GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 79-41-4
名称 メタクリル酸
物質ID H29-B-035
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4
-
警告
H227 P370+P378
P403+P235
P210
P280
P501
   引火点が68℃ (closed cup) (ICSC (J) (1996)) とのデータに基づき、区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- -    自己反応性に関連する原子団 (エチレン基) を含むが、安定剤入りのものはUNRTDGにおいてUN 2531、クラス8、PGⅡに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。なお、安定剤量が足りないものは船舶輸送禁止物質 (危規則告示第5条1項五のニ) である。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は385℃ (GESTIS (Access on June 2017)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    金属を侵す (ICSC (J) (1996)) との情報があるが、データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-
-
- -    ラットのLD50値として、1,320 mg/kg (EU-RAR (2002))、2,224 mg/kg (EU-RAR (2002))、2,260 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、EU-RAR (2002)) の3件の報告がある。うち1件が区分4、2件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当する。件数の多い区分を採用し、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。旧分類が使用した1,060 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003)) との情報は、元資料がList 3のRTECSであり、原典が入手不能で詳細を確認できないため不採用とした。したがって区分を変更した。
1 急性毒性(経皮) 区分3


危険
H311 P302+P352
P361+P364
P280
P312
P321
P405
P501
   ウサギのLD50値として、500~1,000 mg/kg (EU-RAR (2002)) の報告に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外
-
-
- -    ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、7.1 mg/L (EU-RAR (2002)、DFGOT vol. 26 (2010)) との報告に基づき、区分外とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (4.6 mg/L) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
   ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (米国運輸省包装等級確認試験準拠) において、本物質原液を3分間開放適用し、適用後本物質を水を浸したペーパータオルで拭った試験直後の観察で腐食性がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005)) から、細区分の基準に基づき区分1Aとした。なお、EU CLP分類において本物質は Skin Corr. 1Aに分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
   本物質は、皮膚腐食性/刺激性が区分1Aに分類されている。ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠) において、本物質0.1 mLを適用した試験で適用24時間後に全てのウサギに角膜混濁、虹彩刺激、結膜充血、結膜浮腫がみられ、7日目でも角膜混濁、虹彩刺激、結膜刺激は回復せず、化学火傷、角膜上皮の壊死脱落、前眼房の蓄膿がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005)) がある。これらの情報から、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 区分外
-
-
- -    ヒトへの事例で、本物質の関連物質に対するアレルギー患者において、本物質 (0.1%) によるパッチテストは陰性 (環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 26 (2010)) であり、モルモットを用いたビューラー法及びPolac adjuvant法による感作性試験はいずれの方法においても感作性はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2005)) ことから、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    本物質に関するin vivoデータはない。しかし、本物質のメチルエステルであるメタクリル酸メチル (CAS番号 80-62-6) は、加水分解されて本物質を生じることから、メタクリル酸メチルのin vivoデータが本物質のin vivoデータとして使用できる (EU-RAR (2002)、NITE初期リスク評価書 (2005))。したがって、本物質の分類でのin vivoデータは、メタクリル酸メチルのデータを使用した。メタクリル酸メチルは、In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 26 (2010)、EU-RAR (2002)、SIDS (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012)、CICAD 4 (1998)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、IRIS Tox. Review (1998))。しかし、in vivo染色体異常試験の陽性結果は信頼性に乏しいと評価されている(EU-RAR (2002)、SIDS (2002))。In vitroでは、本物質は細菌の復帰突然変異試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2002)、SIDS (2002)、DFGOT vol. 26 (2010))。以上より、ガイダンスに従い分類できないとした。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    本物質自体の発がん性に関する情報はなく、データ不足のため分類できない。なお、本物質のメチルエステルであるメタクリル酸メチル (CAS番号 80-62-6) はエステラーゼにより加水分解され本物質を生じる (DFGOT vol. 26 (2010)) が、メタクリル酸メチルの分類結果も分類できないとされている。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    妊娠ラットに対し妊娠6~20日に吸入ばく露した発生毒性試験で、母動物に体重増加抑制がみられた300 ppm まで胎児に発生影響は認められなかった (環境省リスク評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012))。しかし、生殖能・性機能に関する情報がなく、データ不足のため分類できない。なお、in vitroの胎児培養実験では奇形発生率の増加がみられたとの記述がある (環境省リスク評価第12巻 (2014)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2012))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
   ヒトでは本物質を98%含む製品を3~5 mL誤飲した小児の症例が1例報告されている。それによると、消化管の内視鏡検査で食道と胃の腐食が認められたことに加えて、上咽頭鏡検査及び気管支鏡法で声門上領域の退色と著明な浮腫、気管及び気管支で紅斑と大量の分泌物、気管支の狭窄化を認めた。患者は入院後に肺炎を発症し、喘鳴と呼吸困難を示したと記載されている (環境省リスク評価第12巻 (2014))。実験動物では、ラットの4時間単回吸入ばく露試験で、剖検の結果、気道の炎症が認められたとの報告がある。影響がみられた用量の詳細な記載はないが、LC50値である7.1 mg/L付近の区分2超と考えられる (EU-RAR (2002))。また、ラットの1時間単回吸入ばく露試験で、本物質の蒸気1,000 ppm (3.52 mg/Lに相当。4時間換算値: 1.76 mg/L) のばく露で、死亡例はなかったが、血液を含んだ鼻汁が認められ、剖検の結果、肺で軽度のび漫性又は斑状の変色がみられたとの報告がある (EU-RAR (2002))。この試験での用量は区分1に相当する。ヒトでの情報は1例のみであるため分類根拠としなかったが、実験動物で肺への影響が区分1の用量で認められていることから区分1 (呼吸器) とした。呼吸器を標的臓器としたため、ガイダンスに従い、旧分類から分類結果を変更した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトに関する情報はない。
   実験動物については、ラットを用いた90日間反復吸入毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である20 ppm (0.0704 mg/L) 以上で鼻甲介の炎症性変化の報告がある (環境省リスク評価第12巻 (2014)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
   以上より、区分1 (呼吸器) とした。
   なお、旧分類で分類根拠とした、ヒトについての情報、「頻脈、低血圧、ニトログリセリンとの過度の反応、低体温、加熱・紫外線暴露に対する弱い反応、Ashner反射の病理学的変化、肢端チアノーゼ、手の指の振戦などがみられた」等については、EU-RAR (2002) には、アブストラクトであり、方法、結果の詳細な記述がなく、また、他の化学物質との混合ばく露についても除外されていないと記載されていたため、分類根拠としなかった。また、実験動物について、ラットを用いた6ヵ月間反復経口投与毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である5 mg/kg/dayで反射低下、肝酵素や電解質の変化、肝臓及び副腎重量の減少、肝臓及び腎臓、副腎の萎縮、赤血球の減少などがみられたとの報告がある (環境省リスク評価第12巻 (2014)、NITE初期リスク評価書 (2005))。しかし、詳細が不明であることから分類に用いなかった。したがって分類が変更となった。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
   特定標的臓器毒性 (単回暴露) の項に記述した本物質を98%含む製品を3~5 mL誤飲した小児の症例は、原著で確認した結果、発症後直ちに入院しており、入院時には肺に異常はなかったが、消化管障害とともに、上咽頭鏡検査及び気管支鏡法で上部気道から下部気道にかけて炎症性変化が認められた (特定標的臓器毒性 (単回暴露) の項を参照)。そして入院翌日には両側性肺炎に進展したと記述されている (Linden, C.H. et al.: Pediatrics, 102, 979-984 (1998))。以上、病状と時間の経過から推測して、本症例の肺炎は本物質を飲み込んだことによる誤嚥性肺炎と考えられた。また、動粘性率算出値も 1.36 mm2/sec (24℃) と低い (粘性率: 1.38 mPa・s (24℃)、密度 (比重): 1.0153) (HSDB (Access on June 2017) を基に算出)。よって、区分1とした。なお、誤嚥性肺炎の症例を採用したため、旧分類からは分類結果が変わった。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
-
-
H402 P273
P501
   藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)72時間EC50(速度法:pH未調整) = 14 mg/L(NITE初期リスク評価書:2005)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-
-
- -    急速分解性があり(良分解性、BODによる平均分解度:91%(化審法DB:1993))、蓄積性がなく(LogKow:0.93 (SRC PhysProp Database:2017))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC(速度法、pH未調整)= 9.8 mg/L(NITE初期リスク評価書:2005)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC(繁殖阻害)= 53 mg/L(環境省環境リスク評価(第11巻):2014)であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

GHS関連情報トップページに戻る