GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 110-86-1
名称 ピリジン
物質ID H29-B-105
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成26年度   平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
   引火点20℃ (closed cup)、沸点115℃ (ICSC (J) (2000)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類はUN 1282、クラス3、PGⅡである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は482℃ (ICSC (J) (2000)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
   ラットのLD50値として、891 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012))、1,500 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、1,580 mg/kg (ATSDR (1992)) との報告に基づき、区分4とした。
   
1 急性毒性(経皮) 区分4


警告
H312 P302+P352
P362+P364
P280
P312
P321
P501
   ウサギのLD50値として、1,120 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、1,121 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との原典の異なる2件の報告があり、区分4に該当する。モルモットのLD50値として、1,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)、ChemID (Access on January 2018))、2,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2004)) との2件の報告があり、1件が区分3、1件が区分4に該当する。件数の多い区分を採用し、区分4とした。新たな情報源の使用により旧分類から区分を変更した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
   ラットの1時間吸入ばく露試験のLC50値として、8,800 ppm (4時間換算値: 4,400 ppm) (ACGIH (7th, 2004))、9,000 ppm (4時間換算値: 4500 ppm) (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012))、4時間吸入ばく露試験のLC50値として、4,900 ppm (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分4とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (27,452 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとして、ppmを単位とする基準値を適用した。
   
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
   ウサギを用いた皮膚刺激性試験において腐食性を示したとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) から、区分1とした。なお、本物質は刺激性を示す (PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2007))、弱い刺激性を示す (NITE初期リスク評価書 (2007)) との報告がある。
   
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
   皮膚腐食性/刺激性が区分1に分類されている。ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠) で、眼刺激性指数MMAS (Modified Maximum Average Score: AOIに相当、最大値110) が1日後に45.0で中程度の刺激性を示したとの記載 (ECETOC TR48(2) (1998)) や、別のウサギによる試験で眼刺激性はグレード7 (最大値10) で中等度の刺激性との記載 (PATTY (6th, 2012))、本物質のウサギの眼への適用で強度の眼刺激性による障害が生じたとの記載 (ACGIH (7th, 2004)) がある。よって、区分1とした。
   
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    マウスを用いたLLNA試験で陽性との報告 (NITE初期リスク評価書 (2007)) がある一方で、モルモットを用いた皮膚感作性試験では感作性はみられなかったとの報告 (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012)) があり、相反する試験結果があることから分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、染色体異常試験、マウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験でいずれも陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1992)、PATTY (6th, 2012)、IARC 77 (2000)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、NTP DB (Access on August 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2007)、IARC 77 (2000)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、ATSDR (1992)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on August 2017))。
   
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   本物質を出発原料として使用している製造工場の作業者に肺がん死亡のわずかな過剰がみられたが、有意差はなく、本物質など特定の化学物質ばく露との関連性はないと考えられた (IARC 77 (2000))。
   実験動物では2系統のラット及び1系統のマウスに2年間飲水投与した発がん性試験において、F344/Nラットの雄では400 ppmで尿細管腺腫の頻度増加、尿細管腺腫及びがんの合計頻度増加、同雌では200 ppm以上で単核細胞白血病の頻度増加が、Wistarラット (雄のみ使用) では400 ppmで精巣間細胞腺腫の頻度増加がみられた (NTP TR470 (2000)、ACGIH (7th, 2004))。マウスの試験では雌雄ともに肝芽腫を含む肝細胞悪性腫瘍の明らかな頻度増加が認められた (NTP TR470 (2000)、ACGIH (7th, 2004))。発がん性の証拠としては、雌雄マウスの肝細胞悪性腫瘍は明らかな証拠、雄ラットの尿細管腫瘍はある程度の証拠、その他は不確かな証拠と結論された (NTP TR470 (2000))。これらに対して、遺伝子改変雌マウスを用いた経皮適用試験 (最大6 mg/匹、20週間投与 (5日/週)) では本物質投与群で皮膚乳頭腫は認められなかったが、陽性対照群では全例 (15/15例) に皮膚乳頭腫がみられた。また、他の遺伝子改変 (p53+/-) 雌雄マウスを用いた飲水投与試験 (最大500 ppm (雌) 又は1,000 ppm (雄)、26週間投与) においても、投与群では腫瘍発生の増加はみられなかった。以上より、IARCは実験動物での発がん性の証拠は限定的として、グループ3に分類した (IARC 77 (2000))。一方、ACGIHは本物質は比較的高用量でげっ歯類に腫瘍を発生させるとしてA3に分類した (ACGIH (7th, 2004))。
   以上、遺伝子改変マウスを用いた2つの試験は陰性であったが、通常動物2種で明らかな又はある程度の発がん性の証拠が得られていることから、ACGIHの分類結果を支持し、区分2が妥当と判断した。
   
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、ラット又はマウスに13週間飲水投与した試験において、ラットでは高用量 (1,000 ppm: 90 mg/kg/day相当) で雌に性周期の延長、マウスでは250 ppm (50 mg/kg/day相当) 以上で精子運動能の低下がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、IARC 77 (2000))。旧分類では反復投与毒性試験でみられた影響 (精巣・精巣上体の萎縮、発情周期の延長) を基に区分2に分類されたが、いずれも軽微な影響のため分類根拠としなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)



危険
警告
H370
H335
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質は皮膚、眼、上部気道に対して刺激性を示すとの記述がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。症例としては、こぼれた本物質由来の蒸気を15~20分間吸入した女性が、会話障害を示したとの報告 (ACGIH (7th, 2004)、NITE初期リスク評価書 (2007))、ばく露濃度は不明であるが、本物質の入ったビンの破損により、蒸気を吸入ばく露した10人に頭痛、眼、鼻、喉の刺激、腹部の不快感、めまいが共通して認められ、うち数名は発熱、発汗、下痢、動悸、ふらつき、脱力感、悪寒、頭重感を訴えたとの報告 (PATTY (6th, 2012))、本物質の蒸気 (濃度、ばく露時間は不明) にばく露した健常成人 (複数) で、一過性の頭痛、めまい、嗜眠、頻脈、呼吸促迫がみられたとの報告 (ATSDR (1992)、NITE初期リスク評価書 (2007)) がある。実験動物では、ラットの単回経口投与試験で、毒性症状は活動性低下、筋力低下、呼吸困難、鎮静、粗毛及び死亡であったとの報告 (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012))、ラットの単回吸入ばく露試験で、毒性症状は流涙、鼻炎、不活発、過呼吸、鎮静、呼吸困難及び死亡であったとの報告 (ACGIH (7th, 2004))、ウサギの単回経皮ばく露試験で、500 mg/kg以上で嗜眠と体重減少が認められたとの報告 (PATTY (6th, 2012)) がある。更にPATTY (6th, 2012) には、実験動物一般に対する影響の記載として、全てのばく露経路でみられる主要な急性毒性影響は麻酔作用と刺激性であるとの記述がある。以上のヒトと実験動物の情報を総合して、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。旧分類がヒトでの呼吸器系への影響の根拠として使用したCERIハザードデータ集 (2002) は、現在はList 3の情報源であるため使用しなかった。また、List 1の情報源であるNITE初期リスク評価書 (2007) にはヒトでの本物質の誤飲の症例2例で、死後の剖検で肺のうっ血、肺水腫、気管支炎がみられたとの記載があるが、1例では嘔吐物の吸引の結果と考察されており、もう1例は1893年の古い症例で詳細が不明であり、分類根拠としては不十分と判断した。したがって旧分類から分類結果を変更した。
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、肝臓、腎臓、血液系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、本物質をてんかん治療薬として使用した例で、1日あたり1.85~2.46 mLの用量で約1ヵ月に亘って経口投与した5人のてんかん患者で、投薬期間中に食欲不振、悪心、嘔吐、腹痛及び腹部膨満感、頭痛、昏迷、倦怠感、抑うつ状態がみられた。また、その中の2例では血清総蛋白の減少や窒素血症、アルブミン尿症などが認められ、肝臓ならびに腎臓の障害が示されたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。また、職業ばく露の例では約125 ppm (405 mg/m3) の濃度のピリジン蒸気を1日4時間、1~2週間に亘って吸入した労働者で悪心、めまい、頭痛、不眠、神経過敏、頻尿を伴った腰部や腹部の不快感、食欲不振がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
   実験動物については、ラットを用いた13週間飲水投与試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である50 ppm (5 mg/kg/day) 以上でヘモグロビン・赤血球数・ヘマトクリット値の減少、100 ppm (10 mg/kg/day) 以上で肝臓重量増加、区分2のガイダンス値の範囲内である250 ppm (25 mg/kg/day) 以上で肝臓の色素沈着、500 ppm (55 mg/kg/day) 以上で胆汁酸の増加、肝臓の慢性炎症・色素沈着、小葉中心性肝細胞の肥大・変性、1,000 ppm (90 mg/kg/day) で死亡、ALT・SDH の増加、性周期の延長がみられた。なお、雄では全例で腎臓のα2uグロブリン陽性、500 ppm以上で腎臓の蛋白円柱・慢性炎症・鉱質沈着・再生尿細管、1,000 ppmで腎臓の顆粒円柱・硝子変性がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。また、ラットを用いた103~104週間飲水投与毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である100 ppm (7 mg/kg/day) 以上で肝臓の胆管過形成、肝臓の色素沈着、区分2のガイダンス値の範囲内である200 ppm (14 mg/kg/day) 以上で体重増加抑制、慢性腎症の増悪、肝臓の小葉中心性肝細胞の巨大細胞化、肝細胞の空胞化、400 ppm (33 mg/kg/day) で肝臓の小葉中心性肝細胞の変性及び壊死、腎臓の尿細管上皮過形成がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
   したがって、区分1 (神経系、肝臓、腎臓、血液系) とした。
   なお、新たな情報源を用いたため旧分類と分類結果が異なった。
   
10 吸引性呼吸器有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
   数オンス (1オンス=28.35 g) の経口摂取後に重度の嘔吐、下痢、高体温、せん妄をきたし、死亡した症例を剖検した結果、誤嚥によると考えられる呼吸器傷害 (肺浮腫及び気管・気管支炎) がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、HSDB (Access on August 2017))。よって、区分1とした。なお、旧分類以降の新しい情報源に基づき、分類結果を変更した。
   

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
   藻類(Selenastrum capricornutum) 72時間EC50(速度法)= 0.10 mg/L(環境省生態影響試験:2017)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
   急速分解性があり(良分解性、BODによる分解度:92,94,0%(化審法DB:1998))、蓄積性がなく(LogKow:0.65 (SRC PhysProp Database:2017))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の 72時間NOEC(速度法)= 0.01 mg/L(環境省生態影響試験:2017)であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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