政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 108-24-7
名称 無水酢酸
物質ID R01-B-021
分類実施年度 令和元年度(2019年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成30年度   平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
2 可燃性ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
3 エアゾール
-
-
- - エアゾール製品でないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
4 酸化性ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
5 高圧ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点49℃ (closed cup) (ホンメル (1991)) に基づいて区分3とした。
7 可燃性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
8 自己反応性化学品
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
9 自然発火性液体
-
-
- - 発火点が330℃ (ホンメル (1991)) との情報より、常温で発火しないと考えられるため、ガイダンスにおける区分に該当しないに相当し、区分に該当しない。
10 自然発火性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
13 酸化性液体
-
-
- - 塩素及びフッ素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素及び水素以外の元素と結合していないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
14 酸化性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
15 有機過酸化物
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 区分1


警告
H290 P234
P390
P406
「多くの金属を侵す (ICSC (2006))」 との情報及び「湿気と結合して鉄と鋼を強く腐食する (ホンメル (1991))」との情報より、区分1とした。なおUNRTDGにおいて、UN 1715、クラス8、副次3、PGⅡに分類されている。
17 鈍性化爆発物
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
【分類根拠】
(1)~(3) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 630 mg/kg (DFGOT vol.13 (1999))
(2) ラットのLD50:1,780 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、ACGIH (7th, 2011)、DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991)、HSDB (Access on June 2019))
(3) ラットのLD50:1,800 mg/kg (SIDS (2002))
1 急性毒性(経皮)
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) ウサギのLD50:4,000~4,320 mg/kg (ACGIH (7th, 2011))
(2) ウサギのLD50:4,000 mg/kg (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991)、HSDB (Access on June 2019))
1 急性毒性(吸入:ガス)
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3


危険
H331 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P311
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分3とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気濃度 (6,711 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間):1,000 ppm (SIDS (2002)、HSDB (Access on June 2019))
(2) ラットのLC50 (4時間):4.2 mg/L (約1,005.9 ppm) (BUA 70 (1991))

【参考データ等】
(3) ラットの4時間吸入:1,000 ppmで全例生存 (ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991))
(4) ラットの4時間吸入:2,000 ppmで全例死亡 (ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、SIDS (2002)、BUA 70 (1991))
(5) ラットの4時間吸入:1,000 mL/m3 (1,000 ppm) で全例生存 (DFGOT vol.13 (1999))
(6) ラットの4時間吸入:2,000 mL/m3 (2,000 ppm) で全例死亡 (DFGOT vol.13 (1999))
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト)
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は眼、粘膜及び皮膚に重度の刺激を示し、液体の飛沫による重度の火傷および皮膚の水疱形成が報告されている (ACGIH (7th, 2001))。
(2) ウサギに本物質を24時間閉塞適用した皮膚刺激性試験で火傷と水疱形成を示した (ACGIH (7th, 2011))。
(3) 本物質は皮膚、眼、粘膜に対し腐食性を有する (SIDS (2002))。
(4) 本物質は皮膚と眼を激しく刺激し、液体に直接接触すると火傷を生じる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、HSDB (Access on June 2019))。

【参考データ等】
(5) ウサギに本物質0.5 mLを24時間適用した皮膚刺激性試験で軽度刺激性 (mildly irritative) と報告されている (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002))。
(6) EU-CLP分類でSkin Irrit. 1B (H314) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) ウサギに5%溶液を0.005 mL適用した眼刺激性試験で強度刺激性 (strongly irritative) を示した (DFGOT vol.13 (1999))。
(2) 本物質は眼、粘膜及び皮膚に重度の刺激を示し、液体の飛沫による重度の火傷及び皮膚の水疱形成が報告されている。また、5 ppmの蒸気は眼、上気道を刺激する。眼に対する障害は即時性の火傷として特徴づけられ、その後、角膜及び結膜浮腫の程度が重症化する (ACGIH (7th, 2001))。
(3) 本物質は強刺激性物質あるいは腐食性物質である。ばく露濃度に依存して眼の火傷、流涙、角膜及び結膜の浮腫、角膜混濁を生じる。重度の角膜に対する腐食作用は失明につながる (DFGOT vol.13 (1999))。
(4) 本物質は皮膚と眼を激しく刺激し、液体に直接接触すると火傷を生じる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990)、HSDB (Access on June 2019))。
(5) 皮膚腐食性 (区分1) に分類されている。
4 呼吸器感作性
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2)の記載はあるが、詳細が確認できず、データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1) モルモットを用いた皮膚感作性試験法 (0.05 mLを週2回、2-2.5週間皮内投与、25%溶液で惹起) において感作性反応があったと記載がある (ACGIH (7th, 2011)、SIDS (2002))。
(2)皮膚に対する感作作用が認められる (産衛学会許容濃度提案理由書 (1990))。
5 生殖細胞変異原性
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) よりin vivo、in vitroを含む標準的組合せ試験でいずれも陰性であったことから、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット骨髄の小核試験で陰性の報告がある (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (DFGOT vol.13 (1999)、SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2011)、NTP DB (Access on June 2019))。
6 発がん性
-
-
- - 【分類根拠】
(1) の既存分類結果から、ガイダンスに従い分類できないとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2011)) に分類されている。

【参考データ等】
(2) 本物質及び本物質の加水分解生成物である酢酸 (CAS番号 64-19-7) を製造していた化学工場の作業者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果、前立腺がんによる死亡のSMR (標準化死亡比) は330 (前立腺がんの死亡期待値1.8人 vs 観察された死亡数6人) であったが、本物質へのばく露は検出限界未満 (酢酸は0.1~1.2 ppm) とされ、ばく露期間との関連性もみられなかった (ACGIH (7th, 2011))。
7 生殖毒性
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(3)より加水分解物の酢酸 (CAS番号 64-19-7) は発生毒性を生じないと考えられる。

【参考データ等】
(1) 雌ラットの妊娠6~15日に吸入ばく露した発生毒性試験のスクリーニング試験において、母動物毒性 (重度の気道刺激性および体重減少) がみられる濃度で、4例中2例に全胚吸収がみられている (SIDS (2002))。このデータは妊娠動物数が4匹と少なく十分なデータではない。
(2) 雌マウスの妊娠11~13日に腹腔内注射した発生毒性試験において胎児の異常がみられたとの記載があるが、母体への影響、または胎児への特定の影響に関する情報はない (SIDS (2002))。
(3) 無水酢酸の加水分解生成物である酢酸は、ウサギの妊娠6日~18日に5%酢酸を経口投与した試験で催奇形性を示さなかったとの記載がある (SIDS (2002))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(3) のヒトでの報告より、区分1 (呼吸器) とした。旧分類は (4) の情報に基づいて区分3 (麻酔作用) としていたが、詳細が不明であるため、不採用とした。したがって分類結果を変更した。なお、酢酸 (CAS番号 64-19-7) では (5) のように、ヒトで大量の経口摂取による血液系への影響が報告されているが、本物質に関して同様の影響が生じる可能性は低いと考えられる。

【根拠データ】
(1) ヒトでは濃度5 ppm以上の本物質の蒸気のばく露により、眼と上気道の刺激を生じる。更に高濃度でのばく露により、鼻粘膜の潰瘍と気管支痙攣を起こす可能性がある (DFGOT vol.13 (1999)、ACGIH (7th, 2011))。
(2) 22歳の染色作業労働者 (男性) 1名が、本物質の入ったドラム缶の爆発により、本物質のばく露を受けて、体表の35%に重度の熱傷を生じた。熱傷は3週間以内に治癒したが、肺水腫の発症の後に両側性肺気胸症 と肺気管支性瘻孔を生じた。患者は事故の2ヵ月後に死亡し、剖検で胸膜腔に線維性の癒着が認められた (ACGIH (7th, 2011)、HSDB (Access on June 2019))。
(3) 工場での事故により、本物質と酢酸のエアロゾルのばく露を受けた労働者が、眼と上気道の重度の刺激、激しい咳及び呼吸困難を示した。入院した18名のうち、14名が重度の結膜炎と急性咽喉炎、12名が角膜混濁、11名が鼻の熱傷、12名が反応性気道機能不全症候群を示したが、5~25日以内に全員が回復した (ACGIH (7th, 2011)、HSDB (Access on June 2019))。

【参考データ等】
(4) ヒトで高濃度の本物質のばく露により眠気、めまい、昏睡を伴う中枢神経系抑制がみられた (SIDS (2002))。
(5) 本物質の加水分解生成物である酢酸では、ヒトで大量の経口摂取により血液系への影響 (播種性血管内凝固障害、重度の溶血) を生じた複数の症例が報告されている (ACGIH (7th, 2004)、PATTY (6th, 2012))。しかしながら吸入ばく露では同様の影響の報告はない。本物質に関しては、ヒトでの経口ばく露の報告はなく、本物質の激しい臭気のために、経口摂取は考えにくいと記載されている (GESTIS (Access on September 2019))。他の経路では、(2)、(3) の事故によるばく露例も含めて血液系への影響の報告はない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1) より、区分1 (呼吸器) とした。

【根拠データ】
(1) ラットに本物質の蒸気1~20 ppmを13週間 (6時間/日、5日/週) 吸入ばく露した試験で、5 ppm (ガイダンス値換算: 0.015 mg/L、区分1の範囲) で気道 (鼻腔、喉頭、気管) の軽度の刺激を示す病理組織所見、20 ppm (ガイダンス値換算: 0.06 mg/L、区分1の範囲) で眼及び気道刺激を示す症状、体重減少、気道 (鼻腔、喉頭、気管、肺) の軽度~中等度の刺激を示す病理組織所見がみられた。観察された病理組織学的変化は、上皮過形成及び/又は扁平上皮化生を伴う主に局所的な炎症性病変であった (SIDS (2002)、ACGIH (7th, 2011))。
10 誤えん有害性
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- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) -
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11 水生環境有害性 長期(慢性) -
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12 オゾン層への有害性 -
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分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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