GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 100-63-0
名称 フェニルヒドラジン
物質ID H30-B-004-MHLW, MOE
分類実施年度 平成30年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団(隣接した窒素原子)を含むが、UNRTDGでクラス6.1(UN2572)に分類されているので、優先評価項目である爆発物には該当しない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - 40℃及び60℃における蒸気圧は、それぞれ148.2 mmHg(約19.8 kPa)及び158.7 mmHg(約21.2 kPa)(Lange(2005))であり50℃において300 kPaを下回る。また、無色の液体(化学薬品の混触危険ハンドブック(1997))などの情報が得られており、完全にガス状ではないことに加え、融点も19.5℃(Lange(2005))であり20℃以下であることから、GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4
-
警告
H227 P370+P378
P403+P235
P210
P280
P501
引火点が88℃(closed cup)(HSDB(Accessed Jun. 2018))である。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団(隣接した窒素原子)を含むが、UNRTDGでクラス6.1(UN2572)に分類されているので、優先評価項目である自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- - 発火点は173℃(HSDB(Accessed Jun. 2018))であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- - 金属及び半金属(B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分3とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50値:188 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2013))
1 急性毒性(経皮) 区分2


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50値:90 mg/kg(PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)、(2)は飽和蒸気圧(98.7 ppm)を超えるためミスト状態と考えられるが、いずれもばく露時間の記載がないため分類に利用できない。

【参考データ等】
(1)ラットのLC50値:2.745 mg/L(610 ppm)(CICAD 19(2000))
(2)マウスのLC50値:2.093 mg/L(465 ppm)(CICAD 19(2000))
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1)~(4)より、多くの所見は刺激性を示しており、区分2とした。

【根拠データ】
(1)フェニルヒドラジン塩酸塩粉末に偶発的にばく露した労働者の接触部位(腕)において、表面紅斑と水泡性の皮膚隆起が見られたとの報告がある(CICAD 19(2000)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
(2)フェニルヒドラジン塩酸塩粉末に偶発的にばく露した労働者の接触部位(手袋や靴を介しての手や足)において、複数の火傷や小さな水疱が見られたとの報告がある(CICAD 19(2000)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
(3)ヒトへの刺激性が複数報告されているとの情報がある(DFGOT vol.11(1998))。
(4)ウサギ、ラット、モルモットを用いた動物試験データにおいて、高い頻度で皮膚刺激(紅斑)を生じており、一部に壊死と脱落(sloughing)が観察されたとの報告がある(Fundam Appl Toxicol. 1987, 8(4), 583-94)。

【参考データ等】
(5)厚生労働省は、本物質に対して刺激性/腐食性があると結論づけている(厚労省初期リスク評価書(2013))。
(6)EU CLPでは本物質をSkin Irrit. 2に分類している。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分2とした。なお、細区分可能な情報は得られていないため、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた眼刺激性試験で本物質を適用したところ、重度の化膿性結膜炎が認められたとの報告がある(CICAD 19(2000))。
(2)フェニルヒドラジン及び特にその塩酸塩は眼刺激性を示すとの情報がある(DFGOT vol.11(1995))。

【参考データ等】
(3)厚生労働省は本物質の眼に対する重篤な損傷性/刺激性について、「なし」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。
(4)EU CLPでは本物質をEye Irrit. 2に分類している。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、呼吸器感作性を示唆する情報(1)もあるが、詳細不明のため分類判断には用いなかった。

【参考データ等】
(1)本物質を使用中の部屋に入った途端に呼吸器誘発によるアレルギー症状の再発がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1995))。
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
【分類根拠】
(1)~(5)より、区分1とした。

【根拠データ】
(1)本物質の皮膚感作性は、化学工業の労働者、実験技師、学生、化学者に対する臨床症状と疾患の経過によって実証されているとの報告がある(DFGOT vol.11(1995))。
(2)被験者(1名)の腕にフェニルヒドラジン結晶を適用するパッチテストを実施したところ、適用部位において18時間後に顕著な紅斑と浮腫が発生し、30時間後に水疱が形成され、54時間後には痂皮が形成されたとの報告がある(CICAD 19(2000))。
(3)フェニルヒドラジン及びその塩の固体又は水性溶液への皮膚適用後に、過敏症の反応がみられたとの報告がある(CICAD 19(2000))。
(4)既知の皮膚感作物質であるヒドラジンに既に感作されている被験者は、本物質を含むヒドラジン誘導体にも感作される、いわゆる交差感作に係る報告がある(CICAD 19(2000))。
(5)モルモットを用いた皮膚感作性試験では、7/8匹に感作を生じさせ、2/7匹は中~強程度の反応、5/7匹は弱~中等度の反応がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1995)、Br J Ind Med. 1967, 24(3), 189-202)。

【参考データ等】
(6)厚生労働省は本物質を皮膚感作性ありと結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。
(7)EU CLPでは本物質をSkin Sens. 1に分類している。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、マウス骨髄を用いた染色体異常試験及び小核試験で陽性、マウス末梢血赤血球を用いた小核試験で陽性、マウスの肝臓及び肺のアルカリ溶出試験で陽性、ラット肝臓のDNA付加体試験で陽性の報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOT vol. 11(1998)、CICAD 19(2000)、厚労省初期リスク評価書(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
(2)In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、同小核試験、同遺伝子突然変異試験、げっ歯類の初代肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陽性の報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOT vol. 11(1998)、CICAD 19(2000)、厚労省初期リスク評価書(2013))

【参考データ等】
(3)本物質は国による変異原性試験(細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験)の結果、強い変異原性が認められ(安衛法既存化学物質変異原性試験結果(Accessed Jun. 2018))、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」の対象物質に指定されている(厚労省 職場のあんぜんサイト(Accessed Jun. 2018))。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。
(1)、(2)より本物質の発がん性の証拠は動物種1種に限られているが、複数の試験で悪性腫瘍を含む腫瘍性病変が認められ、かつ1試験で雌雄に影響が認められていること、及びEUの分類結果も踏まえて、区分1Bが妥当と判断した。なお、厚生労働省も本物質は「ヒトに対しおそらく発がん性がある」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2013))。

【根拠データ】
(1)マウスに1 mg/匹/day(50 mg/kg/day相当)を42週間経口投与後に肺に悪性腫瘍及び総腫瘍の発生頻度増加がみられた(CICAD 19(2000)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol. 11(1998)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。
(2)マウスに本物質塩酸塩を100 ppmの濃度で生涯飲水投与した試験で、雌雄ともに血管腫瘍(血管腫、血管肉腫)の発生頻度増加がみられた(ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol. 11(1998)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。
(3)国内外の分類機関による既存分類では、ACGIH がA3(ACGIH(7th, 2001))、EU CLPではCarc. 1Bに分類している。

【参考データ等】
(4)マウスに最初5週間は0.5 mg、その後0.25 mgで全体では40週間経口投与(5日/週)した試験では、有意な腫瘍性影響はみられていない。本試験では顕著な貧血が生じたため、高用量投与で試験を実施できなかった(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、DFGOTvol.11(1998))。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1)妊娠17~19日のラットを用いた腹腔内投与による試験では、7.5 mg/kg/dayの投与により胎児の死亡率が増加したが、親動物への影響は不明であった(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
(2)妊娠18~19日のラットを用いた腹腔内投与による試験では、15 mg/kg/dayの投与により胎児の死亡率が増加したが、親動物への影響は不明であった(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(血液系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分1(血液系)とした。(4)より、単回ばく露ではないが、イヌの急性影響から想定される標的臓器毒性のうち、肝臓、腎臓、脾臓への影響は溶血性貧血による二次的影響と考えられる。また、精巣への影響は重篤な毒性に起因した全身状態の悪化を反映した非特異的な所見の可能性が考えられ、いずれも標的臓器としなかった。

【根拠データ】
(1)本物質のヒトにおける急性中毒症の主な影響はメトヘモグロビン血症である(DFGOT vol. 11(1998))。
(2)ヒトで液化フェニルヒドラジンに経皮ばく露後に皮膚を洗浄したにも関わらず、赤血球破壊による溶血性黄疸など全身症状がみられたとの症例報告がある(厚労省初期リスク評価書(2013))。

【参考データ等】
(3)動物種、用量は不明であるが、本物質の急性影響は神経毒性、チアノーゼ、低体温、血尿、嘔吐、痙攣、肝臓及び腎臓の変性様変化であるとの記述がある(ACGIH(7th, 2001))。
(4)イヌに20~40 mg/kgを2日間皮下投与した結果、溶血性貧血、赤血球中にハインツ小体、血尿、メトヘモグロビン血症、脾腫、肝肥大、曲尿細管におけるヘモグロビンの充満を伴う腎肥大、さらに精子形成低下が認められたとの報告がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書(2013))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(血液系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分1(血液系)とした。なお、(4)、(5)はばく露時間やばく露期間が不明のため、分類に利用できない。

【根拠データ】
(1)経皮及び吸入経路を介した職業ばく露により、溶血性貧血がみられたとの複数の事例がある(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(6th, 2012))。
(2)ボランティアに本物質の塩酸塩を30 mg/day(0.4 mg/kg)の用量で8日間経口投与後に輸血赤血球の溶血が0~10%のレベルで生じたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。
(3)赤血球増多症の治療に本物質を100 mg/dayの用量で経口投与中に黄疸、貧血及び浮腫が副作用としてみられたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。

【参考データ等】
(4)ラットに1.5 mg/m3の濃度で3~4ヵ月間吸入ばく露後に血液パラメータの軽度な変化を認めたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。
(5)ラットに21 mg/m3を6ヵ月間吸入ばく露後に血液毒性を認めたとの報告、及び210 mg/m3の短期ばく露(ばく露期間不明)では死亡例が生じ、血液毒性に加えて、肝臓、脾臓、及び脳に変性様変化を認めたとの報告がある(DFGOT vol. 11(1998))。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50(遊泳阻害)= 0.016 mg/L、魚類(メダカ)96時間LC50 = 0.016 mg/L(ともに環境省生態影響試験: 2018)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく、急性毒性区分1であることから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

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