政府によるGHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 87-86-5
名称 ペンタクロロフェノール
物質ID R02-B-027-MHLW, MOE
分類実施年度 令和2年度(2020年度)
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 2006年度(平成18年度)   2014年度(平成26年度)  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver.2.0))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
2 可燃性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
3 エアゾール 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - エアゾール製品でないため、区分に該当しない。
4 酸化性ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
5 高圧ガス 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
6 引火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
7 可燃性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (HSDB (Access on April 2020)) との情報より、区分に該当しない。
8 自己反応性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないため、区分に該当しない。
9 自然発火性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
10 自然発火性固体 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (HSDB (Access on April 2020)) との情報より、区分に該当しない。
11 自己発熱性化学品 区分に該当しない
-
-
- - 不燃性 (HSDB (Access on April 2020)) との情報より、区分に該当しない。
12 水反応可燃性化学品 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいないため、区分に該当しない。
13 酸化性液体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
14 酸化性固体 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - フッ素を含まず、酸素及び塩素を含む有機化合物であるが、この酸素及び塩素が炭素及び水素以外の元素と結合していないため、区分に該当しない。
15 有機過酸化物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物であり、区分に該当しない。
16 金属腐食性化学品 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していないため、分類できない。
17 鈍性化爆発物 区分に該当しない(分類対象外)
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含まないため、区分に該当しない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(7) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 27~175 mg/kg (IARC 53 (1991))
(2) ラットのLD50: 80~120 mg/kg (ATSDR (2001))
(3) ラットのLD50: 80~175 mg/kg (NTP TR483 (1999))
(4) ラットのLD50: 150~200 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))
(5) ラットのLD50: 150 mg/kg (EHC 71 (1987))
(6) ラットのLD50: 雄: 146 mg/kg、雌: 175 mg/kg (EHC 71 (1987))
(7) ラットのLD50: 雄: 155 mg/kg、雌: 137 mg/kg (EPA Pesticides RED (2008))
1 急性毒性(経皮) 区分2


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(5) より、区分2とした。旧分類が使用したPatty (4th, 1999) のデータ (40 mg/kg) は、Patty (6th, 2012) では確認できなかったため、新たな情報源を使用した。したがって旧分類から分類結果が変更になった。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 96~330 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))
(2) ラットのLD50: 105 mg/kg (MOE初期評価第1巻 (2002))
(3) ラットのLD50: 149 mg/kg (MAK (DFG) vol.3 (1992))
(4) ラットのLD50: 320 mg/kg (EHC 71 (1987)
(5) ラットのLD50: 330 mg/kg (EHC 71 (1987)
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。


1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。


2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質へばく露は皮膚及び眼に刺激性を示す (ATSDR (2001)、EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(2) 急性毒性の結果から本物質は中等度から重度の眼刺激性、軽度の皮膚刺激性を有すると考えられる (ACGIH (7th, 2014))。
(3) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で中等度の刺激性が72時間後にも認められた (EPA Pesticides RED (2008))。
(4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質へばく露は皮膚及び眼に刺激性を示す (ATSDR (2001)、EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(2) 本物質のダストは眼を刺激する (ACGIH (7th, 2014))。
(3) 急性毒性の結果から本物質は中等度から重度の眼刺激性、軽度の皮膚刺激性を有すると考えられる (ACGIH (7th, 2014))。
(4) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で角膜の所見が適用7日後にも認められた (EPA Pesticides RED (2008))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
4 皮膚感作性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) EPA OPPTS 870.2600に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (2008))。
5 生殖細胞変異原性 区分に該当しない
-
-
- - 【分類根拠】
(1)、(2) より、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット骨髄及びマウス骨髄の小核試験で陰性、ラット肝細胞の染色体異常試験で陰性、ラット肝細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性、トランスジェニックマウスを用いた肝臓遺伝子突然変異で陰性の報告がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験でほとんど陰性であるが、一部陽性 (TA98(S9+)) の報告がある。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験で陽性、ヒトリンパ球の染色体異常試験で陽性、陰性、ヒトリンパ球の姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある。ヒト粘膜細胞や哺乳類培養細胞を用いたDNA損傷試験で陽性、陰性の結果の報告がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。

【参考データ等】
(3) ヒトのデータでは、少数の作業員に基づいた結果であるが、本物質にばく露された作業員の末梢血リンパ球において、染色体異常で陽性、陰性、姉妹染色分体交換で陰性の知見がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。
6 発がん性 区分1A


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)~(6) より、IARCがヒトでも実験動物でも発がん性の十分な証拠があるとしてグループ1に分類していることに基づき、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ1 (IARC 117 (2019))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2014))、EPAでL (likely to be carcinogenic to humans) (IRIS (2010))、NTPでペンタクロロフェノールとその合成副産物に対してR (Reasonably anticipated to be human carcinogens) (NTP RoC (14th, 2016))、MAK (DFG) で2 (DFG List of MAK and BAT values (2019))、EU CLPで2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 本物質へのばく露に関連するがんのリスクに関する疫学研究として4つの職業コホート研究と7つの症例対照研究が報告されており、本物質へのばく露後の非ホジキンリンパ腫 (NHL) のリスク上昇が4つのコホート研究と3つの症例対照研究で報告された。カナダの14の製材所で少なくとも1年間雇用された男性労働者27,000人を対象としたコホート研究では、本物質への累積ばく露量とNHL及び多発性骨髄腫の発生率に有意な正の相関があった。米国の化学会社が1937年から1980年の間に雇用した本物質生産労働者の小規模コホート研究では、本物質へのばく露によるNHLからの死亡率で有意な増加が認められた (IARC 117 (2019))。
(3) 雌雄のマウスに本物質 (純度90.4%) を2年間混餌投与した発がん性試験において、雄では肝細胞腫瘍 (腺腫及びがん) 及び副腎の褐色細胞腫、雌では血管肉腫の発生率の有意な増加がみられた。これより、本物質の発がん性に関して、雄マウスでは明らかな証拠 (clear evidence) が、雌マウスではある程度の証拠 (some evidence) があると結論された (NTP TR349 (1989)、IARC 117 (2019))。
(4) 雌雄のラットに本物質 (純度99%) を2年間混餌投与した発がん性試験において、雄では悪性中皮腫の発生率の有意な増加と鼻腔の扁平上皮がんの増加がみられた。雌では腫瘍の発生はみられなかった。これより、本物質の発がん性に関して、雌ラットでは証拠は得られず (no evidence)、雄ラットではある程度の証拠 (some evidence) があると結論された (NTP TR483 (1999)、IARC 117 (2019))。
(5) 雌のトランスジェニックマウスに本物質を20週間又は26週間経皮適用した試験では、皮膚乳頭腫の発生率の有意な増加が認められた。マウスで3つのイニシエーション-プロモーション試験 (混餌) が実施され、肝細胞腺腫又はがん、肝臓の胆管腫及び胆管がんの発生が促進された (IARC 117 (2019))。
(6) 本物質の発がん性の作用機序として、①酸化ストレス及び②遺伝毒性の誘発、③受容体介在性影響(抗エストロゲン作用)、④細胞増殖、⑤その他細胞死又は栄養素供給の変化を生じ、ヒトでこれらの機序が作動するという強い証拠がある (IARC 117 (2019))。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 日本産衛学会では、ヒトのデータは不十分であるが、実験動物において母体毒性のみられない用量で胎児毒性がみられていること、成長・発達に重要な役割を持つ甲状腺ホルモン分泌の低下が複数の種でみられることを根拠として生殖毒性第2群 (ヒトに対しておそらく生殖毒性を示すと判断される物質) に分類している (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
(2) 雌ラットの妊娠6~15日に経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で頭蓋骨の骨化遅延、皮下浮腫、肋骨、椎骨及び胸骨の異常が認められている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。

【参考データ等】
(3) ラットを用いた経口投与による2世代生殖毒性試験において、母体に全身毒性の出現する用量で児動物体重の減少、生後4 日までの児の死亡数の増加、児の性成熟の遅延、精子数の減少、着床数低下、胎児の吸収の増加等がみられている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系、心臓)、区分3 (気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分1 (神経系、心臓) 、区分3 (気道刺激性) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は酸化的リン酸化を脱共役することが知られており、急性及び慢性の吸入ばく露や経皮ばく露において、その作用機序を介した体温の上昇、呼吸数及び心拍数の増加、神経性の筋力低下、痙攣及び心不全による死亡が複数例報告されている (ACGIH (7th, 2014))。
(2) 本物質の一般的な中毒症状として、運動失調、精神的及び肉体的疲労、頭痛、めまい、見当識障害、食欲不振、吐き気、嘔吐、呼吸困難、高熱、頻脈、代謝率の上昇がある。最も顕著な症状として、極端な脱力感、体温上昇及び多量の発汗がある。中毒の場合の死因は心停止で、通常、顕著な死後硬直を示す(EHC 71 (1987))。
(3) 急性の全身中毒症状は、頭痛、発汗、抑うつ、吐き気、脆弱、まれに発熱であり、頻度の高い症状は頻脈、頻呼吸、胸痛、口渇、腹痛である (IPCS PIM 405 (1989))。
(4) ACGIHによる作業環境許容濃度は、本物質の職業曝露による上気道刺激及び眼刺激の報告に基づき設定されている (ACGIH (7th, 2014))。

【参考データ等】
(5) イヌ、ウサギ、ラット及びモルモットで、多量の本物質の吸収 (投与量及び投与経路は不明) により、呼吸促迫、血圧上昇、発熱、高血糖、尿糖、蠕動促進がみられたとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))。
(6) げっ歯類では、本物質の急性毒性症状として、酸化的リン酸化の脱共役に伴う高熱や、振戦、痙攣及び正向反射の喪失がみられたとの報告がある (NTP TR483 (1999))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、皮膚)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
【分類根拠】
(1)~(5)、(9) よりヒトにおいて神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓及び皮膚への影響がみられるとの情報があり、(7)、(8) より実験動物においても区分1の用量で腎臓、区分2の用量で肝臓への影響がみられたことから、区分1 (神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、皮膚) とした。なお、皮膚への影響については、(6) で指摘されているように市販品に含まれる不純物の影響の可能性がある。情報の再検討の結果、旧分類で標的臓器としていた血液系については本物質の標的臓器には含まれないと判断し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質を用いた木材の加圧処理に従事した労働者で、不眠症やめまいが報告されている (EHC 71 (1987))。また、木材保存剤へのばく露により本物質とγ-ヘキサクロロシクロヘキサン (CAS番号 58-89-9) の血中濃度が高値であった15人の女性で、疲労、注意散漫、意欲の減退、気分の落ち込みといった自覚症状の増加と、複数の神経行動学的能力に関する客観的テストでのパフォーマンスの低下が報告されている (ATSDR (2001))。
(2) 気中濃度1 mg/m3以上の本物質にばく露された労働者が、痛みを伴う鼻の炎症を訴えたとの報告がある (EHC 71 (1987)、MAK(DFG) vol.3 (1992))。
(3) 本物質の職業ばく露または誤用に関連したヒトの肝臓及び腎の異常が知られており、肝臓では、脂肪浸潤、小葉中心変性、及びAST、ALT活性の上昇といった肝臓の異常が報告されている (NTP TR483 (1999))。また、腎臓では、可逆性のクレアチニンクリアランスの低下及びリンの再吸収に伴う腎機能の変化が報告されている (EHC 71 (1987))。
(4) 本物質は酸化的リン酸化を脱共役することが知られており、急性及び慢性の吸入ばく露や経皮ばく露において、その作用機序を介した体温の上昇、呼吸数及び心拍数の増加、神経性の筋力低下、痙攣及び心不全による死亡が複数例報告されている (ACGIH (7th, 2014))。
(5) 本物質はヒトで皮膚、鼻粘膜、気道への刺激性、塩素ざ瘡、憂鬱、頭痛、晩発性皮膚ポリフィリン症、肝臓、腎臓の機能変化、不眠、めまいを引き起こすとの報告がある (EHC 71 (1987))。
(6) 本物質に直接皮膚接触した労働者が塩素ざ瘡を発症したとの報告があるが、これは本物質の市販品に含まれるダイオキシン関連の不純物に起因すると考察されている (ACGIH (7th, 2014))。
(7) 本物質のマウスの6ヵ月間混餌投与試験では、200 ppm (ガイダンス値換算: 34.3~34.6 mg/L、区分2の範囲) 以上で膀胱表面上皮の褐色色素沈着、鼻粘膜化生、肝臓絶対重量の増加、肝細胞の核や細胞の肥大、変性がみられた。また、雌では200 ppm (ガイダンス値換算: 34.6 mg/L、区分2の範囲) 以上で自発運動の増加、驚愕反応の亢進がみられた (NTP TR349 (1989))。
(8) 本物質のラットの2年間混餌投与試験では、10 mg/kg (区分1の範囲) 以上で雄に腎尿細管の褐色色素沈着、30 mg/kg (区分2の範囲) で雌雄に血清ALT活性の上昇がみられた (EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(9) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は代謝亢進が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(10) 本物質の市販品にはポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシンやジベンゾフラン (CAS番号 132-64-9) 等が不純物として含まれ、これらの影響による毒性も示唆されている (NTP TR483 (1999))。
(11) 3%の本物質と1.5%のテトラクロロフェノール (CAS番号 58-90-2) に継続的にばく露されていた21歳男性で、再生不良性貧血による死亡が報告されているが、1例のみの報告である (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))。カナダの木工労働者128人の原因不明の貧血と本物質へのばく露との関係を調査した研究では、本物質へのばく露は木工労働者の貧血の有病率と関連しないと結論付けられている (EHC 71 (1987))。
10 誤えん有害性 分類できない
-
-
- - 【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性 短期(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
魚類(ヒメダカ)96時間LC50 = 0.013 mg/L(MOE初期評価第5巻, 2006)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性 長期(慢性) 区分1


警告
H410 P273
P391
P501
急速分解性がなく(BODによる28日間分解度:1%(METI既存点検結果, 1982))、魚類(ヒメダカ)のNOEC = 0.013 mg/L(MOE既存点検結果, 2001)から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。
  • 「分類結果」欄の「※」はJISの改正に伴い、区分がつかなかったもの(「区分に該当しない(分類対象外を含む)」あるいは「分類できない」、もしくはそのいずれも該当する場合)に表示するものです。詳細については分類根拠を参照してください。

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