項目 | 情報 |
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CAS番号 | 85-68-7 |
名称 | フタル酸ブチルベンジル (BBP) |
物質ID | H28-B-049, C-086B |
分類実施年度 | 平成28年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 (危険物/有害物) | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成27年度 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 |
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- | - |
爆発性に関する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
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- | - |
エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分外 |
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- | - |
引火点は198℃であり (ICSC (2004))、「区分外」に相当する。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
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- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 |
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- | - |
常温の空気と接触しても自然発火しない (発火点425℃ (ICSC (2004)) と考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
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- | - |
液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 |
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- | - |
金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
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- | - |
フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
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- | - |
分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
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- | - |
データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 |
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- | - |
ラットのLD50値として、2,300 mg/kg (IARC 73 (1999))、2,330 mg/kg (EU-RAR (2008)、NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR213 (1982))、20,000 mg/kg (IARC 73 (1999))、20,400 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)、EU-RAR (2008)) との4件の報告がある。 いずれも区分外に該当することから、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 |
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- | - |
ラットのLD50値として、6,700 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)、CICAD 17 (1999)、EU-RAR (2008)、CEPA (2000)、PATTY (6th, 2012)) との報告があり、区分外に該当する。 ウサギのLD50値として、>10,000 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007)、IARC 73 (1999)、EU-RAR (2008)、PATTY (6th, 2012)) との報告があり、区分外に該当する。 これらに基づき区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
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- | - |
GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 |
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- | - |
ウサギの皮膚刺激性試験 (24時間適用) で中等度の刺激性がみられたが (EU-RAR (2008))、その後に実施されたウサギ皮膚刺激性試験では、有傷および無傷部位に24時間閉塞適用したが刺激性は認められなかった (NITE有害性評価書 (2006)、EU-RAR (2008)、NICNAS (2015)、PATTY (6th, 2012))。 また、ヒトでは 15〜30 人のボランティアに10%溶液を皮膚貼付した結果、軽度の刺激性が認められたとする報告 (NITE有害性評価書 (2006)、NITE初期リスク評価書 (2007)、CEPA (2000)、 EU-RAR (2008)、環境省リスク評価第2巻 (2003)) の一方で、ボランティア 200人に、本物質の原液を24時間/回、3回/週、5週間の頻度で皮膚に適用したが刺激性は認められなかったとしている (NITE有害性評価書 (2006)、NITE初期リスク評価書 (2007)、CEPA (2000)、EU-RAR (2008)、IARC (1999)、NICNAS (2015)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。 さらに、EU-RARには、これらの情報をもとにEUの判定基準に従えば、本物質は皮膚刺激性に分類する必要はないとの記載がある (EU-RAR (2008))。 以上の情報に基づき、区分外とした。 旧分類の情報に新しい情報を追加し再度精査することにより分類を変更した。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分外 |
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- | - |
ウサギの眼刺激性試験で、24時間後に軽度の刺激性がみられたが、48時間後までに回復したとの報告がある (NITE有害性評価書 (2006)、EU-RAR (2008)、NICNAS (2015)、PATTY (6th, 2012))。 さらに、EU-RARには、これらの情報をもとにEUの判定基準に従えば、本物質は眼刺激性に分類する必要はないとの記載がある (EU-RAR (2008))。 以上の情報に基づき、区分外とした。 旧分類の情報に新しい情報を追加し再度精査することにより分類を変更した。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
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- | - |
データ不足のため、分類できない。 なお、ボランティア200人に原液を5週間反復貼付して感作し、2週間後に再度原液を貼付して誘発した試験で陰性であったとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、CEPA (2000)、EU-RAR (2008))。 なお、旧分類で記載したウサギを用いた皮膚感作性試験とボランティアによるヒトのパッチテストの情報は、原著を確認したところ詳細が不明であり、1952年と古い文献のため、採用しなかった。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない |
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- | - |
ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。 すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で弱い陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、NICNAS (2015)、IARC 73 (1999)、EU-RAR (2008)、CICAD 17 (1999)、CEPA (2000)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on June 2016))。 In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、NICNAS (2015)、IARC 73 (1999)、EU-RAR (2008)、CICAD 17 (1999)、CEPA (2000)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on June 2016))。 以上より、in vivoの染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性が認められているが、小核試験は陰性、優性致死試験も陰性であり、また、in vitro試験でもすべて陰性の結果であることから、本物質は遺伝毒性を有しないと判断した。 |
6 | 発がん性 | 分類できない |
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- | - |
ラット、又はマウスに2年間経口 (混餌) 投与した発がん性試験において、マウスに発がん性の証拠はみられなかったが、ラットでは雌に単核細胞白血病 (MNCL) の発症頻度増加がみられた (NTP TR213 (1982))。 また、ラットに2年間混餌投与した他の試験では、膵臓腺房細胞腺腫、又は同腺腫と腺がんの合計頻度の増加が雄に、膀胱移行上皮の乳頭腫の頻度の軽微な増加が雌に認められた (NTP TR458 (1997))。 しかし、IARCは本物質の発がん性の証拠はヒトで不十分、実験動物で限定的としてグループ3に分類した (IARC 73 (1999))。 EUは本物質はNo classification (分類できない) とカテゴリー3 (旧DSD分類: 区分2相当) との境界線上の物質であるが、遺伝毒性を有しないことから「分類できない」を推奨すると結論し (EU-RAR (2008))、さらにNICNASはIARCとEUの見解を支持し、入手可能なデータからは本物質のヒト発がん性の十分な証拠はないと結論している (NICNAS (2015))。 以上より、本項は分類できないとした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
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H360 |
P201 P202 P280 P308+P313 P405 P501 |
ヒトでは本物質 (BBP) の尿中代謝物 (モノブチルフタレート (MBP)、モノブチルベンジルフタレート (MBzP)) 濃度と精液パラメータ (精液量、精子数、精子濃度、精子運動性、精子形態など) との関連性を調べた研究で陽性の報告もある (NICNAS (2015)、食品安全委員会 (2015)) が、全体としてはサンプル数が少ない、経時的な変動でなく1時点のみの影響である、他の物質も同時に検出されているなどから懐疑的であると記述されている (NICNAS (2015))。 母親と息子のペアーに対して、母親の尿中MBP、MBzP濃度と男児のAGI (AGD (肛門生殖突起間距離) の体重比) を調べたSwanらの初期の研究では、両者に負の有意な相関がみられたが、同一コホートで母親-息子ペアーの対象例数を増加させた研究では、この相関はみられず、他の研究者によってもこれは確認されている (NICNAS (2015)、食品安全委員会 (2015))。 また、母親の尿中MBP、MBzPと早産との関連性が指摘されたが、MBPとMBzPは早産や母親の性ホルモン濃度と関連性がないとの報告もある (NICNAS (2015)、食品安全委員会 (2015))。 この他、母乳中のフタル酸モノエステルレベルと停留精巣との間に相関はみられなかったが、停留精巣を有する、又は有さない男児96人の血清中性ホルモンを測定した結果、MBPは性ホルモン結合グロブリン (SHBG)、LH/遊離テストステロン比 (ライディッヒ細胞機能指標) とは正の相関を、遊離テストステロンとは負の相関を示したとする報告、また有意な差ではないがMBzP濃度の増加と平行してインヒビンB (セルトリ細胞の機能指標) の増加傾向がみられたとする報告などがある (NICNAS (2015)、食品安全委員会 (2015))。 以上、本物質のヒトでの発生影響は限定的かつ不確かである。 一方、実験動物では本物質が精巣毒性及び生殖障害を示す十分な証拠があり、特にF1の発生・発達期へのばく露で顕著に影響がみられている。 BBPにより誘発される精巣毒性は精巣重量の減少と精巣及び付属生殖器官の萎縮、用量相関的な精子濃度の減少を特徴とし、精巣及び生殖能への影響は試験によっては他の一般毒性と同等か、それ以上の用量で観察されるが、全身毒性による二次的で非特異的な影響ではないと考えられている (NICNAS (2015))。 また、BBP誘発性の発生毒性影響の報告も出生前、新生児期、及び生後発達のエンドポイントを含め十分な報告がある。 それには胚吸収、着床後胚損失、又は胚/胎児死亡、胎児奇形、胎児重量及び出生時重量の減少が共通してみられている。 BBPの生殖発生影響に関して、雌は雄よりも感受性が低く、雄では胎児テストステロンレベルの減少、雄出生児でのAGD減少及び乳頭遺残、思春期 (包皮分離) の遅延の報告があり、思春期以後にはテストステロンの減少、性分化障害、及び生殖器官異常の報告がある。 これらの影響は顕著な母動物毒性 (主に体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓/腎臓重量増加) が生じない用量で観察されている (NICNAS (2015))。 以上、ヒトでの生殖影響は不確かであるが、実験動物での生殖発生影響は確実で特に母動物毒性のない用量でも雄出生児に顕著に認められることから、区分1Bとした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 分類できない |
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- | - |
本物質のマウスとラットへの単回経口投与試験で、区分2超の6,000〜9,000 mg/kgで、興奮と抑鬱状態が交互に生じ、四肢の麻痺、筋肉緊張、体重減少がみられたとの報告がある (EU-RAR (2008))。 また、ラットにおいて致死量またはそれに近い量 (明確な記載はないが、LD50が2,000〜20,000 mgと記載されていることから、その範囲内の用量と考えられる) の経口単回投与で、体重減少、無関心、白血球増加がみられ、病理組織学的検査で脾臓の炎症と、うっ血性脳症、ミエリン変性及びグリア細胞の増生を伴う中枢神経の変性が認められたとの報告 (CICAD 17 (1999)) がある。 これらの動物実験の結果からは、本物質の影響は大量の本物質にばく露された場合にのみ観察される。 したがって分類できないとした。 また、旧分類では本物質が眼、皮膚、気道を刺激するとのICSCの記載を根拠として、区分3 (気道刺激性) としているが、ICSCは現在はList 3の資料であり原典が参照できないため、区分を変更した。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分2(生殖器 (男性)) |
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H373 |
P260 P314 P501 |
ヒトについては、本物質との関連性が明確な情報はない。 実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による2世代生殖毒性試験において、F1世代の雄に区分2の範囲である100 mg/kg/dayで、精巣軟化、精巣上体の管腔内精子減少及び管腔内精細胞残屑がみられたとの報告がある (食品安全委員会 (2015))。 なお、ラットを用いた混餌による14日〜106週間の複数の反復投与毒性試験、イヌを用いた混餌投与による3ヵ月間反復投与毒性試験、ラットを用いた4週間及び13週間の吸入毒性試験が実施され、区分2の範囲外の用量で肝臓、膵臓、精巣等の病変が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、食品安全委員会 (2015))。 したがって、区分2 (生殖器 (男性)) とした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
|
- | - |
データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 |
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H400 |
P273 P391 P501 |
藻類 (Pseudokirchneriella subcapitata) の96時間EC50 = 0.11 mg/L (CICADs 17, 1999、NITE初期リスク評価書, 2007) から区分1とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分2 |
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H411 |
P273 P391 P501 |
急速分解性があり(2週間でのBOD分解度=80.9%(既存点検, 1975))、魚類(ニジマス)の35日間NOEC = 0.095 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2007)であることから、区分2とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
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- | - | データなし |
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。 また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。 * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。 * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。 ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。 他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
2017/7/25 |