GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 1330-43-4
名称 四ホウ酸ナトリウム
物質ID H29-B-002
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (ICSC (J) (2014))。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (ICSC (J) (2014))。
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- -    不燃性である。(ICSC (J) (2014))。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-
-
- -    金属 (Na) 及び半金属 (B) を含むが、水溶解度は2.56 g/100 mL (ICSC (J) (2014)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- -    酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-
-
- -    ラットのLD50値として、2,660 mg/kg (HSDB (Access on May 2017)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。旧分類が使用したRTECSのデータは原典が入手できず詳細不明のため不採用とした。それにより旧分類から区分を変更した。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- -    四ホウ酸ナトリウムには、無水物 (CAS番号 1303-43-4)、五水和物 (CAS番号 12179-04-3)、十水和物 (CAS番号 1330-96-4) があり、無水物である本物質については、データ不足のため分類できない。なお、五水和物と十水和物はウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性なしとの報告がある (DFGOT (2013) (Access on May 2017))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
-
警告
H320 P305+P351+P338
P337+P313
P264
   四ホウ酸ナトリウム粉じんにばく露された労働者に眼刺激がみられた (ECETOC TR63 (1995)) という報告から、本物質か水和物によるものか特定できず、また程度は不明であるが、本物質は眼刺激性を有すると考え、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第14巻 (2016)、ECETOC TR63 (1995)、EHC 204 (1998))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    本物質を含むホウ酸塩化合物はACGIHでA4に分類されている (ACGIH (7th, 2005))。よって、分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   本物質自体の生殖毒性に関する情報はないが、ホウ酸塩としてホウ酸の情報が利用可能と考えられる。すなわち、マウス及びラットにホウ酸を混餌投与した生殖毒性試験で、親動物に一般毒性影響のない用量で受精能の低下による不妊が認められた。交差交配試験の結果、マウスでは雄の受精能低下が不妊の原因であったが、ラットでは投与群の雌を対照群の雄と交配させた場合にも完全不妊がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010))。一方、妊娠ラット又は妊娠マウスの器官形成期にホウ酸を混餌投与した複数の発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少など) 発現量で胎児に奇形発生 (第13肋骨の欠損・短縮、側脳室の拡張など) の増加、胎児死亡率、新生児死亡率の増加がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010))。妊娠ウサギの器官形成期にホウ酸を強制経口投与した試験でも母動物に体重の低下がみられる用量で心血管系奇形の増加及び胎児死亡率の増加が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。
   以上、本物質もホウ酸塩として、ホウ酸と同様の生殖発生毒性を示す可能性が考えられ、区分1Bとした。なお、EUも本物質をRepr. 1Bに分類している (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   本物質のヒト及び実験動物での単回ばく露に関する情報はない。本物質、本物質の五水和物であるNa2B4O7・5H2O (CAS番号 12179-04-3) 及び十水和物であるNa2B4O7・10H2O (別名ホウ砂、CAS番号 1303-96-4) は水に溶けてホウ酸 (CAS番号 10043-35-3) を生成する (PATTY (6th, 2012))。ホウ酸及びホウ砂の主な有害性情報としては以下の報告がある。
   ヒトでは、ホウ酸30 gを水と共に1回、経口摂取した77歳男性が、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、紅斑、四肢チアノーゼ、急性腎不全、心肺性低血圧を生じ、心不全により死亡した例が報告されている ((ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、4.5~14 gのホウ酸混入ミルクを摂取した新生児11名が嘔吐、下痢に加えて頭痛、振戦、不穏、痙攣、衰弱、昏睡など中枢神経系の症状を示し、うち5名は3日以内に死亡したとの報告がある (ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。更にボランティアによるホウ酸またはホウ砂粉じんの単回吸入ばく露試験で、鼻汁分泌の増加がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2005)、ATSDR (2010)、DFGOT (2013) (Access on May 2017))。
   実験動物では、ホウ酸、ホウ砂の実験動物への経口急性影響は中枢神経系抑制、痙攣、死亡であり、その用量は、区分2のガイダンス値を超える用量 (ラット、マウス: 2,403~6,080 mg/kg) であったと報告されている (ACGIH (7th, 2005))。
   以上の情報に基づき、ホウ酸は平成25年、Na2B4O7・5H2Oは平成27年のGHS分類でいずれも区分1 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性) と分類されている。本物質も水に溶けてホウ酸を生成することから、これらの物質と同様の影響を示す可能性があると考えられる。したがって区分1 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性) とした。
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)、区分2(生殖器(男性))


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、アメリカの大規模ホウ砂採鉱・精錬プラントで5年以上働く労働者629人 (うち女性26人) を対象とした横断研究では、職場の総粉じん濃度 (加重平均) は無水ホウ砂製造部門で14.6 mg/m3、出荷部門で8.4 mg/m3、鉱山やメンテナンス部門で4.0 mg/m3、非製造部門で1.1 mg/m3 であった。持続性症状について、喫煙歴の有無から労働者を2群に分け、さらに低 (0.9 mg/m3)、中 (4.5 mg/m3)、高 (14.6 mg/m3) の3ばく露濃度群に分けて検討した結果、非喫煙労働者で咳、粘液分泌過多、慢性気管支炎、喫煙歴ありの労働者で息切れの訴えに有意な増加傾向がみられた。なお、肺機能検査及び胸部X線検査の結果とばく露濃度に関係がなかったとの報告がある (環境省リスク評価第14巻 (2016)、EHC 204 (1998))。
   実験動物については、本物質 (無水物) のデータは無いが、ラットを用いた十水和物の混餌投与による60日間反復経口投与毒性試験において、500 ppm (ホウ素として25 mg/kg/day) 投与した群において 精巣の精細管萎縮がみられたとの報告があり (NITE初期リスク評価書 (2008))、ホウ素 (B、分子量: 10.81)、本物質 (ホウ砂 (無水物)、B4Na2O7、分子量: 201.22) を基に投与量換算すると、ホウ素25 mg/kg/dayは本物質116.4 mg/kg/day (90日換算値: 77.6 mg/kg/day)) となり、区分2のガイダンス値の範囲内である。
   したがって、ヒトにおいて呼吸器に影響がみられ、実験動物において区分2のガイダンス値の範囲で精巣に影響がみられたことから、区分1 (呼吸器)、区分2 (生殖器 (男性)) とした。
   新たな情報源のデータが得られたことにより分類が変更となった。
   
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
-
-
H402 P273
P501
   魚類(ゼブラフィッシュ)96時間LC50 = 66 mg/L[14.2 mgB/L 換算値](WHO EHC:1998)であることから、区分3とした。なお、分類には水和物のデータを用いた。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
   慢性毒性データが得られていない。水中での挙動は不明であるが、急性毒性区分3であることから、区分3とした。なお、分類には水和物のデータを用いた。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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