項目 | 情報 |
---|---|
CAS登録番号 | 10102-18-8 |
名称 | 亜セレン酸ナトリウム |
物質ID | H29-B-104 |
分類実施年度 | 平成29年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成26年度 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
- |
- | - | エアゾール製品ではない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない |
- |
- | - | 特定の条件下で可燃性である (ICSC (J) (1998)) との情報があるが、データがなく分類できない。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 |
- |
- | - | 空気中で安定 (Merck (15th, 2013)) であり常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない |
- |
- | - | データがなく分類できない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 |
- |
- | - | 半金属 (Se) を含むが、水溶解度は89.8 g/100 g水 (HSDB (Access on September 2017)) との測定データが得られており、水との急激な反応はないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - |
GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない |
- |
- | - | 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分2 |
危険 |
H300 |
P301+P310
P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、4.8~7.0 mg Se/kg (本物質換算値: 10.5~15.3 mg/kg) (ATSDR (2003)、PATTY (6th, 2012))、10.5~13.2 mg Se/kg (本物質換算値: 23.0~28.9 mg/kg) (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分2とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 |
警告 |
H315 |
P302+P352
P332+P313 P362+P364 P264 P280 P321 |
ヒトにおいてセレン化合物は職業上のばく露で皮膚刺激性を示したとの記載 (ATSDR (2003)) や、再生ヒト表皮を用いたin vitro皮膚刺激性試験 (OECD TG 439準拠) で本物質は刺激性物質であったとの記載 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) から、区分2とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 |
警告 |
H319 |
P305+P351+P338
P337+P313 P264 P280 |
ヒトにおいてセレン化合物は職業上のばく露で眼刺激性を示したとの記載 (ATSDR (2003)) から、区分2とした。なお、ウシ角膜を用いる混濁度および透過性試験 (OECD TG 437準拠) で本物質は腐食性ではなかったとの記載 (ECHA 登録情報 (Access on November 2017)) がある。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない |
- |
- | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない |
- |
- | - |
データ不足のため分類できない。なお、セレンを取扱う実験技術者がばく露から6ヵ月で指間にそう痒性の小胞を生じ、2年後に顔や首の湿疹や流涙、2ヵ月中に2度の喘息発作を起こしてパッチテストで本物質とセレンに陽性を示した事例 (ATSDR (2003)) の記載がある。EU CLP分類において本物質はSkin Sens. 1, H317 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分2 |
警告 |
H341 |
P308+P313
P201 P202 P280 P405 P501 |
In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性、ラット、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性、ラットの末梢血を用いた染色体異常試験で陰性である (ATSDR (2003)、環境省リスク評価第14巻 (2016))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (ATSDR (2003)、環境省リスク評価第14巻 (2016))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。 |
6 | 発がん性 | 分類できない |
- |
- | - |
セレン及びセレン化合物はIARCでグループ3に (IARC Suppl. 7 (1987))、EPAでD (not classifiable as to human carcinogenicity) に分類されている (IRIS (1991))。したがって、分類できないとした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 |
警告 |
H361 |
P308+P313
P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでは高含量のセレンを含む食事の摂取により精子運動能の低下など精子の質に影響するとの報告がある一方、影響なしとする報告もある (ATSDR (2003))。セレン酸を含む飲料水を摂取したイタリアの女性で自然流産の増加傾向 (相対リスク [RR]=1.73; 95% CI=0.62-4.80) が窺われたが、統計的に有意な増加ではなかった。また、セレンばく露群の出生児はセレン非ばく露群の出生児と比較して体重、身長に差はなく、先天性異常発生率の増加もなかった (ATSDR (2003))。 実験動物では雄ウサギに本物質を0.001 mg Se/kg/dayで6週間 (1回/週) 強制経口投与した結果、血清テストステロン値の有意な減少と精子形態異常 (先体欠損) の割合の増加がみられたとの報告、雄ラットに本物質を0.234 mg Se/kg/dayで12~14週間飲水投与した結果、精巣肥大がみられたとの報告など雄の性機能に有害影響を及ぼす報告がある (ATSDR (2003))。また、ラットに本物質やセレン酸ナトリウム (CAS番号 13410-01-0) を経口投与した試験で、体重増加抑制、発情周期の延長、黄体数・着床数、生存胎児数、出生児数の減少、出生児の低体重などが報告されている (環境省リスク評価第14巻 (2016)、NITE初期リスク評価書 (2008))。 以上、本物質を用いた動物試験結果、及び関連化合物であるセレン酸ナトリウムの分類結果 (平成28年度: 区分2 (生殖毒性)) を踏まえ、本項は区分2とした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、消化管) |
危険 |
H370 |
P308+P311
P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
ヒトでは、本物質約400 mg/kgを含む微生物用培養液を飲んだ23歳の女性が、吐き気、嘔吐、腹痛、吐血などの重度の胃腸炎の症状と急性腎不全を起こして入院し、心電図で心拍数増加、腎生検では近位尿細管上皮の壊死が認められたが、4週間の血液透析治療の後に回復したとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。また、自殺企図により本物質11mg Se/kg (本物質換算値: 24 mg/kg) を経口摂取した56歳の男性が、嘔吐、下痢、腹痛、重度の胃腸炎の症状を示したとの報告 (PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)) 及び本物質1.7 gを経口摂取した患者が重症の胃腸炎と一過性の心電図の変化を生じ、血中ビリルビン濃度の軽微な上昇がみられたとの報告 (HSDB (Access on August 2017)) がある。さらに、本物質ではないが、亜セレン酸 (CAS番号 7783-00-8) と硝酸及び硝酸銅を含む酸化皮膜処理剤ガンブルー (gun blue) の故意又は誤飲でグラム単位のセレンを摂取したことによる急性セレン中毒症で、重症の胃腸障害、神経系障害、呼吸不全症候群、心筋梗塞、腎不全がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。また、15歳の少女が、自殺企図によるセレン酸ナトリウム (CAS番号 13410-01-0) 約22 Se mg/kg (セレン酸ナトリウムの換算値: 約52.6 mg/kg) の経口摂取後に下痢及び脳波の異常を呈し、また血中ビリルビン濃度とアルカリホスファターゼ活性の上昇がみられたとの報告がある (ATSDR (2003)、HSDB (Access on September 2016))。以上の本物質及び他のセレン化合物のヒトでの経口摂取の影響の情報から、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、消化管) とした。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(皮膚、毛、爪、歯、中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器(男性)) |
危険 |
H372 |
P260
P264 P270 P314 P501 |
ヒトについては、本物質ではないが、食品のセレン濃度が高い中国湖北省恩施地域における脱毛や爪の形態変化を伴ったセレン中毒の報告 (環境省リスク評価第14巻 (2016)、IRIS (1991)、ATSDR (2003)) があり、さらにヘモグロビンの低下、斑状歯、皮膚病変、中枢神経系への影響 (末梢の麻痺、肢端触覚異常、四肢の痛み) が報告されている (IRIS (1991))。 本物質は水溶性であり、経口摂取により同様のセレン中毒を引き起こすと考えられる。 実験動物については、ラットに本物質を4~13週間混餌投与した複数の試験で、区分1に該当する用量 (亜セレン酸ナトリウムとして90日換算: 0.0044~1.88 mg/kg/day) で、肝臓 (小葉中心性び漫性小結節、類洞の拡張、肝細胞壊死、単核細胞の門脈浸潤など)、腎臓 (腎乳頭の変性、壊死)、血液系 (ヘモグロビン濃度の減少、脾臓の腫大)、精巣 (重量低下、精子の形態異常、精巣上体内精子数の減少) への影響がみられ (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2003))、また、モルモットに60日間混餌投与した試験で血液毒性 (貧血、リンパ球減少) が区分1の用量 (15 ppm= 0.75 mg Se/kg/日; 亜セレン酸ナトリウム90日ばく露換算: 1.09 mg/kg/day) で、ラットに2年間混餌投与した試験でも区分1相当量 (0.1 mg/kg/day) で肝臓 (肝臓実質の変性、過形成)、腎臓 (腎炎) への影響が認められたと報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2003))。 以上より、区分1 (皮膚、毛、爪、歯、中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)) とした。 なお、新たな情報源を用いたため旧分類と分類結果が異なった。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 |
- |
H401 |
P273
P501 |
甲殻類(ヨコエビ)96時間LC50 = 1.48 mg/L[0.676 mgSe/L 換算値](ECETOC TR91:2003、環境省リスク評価第14巻:2016 )であることから、区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 |
警告 |
H410 |
P273
P391 P501 |
水中での金属塩の挙動は不明であるが、金属は元素であるため難分解とみなされ、対水溶解度が898,000 mg/Lであり、魚類(ニジマス)の90日間NOEC(生存率)= 0.046 mg/L[0.021 mgSe/L 換算値](環境省リスク評価第14巻:2016)であることから、区分1とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データなし |
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。 また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。 * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。 * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。 ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。 他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |