GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 91-08-7
名称 2,6-トリレンジイソシアネート (別名:2,6-トルエンジイソシアネート)
物質ID H29-B-050
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外
-
-
- -    引火点が127℃ (closed cup) (GESTIS (Access on June 2017)) である。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- -    分子内に自己反応性に関連する原子団 (シアン酸化合物) を含むが、UN 2078、クラス6.1、PGⅡに分類されており、優先評価項目の自己反応性には該当しないと考えられる。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は620℃ (ICSC (J) (1998)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   本物質単独のLC50値の情報はないが、異性体の2,4-トリレンジイソシアネート (2,4-TDI、CAS番号 584-84-9) と本物質の混合物であるTDI市販品 (以下TDI。通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) では、ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、13.9~49.8 ppm (0.1~0.36 mg/L) との報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。本物質の含量は約20%と少ないが、2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があるため、TDIの情報を本物質の分類にも用いることが可能と考えられる。最小値の13.9 ppm は、TDIの飽和蒸気圧濃度 (26.4 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用すると、区分1に該当する。したがって、区分1とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分2


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   本物質単独のLC50値の情報はないが、2,4-TDIと本物質の混合物であるTDI市販品 (以下TDI。通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) では、ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、13.9~49.8 ppm (0.1~0.36 mg/L) との報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。本物質の含量は約20%と少ないが、2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があるため、TDIの情報を本物質の分類にも用いることが可能と考えられる。 最大値の49.8 ppm (0.36 mg/L) は、TDIの飽和蒸気圧濃度 (26.4 ppm) よりも高いため、ミストとしてmg/Lを単位とする基準値を適用すると、区分2に該当する。したがって、区分2とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
   ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、TDI市販品 (本物質20%及び2,4-TDI 80%を含む) は腐食性であり、8及び28日の経過観察で皮膚変化は非可逆的であったとの報告 (DFGOT vol. 20 (2003)) がある。本物質の含量は約20%であるが、2,4-異性体と2,6-異性体 (本物質) 間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) から、本情報を採用して区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。また、異性体の区別はないが「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) が、皮膚障害を起こす化学物質として記載されている。今回の調査で入手した情報をもとに区分を見直した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
   皮膚腐食性/刺激性が区分1に分類されていることから、区分1とした。なお、TDI市販品 (本物質20%及び2,4-TDI 80%を含む) を用いたウサギによる眼刺激性試験において、しばしば30日内に回復しない強い刺激性を示したとの報告 (DFGOT vol. 20 (2003))、及び2,4-異性体と2,6-異性体 (本物質) 間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) がある。EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。また、異性体の区別はないが「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) が、前眼部障害を起こす化学物質として記載されている。ガイダンスに従い、区分を変更した。
4 呼吸器感作性 区分1


危険
H334 P304+P340
P342+P311
P261
P284
P501
   ヒトでは、本物質 (2,6-TDI) 及び異性体 (2,4-TDI、CAS番号 584-84-9) の混合物であるTDI市販品 (2,6-TDIと2,4-TDIの混合比は通常20:80) は、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示し、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生じるとの記載 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。本物質の含量は約20%であるが、2,4-異性体と2,6-異性体 (本物質) 間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があり、TDI市販品の情報を分類に用いた。日本産業衛生学会において、トルエンジイソシアネート類は感作性物質の気道第1群に分類されており (日本産業衛生学会許容濃度等の勧告 (2016))、本物質はトルエンジイソシアネート類に含まれる。よって、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はResp Sens. 1 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
   日本産業衛生学会において、トルエンジイソシアネート類は感作性物質の皮膚第2群に分類されており (日本産業衛生学会許容濃度等の勧告 (2016))、本物質はトルエンジイソシアネート類に含まれる。よって、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Sens. 1 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    TDI市販品 (本物質20%及び2,4-異性体80%) を用いたin vivo試験では、ラット、マウスの骨髄細胞小核試験で陰性 (IARC 71 (1999))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、IARC 71 (1999)、環境省リスク評価第14巻 (2016)、ATSDR (2015)、DFGOT vol. 20 (2003))。以上より、ガイダンスに従い分類できないとした。情報源を見直し、in vivoの所見を追加したため、旧分類の区分を変更した。
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   TDI市販品 (本物質約14%及び2,4-異性体86%) をラット、又はマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは雌雄に皮下組織の良性及び悪性腫瘍 (線維腫及び線維肉腫) の合計頻度の増加、雄に膵臓良性腫瘍 (腺房細胞腺腫) の頻度増加、雌に乳腺の線維腺腫、膵臓の良性腫瘍 (ラ氏島細胞腺腫) の頻度増加がみられた (IARC 39 (1986)、NTP RoC (14th, 2016))。マウスでは雄には腫瘍発生率の増加はなかったが、雌には血管の良性及び悪性腫瘍 (血管腫及び血管肉腫) の合計頻度増加、及び肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫) の頻度増加が認められた (IARC 39 (1986)、NTP RoC (14th, 2016))。IARCは実験動物では本物質も発がん性の十分な証拠があるとして、グループ2Bに分類した (IARC 71 (1999))。その他、ACGIHはA3に (ACGIH (7th, 2016))、NTPはRに (NTP RoC (14th, 2016))、EUはCarc. 2に (ECHA CL Inventory (Access on June 2016))、また日本産業衛生学会はトルエンジイソシアネート類 (CAS番号 26471-62-5) に対し第2群Bに (許容濃度の勧告 (2016): 1991年提案) 分類している。以上、各機関の既存分類結果に基づき、区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、TDI市販品 (本物質20%と2,4-異性体80%のTDI混合物) については、ラットに吸入ばく露した2世代試験において、F0及びF1親動物には雌雄とも0.02 ppm以上で鼻腔の炎症、0.08 ppm 以上で体重増加抑制、一般状態の変化 (鼻周囲の痂皮など) がみられたが、生殖能に有害影響はなく、児動物への影響も軽微な影響 (F2の0.08 ppm以上で体重の低値) だけであった (環境省リスク評価第14巻 (2016)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告、並びに妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6~15日) にTDI (80:20) を吸入ばく露した試験では母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少など) がみられた0.5 ppmで胎児には軽微な影響 (第5頸椎の骨化遅延) がみられたのみであった (環境省リスク評価第14巻 (2016)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告がある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
   ヒトではボランティアによる本物質の吸入試験で、0.08 ppm、30分の吸入により鼻の穿痛感がみられ、刺激効果は異性体の2,4-TDI (CAS番号 584-84-9) よりも強かったとの報告がある (DFGOT vol. 20 (2003))。実験動物では、マウスに本物質 (純度99.1%) の蒸気0.37~7.6 mg/m3 (0.051~1.05 ppm) を30分吸入ばく露した試験で、呼吸数が減少し、呼吸器刺激性を示したとの報告があり、RD50値は1.85 mg/m3 (0.255 ppm) と記載されている (EHC 75 (1987)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、2,4-TDIと本物質の混合物であるTDI市販品 (以下TDI、通常2,4-TDIと2,6-TDI の混合比80:20) では、ヒトで事故による大量ばく露により、急性の呼吸器不全を発症した症例が複数報告されている (DFGOT vol. 20 (2003))。さらにTDIの急性ばく露は粘膜、気道を刺激し、高濃度のばく露により、重篤な気管支痙攣、肺炎、肺水腫を伴う化学性気管支炎を引き起こす可能性があるとの記載がある (ACGIH (7th, 2004))。本物質の含量は約20%と少ないが、2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) があるため、TDIの情報を本物質の分類にも用いることは妥当と考えられる。したがって区分1 (呼吸器) とした。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
   なお、異性体の区別はないが、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、気道・肺障害を起こす化学物質として記載されている。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、異性体 (2,4-TDI) と本物質 (2,6-TDI) の混合物であるm-トリレンジイソシアネート (TDI) (2,4-TDIと2,6-TDIの混合比は通常80:20) の情報があり、「TDIはヒトに対して、喘息を発症させ、呼吸器刺激性と呼吸器感作性を示し、慢性気管支炎、限局性呼吸器疾患などを生ずる。」との記載がある (NITE初期リスク評価書 (2008)) 。
   実験動物については、本物質 (2,6-TDI) 単独での報告はないが、TDI市販品 (2,4-TDI:2,6-TDI、80:20) についての報告がある。ラットを用いた強制経口投与による106週間反復投与毒性試験において、最低用量である雄30 mg/kg/day、雌60 mg/kg/day以上で呼吸器に影響 (急性気管支肺炎)、体重増加抑制、死亡率増加がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008))。また、マウスを用いた104週間吸入毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である0.00036 mg/L以上で萎縮性鼻炎あるいは粘膜及び扁平上皮化生、壊死巣を伴う壊死性鼻炎、0.00108 mg/Lで体重増加抑制、間質性肺炎、カタル性気管支炎、角膜炎の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。
   また、2,4-異性体と2,6-異性体間に重要な毒性学的差異は認められていないとの記載がある (ACGIH (7th, 2004))。
   以上より、区分1 (呼吸器) とした。
   なお、異性体の区別はないが、トリレンジイソシアネート (別名:TDI) は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、気道・肺障害を起こす化学物質として記載されている。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
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- -    データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない
-
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- -    信頼性のある急性毒性データが得られていない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない
-
-
- -    データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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