験動物で十分な証拠があるとしてグループ2Bに分類していたが、最近グループ2Aに引き上げた (IARC 115 (in prep., Access on June 2016))。 他機関による分類結果としては、EPAがB2 (probable human carcinogen: 区分1B相当) に (IRIS (1988))、NTPがRに (NTP RoC (13th, 2014))、EUが Carc. 1B に (ECHA (2011))、ACGIHがA3 に (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会が第2群Bに (産衛学会勧告 (2015))、それぞれ分類している。 よって、本項は区分1Bとした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 |
|
H361 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
ヒトの情報はない。 実験動物では本物質をラットに 6ヵ月間経口 (飲水) 又は4ヵ月吸入ばく露した試験で胚毒性 (生存胚の減少、吸収胚の増加) がみられたとの記述 (NITE初期リスク評価書 (2005))、本物質塩酸塩を妊娠ラットに妊娠期間中経口投与 (8 mg/kg/day) した結果、母動物に体重増加抑制、死亡例がみられる用量で胎児毒性 (体重の減少、蒼白化及び浮腫) がみられたとの記述 (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))、本物質を妊娠ラットに経口投与 (妊娠6〜15日、5及び10 mg/kg/day) した結果、母動物毒性のみられる用量で胎児毒性として発生遅延がみられたとの記述がある (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。 なお、ラット、又はマウスに腹腔内投与した試験では胎児に奇形発生 (肋骨癒合、水腎症、外脳症など) の頻度増加を認めたとの報告もある (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2001)) が、上記のごとく、経口又は吸入経路での試験では概ね母動物毒性のみられる用量で胚/胎児毒性がみられたものの、奇形発生の増加はみられていない。 よって、本項は区分2とした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) |
区分1(中枢神経系、肝臓) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) |
警告 |
H370 H335 H336 |
P260 P264 P270 P308+P311 P321 P405 P501 P261 P271 P304+P340 P312 P403+P233 |
ヒトでは事故による本物質の経口摂取で、嘔吐、神経症状 (錯乱、運動失調など) 及び肝毒性関連酵素 (AST、LDH) 値の大幅な上昇がみられた (EHC 68 (1987)、DFGOT vol. 1 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 また、嗜眠がみられた (EHC 68 (1987)、DFGOT vol. 1 (1992))。 さらに事故による本物質蒸気の吸入ばく露で、吐き気、嘔吐、上部気道の局所刺激、肝毒性関連酵素値の大幅な上昇がみられた (DFGOT vol. 1 (1992)、NITE初期リスク評価書 (2005))。 以上より区分1 (中枢神経系、肝臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。 なお、投与量の詳細な記載はないが、実験動物において本物質の急性毒性症状は、経口投与、非経口的投与で大差なく、運動失調、活動性低下、呼吸困難、興奮性の亢進、流涎、嘔吐及び痙攣がみられたとの記載がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系、呼吸器、心臓、肝臓、生殖器) |
|
H372 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトにおいては、38歳の水処理技師の男性 (ばく露濃度は不明だが臭気が感じられたことから 3〜4 mg/m3と推定されている) で継続的な神経行動的異常が認められたとの報告がある。 本症例では無水ヒドラジン及びヒドラジン1水和物による経気道暴露と経皮吸収もあったと考えられている (産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1998))。 実験動物では、ラット、ハムスター、イヌを用いた12ヵ月間吸入ばく露毒性試験が行われており、ラットでは区分1の範囲である0.066 mg/m3以上で呼吸器への影響 (喉頭と気管粘膜上皮の扁平上皮化生と炎症、肺上皮過形成等)、1.33 mg/m3 以上の雌で肝臓への影響 (肝細胞過形成)、雄で心臓への影響 (心筋変性)、6.65 mg/m3 で、精巣への影響 (精巣ライディッヒ細胞過形成)、子宮への影響 (子宮内膜過形成、子宮内膜炎)、卵巣への影響 (卵巣萎縮、卵管炎) がみられ、ハムスターでは区分1の範囲である0.33 mg/m3 以上でヘモジデリン沈着 (肝臓)、精巣萎縮がみられ、イヌでは、区分1相当である 1.33 mg/m3 で肝臓への影響 (ALT 増加と肝細胞空胞化) がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。 なお、旧分類では水和物のデータも含めて分類していたが、無水物に限定して分類を行ったため分類結果が異なった。 したがって、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心臓、肝臓、生殖器) とした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
|
- | - |
データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 |
|
H400 |
P273 P391 P501 |
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)72時間EC50 = 0.006 mg/L(環境省リスク評価第1巻, 2002)であることから、区分1とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 |
|
H410 |
P273 P391 P501 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:2%(既存点検, 1992))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC = 0.001 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)であることから、区分1となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:2%(既存点検, 1992))、甲殻類(ヨコエビ)の48時間LC50 (止水) = 0.04 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第1巻, 2002)であることから、区分1となる。 以上の結果から、区分1とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
|
- | - | データなし |
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。 また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。 * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。 * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。 ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。 他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
2017/7/25 |