政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 108-57-6
名称 m-ジビニルベンゼン
物質ID R01-B-100
分類実施年度 令和元年度(2019年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
2 可燃性ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
3 エアゾール
-
-
- - エアゾール製品でないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
4 酸化性ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
5 高圧ガス
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
6 引火性液体
-
-
- - データがなく分類できない。
なお、o-,p-,m-の異性体混合物 (CAS番号1321-74-0) について、引火点76℃ (open cup) (ICSC (1997)) との情報があり「区分4」と推測されるが、混合比が不明なため採用しなかった。
7 可燃性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
8 自己反応性化学品
-
-
- - 分子内に自己反応性に関連する原子団として不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体
-
-
- - データがなく分類できない。
なお、o-, p-, m-の異性体混合物 (CAS番号 1321-74-0) の発火点は500℃ (ICSC (1997)) との情報から、「区分に該当しない」と推測されるが、混合比が不明なため採用しなかった。
10 自然発火性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品
-
-
- - 液体状の物質に適した試験法が確立していないため、分類できない。
12 水反応可燃性化学品
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
13 酸化性液体
-
-
- - 塩素、フッ素及び酸素を含まない有機化合物であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
14 酸化性固体
-
-
- - GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
15 有機過酸化物
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品
-
-
- - データがなく分類できない。
17 鈍性化爆発物
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口)
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

【参考データ等】
(1) ラットのLD50 (異性体混合物): 5 mL/kg (4,570 mg/kg) (環境省リスク評価書第14巻 (2016))
(2) ラットのLD50 (異性体混合物): > 2,000 mg/kg (環境省リスク評価書第14巻 (2016))
1 急性毒性(経皮)
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス)
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
1 急性毒性(吸入:蒸気)
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト)
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) 本物質の異性体混合物は皮膚及び眼に対して、中等度の刺激性を有する (PATTY (6th, 2012))。

【参考データ等】
(2) EU-CLP分類でSkin Irrit. 2 (H315) に分類されている (EU CLP分類 (Access on November 2019))。

3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) 本物質の異性体混合物は皮膚及び眼に対して、中等度の刺激性を有する (PATTY (6th, 2012))。
(2) 本物質の異性体混合物 (0.1mL) のウサギの眼への適用は適用30秒以内に、中等度の痛み、不快感を呈すが、これらの症状は1時間以内に消失するが、結膜の発赤は適用8日後まで持続した (ACGIH (7th, 2001) Divinyl Benzene (異性体混合物))。

【参考データ等】
(3) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H319) に分類されている (EU CLP分類 (Access on November 2019))。
4 呼吸器感作性
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。なお、本物質は異性体別のデータは確認できなかったため、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。そのため旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ジビニルベンゼン異性体混合物 (CAS番号 1321-74-0) について、in vivoでは、マウスの小核試験で陰性と陽性、染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある (NTP TR534 (2006)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
(2) ジビニルベンゼン異性体混合物について、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験及びマウスリンフォーマ試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
6 発がん性
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。本物質を含む異性体混合物の発がん性試験結果 (1)、(2) を用いた場合は、分類できないとなる。

【参考データ等】
(1) ラットに本物質を含む異性体混合物DVB-80 (m-ジビニルベンゼン (本物質) 60.3%、p-ジビニルベンゼン21.6%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雄で尿細管がん及び脳に悪性神経膠細胞腫瘍 (2匹が星状膠細胞腫、1匹が乏突起膠細胞腫) がみられ、これらは自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雄ラットには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、環境省リスク評価書第14巻 (2016)、PATTY (6th, 2012))。
(2) マウスに本物質を含む異性体混合物DVB-80 (m-ジビニルベンゼン (本物質) 60.3%、p-ジビニルベンゼン21.6%) を2年間吸入ばく露させた試験で、雌で肺腫瘍の発生率が自然発生率の範囲を超えていた。これより、NTPは雌マウスには発がん性の曖昧な証拠 (equivocal evidence) があると結論した (NTP TR534 (2006)、環境省リスク評価書第14巻 (2016)、PATTY (6th, 2012))。
7 生殖毒性 区分2


警告
H361 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1) より、異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) では、親動物毒性がみられる用量で生殖毒性がみられており、区分2に分類される。異性体別の情報はなく異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果が変更となった。

【根拠データ】
(1) 異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) のラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、1,000 mg/kg/dayで親動物の一般毒性として雌雄で体重増加抑制、雄でALT、GGT増加等、雌で死亡あるいは瀕死 (各1例)、腎臓の皮髄境界部尿細管の変性・壊死等がみられ、乳腺の発育不良及び巣作り不良、7/9例で新生児が全例死亡、黄体数及び着床痕数の低値がみられ、また総出産児数、哺育0日の新生児数、出生率、哺育4日の生存児数及び生存率の低値、分娩率及び児の産出率の低値傾向がみられている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2019))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性)


警告
H336
H335
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
P405
P501
【分類根拠】
異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) に関する (1)、(2) の情報から、区分3 (麻酔作用、気道刺激性) とした。 (3) でみられた死亡例での肝臓傷害の所見に関しては、原典情報がなく詳細確認不能であることから根拠としなかった。異性体別の情報がなく各異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果が変更となった。

【根拠データ】
(1) 異性体混合物であるジビニルベンゼン (各異性体の混合比不明) に急性吸入ばく露された労働者で呼吸器に対して軽度の刺激症状がみられ、皮膚および眼への接触により軽度の刺激症状がみられた (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価書第14巻 (2016))。
(2) ジビニルベンゼン (各異性体の混合比不明) をラットに3,312 ppmで7時間単回吸入ばく露した試験で、鼻汁、鼻炎、体重減少と嗜眠がみられた (ACGIH (7th, 2001))。

【参考データ等】
(3) 本物質とm-ジビニルベンゼン (CAS番号 108-57-6) を各々約21%及び約60%含有するジビニルベンゼンをマウスに400 ppmで6時間単回吸入ばく露した結果、全例が死亡した。剖検により肝臓の傷害 (変性、壊死) が認められた。200 ppmの単回ばく露では、死亡例はなかった (GESTIS (Access on October 2019))
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
異性体混合物であるジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) に関する (1)~(4) の情報から、区分1 (呼吸器) とした。異性体別の情報がなく各異性体毎の分類は困難であることから、異性体混合物のデータを用いて分類を行った。したがって旧分類から分類結果を変更した。

【参考データ等】
(1) 本物質を約60%含むジビニルベンゼン (CAS番号 1321-74-0) を用いたラットの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.4 mg/L、区分2の範囲) 以上で嗅上皮の基底細胞過形成、200 ppm (0.8 mg/L、区分2の範囲) で嗅上皮の変性がみられた (NTP TR534 (2006))。
(2) 本物質を約60%含むジビニルベンゼンを用いたマウスの14週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、全てのばく露群 (12.5~200 ppm (ガイダンス値換算: 0.05~1.1 mg/L、区分1の範囲~区分2超) の雌雄で鼻腔側壁、嗅上皮と嗅腺の壊死がみられ、雌では嗅上皮と嗅腺の萎縮を伴っていた。200 ppm (ガイダンス値換算: 1.1 mg/L、区分2超) の雄全例 (10/10) と雌9/10例が死亡し、死亡例では肝臓と腎臓の壊死がみられた (NTP TR534 (2006))。
(3) 本物質を約60%含むジビニルベンゼンを用いたラットの105週間吸入ばく露試験 (6時間/日、5日/週) では、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.5 mg/L、区分2の範囲) 以上の全ばく露群で鼻腔嗅上皮の変性及び再生様変化、400 ppm (2.1 mg/L) の雄では肺の限局性慢性炎症の増加、腎尿細管の過形成及び腎症の頻度増加がみられた (NTP TR534 (2006))。
(4) 本物質を約60%含むジビニルベンゼンを用いたマウスの105週間吸入暴露試験 (6時間/日、5日/週) では、10 ppm (ガイダンス値換算: 0.05 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌雄の異型性の細気管支過形成の増加、30 ppm (ガイダンス値換算: 0.16 mg/L、区分1の範囲) 以上の雌で肺胞上皮の過形成の程度と頻度の増加がみられた (NTP TR534 (2006))。
10 誤えん有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 炭化水素である。
(2) 動粘性率が20℃で1.17 mm2/s (20℃での粘性率1.09 mPa・s (HSDB (Access on November 2019)) と密度0.9294 g/cm3 (HSDB (Access on November 2019)) から算出) であることから、40℃の動粘度が20.5 mm2/s以下である。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分に該当しない
-
-
- - 本物質単独での毒性データは得られなかった。p-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の急性毒性データを用いた場合、藻類(セレナストラム)72時間ErC50 = 1830 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 1870 mg/L、魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 4160 mg/L(いずれも環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分に該当しない
-
-
- - 本物質は急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(通産省公報, 1988))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow = 3.8(KOWWIN))が、単独での毒性データは得られなかった。
p-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の慢性毒性データを用いた場合、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 353 mg/L(環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対してp-体との混合物(純度80.2%、混合比不明)の急性毒性データを用いた場合、魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 4160 mg/L(環境省リスク評価第14巻, 2016)であることから、区分に該当しないとなる。
以上の結果から、区分に該当しないとした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
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- - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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