GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 7580-67-8
名称 水素化リチウム
物質ID H28-B-036, C-047B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   引火性との記載がある (ICSC(J) (2014)) が、データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-

-
- -   発火点は200℃ (ICSC(J) (2014)) であり常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分1

危険
H260 P223
P231+P232
P280
P335+P334
P370+P378
P402+P404
P501
  水と激しく反応する (ICSC(J) (2014)) との記載がある。
  国連分類UN1414 クラス4.3 PGTにより区分1に分類した。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外
-

-
- -   強還元剤であり、酸化剤と激しく反応する (ICSC(J) (2014)) との記載がある。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、ラットのLD50値として、77.5 mg/kg (RTECS) との報告があるが、List 3の情報源であり、原著不明のため、この値のみでは分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分3

危険
H331 P261
P271
P304+P340
P311
P321
P403+P233
P405
P501
  ラットのLC50値 (4時間) として、960 mg/m3 (換算値:0.96 mg/L) (雌雄) (ACGIH (7th, 2015))、1,800 mg/m3 (換算値:1.80 mg/L) (雌雄) (ACGIH (7th, 2015)) の2件の報告がある。
  1件は区分3に該当し、1件は区分4に該当する。
  有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
  なお、旧分類に使用していたデータ (DFGOT Vol. 3 (1991)) は、LC50値として明記されていないため、不採用とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1

危険
H314 P260
P264
P280
P301+P330+P331
P303+P361+P353
P363
P304+P340
P310
P321
P305+P351+P338
P405
P501
  ヒトにおいて重度の皮膚刺激性 (HSDB (Access on June 2016))、腐食性を示す可能性 (ACGIH (7th, 2015)) が報告されていることから、区分1に分類した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1

危険
H318 P280
P305+P351+P338
P310
  ヒトで重度の眼刺激性を示すことが報告されていることから (DFGOT (1992)、HSDB (Access on June 2016))、区分1に分類した。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
6 発がん性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 区分1A
授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分

危険
H360
H362
P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
P260
P263
P264
P270
  本物質自体の生殖影響に関する情報はない。
  しかしながら、本物質は水蒸気や粘膜との接触に伴い急速に加水分解され、強アルカリ性の水酸化リチウム (CAS番号: 1310-66-3 (無水物: 1310-65-2)) を生じる (ACGIH (7th, 2015)) ことから、リチウム塩の情報が分類に利用可能と考えられる。
  すなわち、ヒトでは妊婦へのリチウム投与によりエブスタイン奇形など心血管系奇形の発生が1974年に初めて報告され、エブスタイン奇形は当初は高頻度に発症する (自然発症率の400倍) と考えられていたが、Cohen らは再解析の結果、エブスタイン奇形の発症率は自然発症率の出生児20,000人当たり1人に対し、リチウム治療した妊婦では出生児1,000人に対し2人の発症率と報告し (Cohen L.S. et al.: JAMA, 271, 146 (1994))、リチウムは“弱い”催奇形性物質とされた (Giles J.J and Bannigan J.G.: Curr. Pharm. Des., 12, 1531 (2006))。
  その後、2016年まで妊婦へのリチウム治療でのエブスタイン奇形発症率はCohenらの2/1,000例 (0.2%) が引用され、双極性障害患者の妊婦へのリチウム投与では胎児の高解像度心エコー検査による観察など特別な注意が必要であると警告されている (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))。
  また、2014年のイスラエルの報告では妊婦へのリチウム投与による新生児の心血管系異常発症率は対照群の0.6% (4/711例) に対し、リチウム投与群では2.4% (5/123例) と高く、比較したオーストラリアとカナダの多施設データでは心血管系異常発症率は対照群の0.5% (4/842例) に対し、リチウム投与群では3.9% (6/152例) であったとの報告 (Diav-Cirtrin, O. et al.: Am. J. Psychiatry, 171, 785 (2014)) から、エブスタイン奇形を含む心血管系異常は明らかにリチウム投与による影響と考えられる。
   さらに、妊娠初期 (妊娠期間の最初の1/3の期間) へのリチウム投与では、出生児の障害として他にも神経障害、呼吸障害、筋緊張低下児、高ビリルビン血症、心律動障害、甲状腺機能低下症、尿崩症などの報告例がある (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))。
   実験動物では炭酸リチウムを妊娠ラットの妊娠6〜15日に100 mg/kg/dayを経口投与した結果、胎児毒性 (着床数及び生存胎児数の減少、吸収胚数の増加傾向) 及び催奇形性 (波状肋骨、上腕骨・大腿骨など骨の短縮、頭蓋骨・骨盤の奇形、頭蓋骨の分離) が認められた (Marathe M.R. and Thomas G.P.: Toxicol. Lett., 34, 115. (1986))。
  また、炭酸リチウムを妊娠マウスの妊娠9日に330〜340 mg/kgを腹腔内投与した結果、外脳症、頭蓋裂、二分脊椎、脊髄の捻れ、第四脳室拡張など奇形の誘発がみられた (Jurand A.: Teratology, 38 (2), 101. (1988))。
  一方、妊娠動物へのリチウム投与で発生影響はみられなかったとの報告も複数あるが、投与量や動物の系統差による差異によるものと考えられている (Giles, J.J. and Bannigan, J.G.: Curr. Pharm. Des., 12, 1531 (2006))。
   以上、ヒトでは妊娠期へのリチウム投与で心血管系奇形や様々な発生影響が生じることが報告されており、実験動物でも催奇形性の報告のあることから、本項は区分1Aとした。
  また、分娩後52週までの調査で母乳中及び乳児血清中のリチウムレベルは母体血清中レベルのそれぞれ1/2及び1/4のレベルであったとのこと (Khan S.J. et al.: Curr. Psychiatry Rep., 18, 13 (2016))、及び本邦では妊娠の可能性のある女性に対してリチウム (炭酸リチウム) が禁忌とされているが、やむを得ず投与する場合は授乳を中止するとされていること (医療用医薬品集 2017 (2016)) から、授乳影響を追加した。
  
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)
区分2(神経系)

危険
警告
H370
H371
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
  本物質は水蒸気や粘膜との接触に伴い急速に加水分解されて強アルカリ性の水酸化リチウムを生じる。
  水酸化リチウムは鼻、口、咽頭、呼吸器粘膜に強力で即時性の焼灼性損傷を与え、肺浮腫を生じる可能性もあるとの記載がある (ACGIH (7th, 2015))。
  また、ヒトでは本物質の誤飲により吐き気、筋肉の収縮、精神的錯乱、かすみ目、昏睡を起こすとの記載がある (HSDB (Access on June 2016))。
  以上より区分1 (呼吸器)、区分2 (神経系) とした。
  HSDBがList 2の資料であるため、神経系の分類は区分2とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない
-

-
- -   データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない
-

-
- -   データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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