GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 79-00-5
名称 1,1,2-トリクロロエタン
物質ID H28-B-045, C-067B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
7 可燃性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   酸素およびフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
  なお、アルミ、鉄、亜鉛を腐食するという情報 (HSDB (Access on June 2016)) がある。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4

警告
H302 P264
P270
P301+P312
P330
P501
  ラットのLD50値として、837 mg/kg (食品安全委員会 (2008)、SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1989)) の報告に基づき、区分4とした。
   なお、ラットのLD50値として、100〜200 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との報告もあるが、著者であるCarpenter、Smythらが後年新たに出したデータが837 mg/kgであること、国際的評価機関では100〜200 mg/kgのデータは引用されていないことから、採用しなかった。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-

-
- -   ウサギのLD50値として、5,380 mg/kg (SIDS (2002)、ATSDR (1989)) の報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3

危険
H331 P261
P271
P304+P340
P311
P321
P403+P233
P405
P501
  ラットのLC50値 (4時間) として、2,000 ppm (NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1979)、BUA 152 (1994)、HSDB (Access on June 2016)) の件の報告に基づき、区分3とした。
  なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (30,355.45 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2

警告
H315 P264
P280
P302+P352
P321
P332+P313
P362+P364
  ウサギ等の動物試験で刺激性がみられた (NITE初期リスク評価書 (2005))。
  また、ヒトでも皮膚刺激性が認められることから (環境省リスク評価第2巻 有害性評価シート (2003))、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
絵表示なし


警告
H320 P264
P305+P351+P338
P337+P313
  ウサギの眼刺激性試験でごく軽度〜軽度の刺激性が認められた (NITE初期リスク評価 (2005)、SIDS (2002))。
  また、ヒトでも刺激性があることから (環境省リスク評価第2巻 有害性評価シート (2003)、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、マウスのDNA損傷試験で陰性、ラット、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性、ラット、マウスの肝臓付加体形成試験で陽性である (NITE有害性評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、厚生労働省(Access on June 2016)、SIDS (2004)、ATSDR (1989))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で多くが陰性、哺乳類培養細胞の小核試験で陽性、染色体異常試験で陽性、姉妹染色分体交換試験で陽性である (NITE有害性評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、ATSDR (1989)、ACGIH (7th, 2001)、EPA IRIS Summary (1988)、PATTY (6th, 12th)、NTP DB (Access on June 2016))。
  以上より、in vivoでマウスの肝臓付加体形成試験による陽性結果、in vitroで哺乳類培養細胞の小核試験で陽性、染色体異常試験で陽性、姉妹染色分体交換試験で陽性の結果はあるが、Weight of evidenceによりin vivoにおいて意味のある変異原性を示さないと判断し、分類できないとした。
  
6 発がん性 区分2

警告
H351 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ヒトでの発がん性に関する情報はない。
  実験動物ではラット及びマウスに経口経路で投与、又はラットに皮下投与した発がん性試験のうち、マウス経口投与試験で肝細胞腫瘍及び副腎褐色細胞腫が認められてが、他試験では腫瘍発生頻度の増加がみられなかったことから、IARCは実験動物での発がん性の証拠は限定的としてグループ3に分類した (IARC 71 (1999))。
  一方、EPAはマウスの試験における肝臓・副腎腫瘍頻度の増加と発がん物質の1,2-ジクロロエタンとの構造類似性を根拠にカテゴリーC (possible human carcinogen) に分類した (IRIS Summary (1987))。
  この他、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2001))、EUがCarc. 2 に (ECHA C&L Inventory (Access on June 2016)) 分類している。
  したがって、既存分類結果を基に本項は区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、妊娠マウスの器官形成期に強制経口投与し自然分娩させた発生毒性試験において、母動物に死亡 (3/30例) がみられる用量でも出生児に影響はなかったとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008)、環境省リスク評価第5巻 (2006))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(肝臓、腎臓)
区分3(気道刺激性、麻酔作用)


危険
警告
H370
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
  本物質はヒトに対して結膜、呼吸器粘膜、皮膚に対する刺激作用、及び低濃度からの麻酔作用が報告されている (環境省リスク評価第2巻 有害性評価シート (2003))。
  実験動物では、マウスで本物質の単回経口投与により、運動失調が認められたとの報告がある (ATSDR (1989))。
  また、ラットにおいて区分1相当の250 ppm、4時間の単回吸入ばく露により、生存した動物に肝臓及び腎臓の壊死が認められたとの報告 (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1989))、及びマウスで区分1相当の418 ppm、4時間の単回吸入ばく露により中枢神経系の抑制が認められたとの報告がある (SIDS (2002)、ATSDR (1989))。
  したがって区分1 (肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、呼吸器、消化管、肝臓、腎臓)

危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては、タイプライター洗浄作業において本物質に週20 時間、2 年間ばく露された男性に、重度の中枢性睡眠時無呼吸症、疲労、眠気、易刺激性、前かがみ姿勢、脱力、動揺、進行性遺尿症などの症状を呈した例が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2005))。
  また、本物質の蒸気に長期間ばく露されると慢性消化管障害、腎臓への脂肪沈着、肺障害を起こすことが知られているとの記載がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、SIDS (2002))。
   実験動物では、ラットを用いた16回吸入毒性試験 (7時間/日) において区分1相当の30 ppm (7時間/日、16回ばく露:ガイダンス値換算:0.034 mg/L) で肝臓への影響 (軽度脂肪変性、混濁腫脹)が報告されている (環境省リスク評価第5巻 (2006))。
   したがって、区分1 (神経系、呼吸器、消化管、肝臓、腎臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、HSDB (Access on June 2016) に収載された数値データ (粘性率: 1.69 mPa・s (25℃)、密度 (比重): 1.44 (20/4℃)) より、動粘性率は1.17 mm2/sec (25/20℃) と算出される。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
絵表示なし


注意喚起語なし
H402 P273
P501
  甲殻類(オオミジンコ)による48時間EC50=18 mg/L (NITE初期リスク評価書, 2005、SIDS, 2002、環境省リスク評価第5巻, 2006)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-

-
- -   急速分解性でないが(GCによる分解度:5%(既存点検, 1979))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC(バイオマス) = 51.4 mg/L(SIDS, 2002)、甲殻類(ブラインシュリンプ)の21日間NOEC(繁殖) = 10 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第2巻, 2003)、魚類(ツノガレイ)の56日間NOEC(致死、成長、奇形) = 3 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005、SIDS, 2002、環境省リスク評価第2巻, 2003、環境省リスク評価第5巻, 2006)から、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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